ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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祖母、母、私の幸福論 2

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 「こえぇ疲れた」の「病める痛い」の「おじいさんのとごさ早く行きてぇ」の
「歳っコとってたいぎだ疲れたども、おじいさんの遺した畑だもの、おれぁ私がやんねぇば誰もやんのぁ農業する人がいねぇ」の……

 幼い頃から念仏のように聞き続けた祖母の繰り言だ。子どもながらに、祖父の遺した農地と農作業から解放されることが祖母の幸せなのだと思っていた。そうなれば母もきっと理不尽な文句や悪口を言われなくなるに違いない、と。

 念願の楽隠居生活となったはずの祖母は、深刻な持病もなく、寝たきりでもなく、身の回りの事もトイレも自分でできて、ご飯も三食出てくる。経済的な心配も、仕事や家事に追われる事もなく、息子夫婦や孫(晃夫)と同居で、たまにはもう一人の孫夫婦がひ孫を連れて遊びに来る……

 それでも祖母はどこか寂しそうだったし、母への悪態も止まなかった。

 認知症によって以前はできていた事が日を追ってできなくなる不安や、身体が衰えて思うように動かせなくなる不満は色々あっただろう。
 自分が何が足りないとか、何ができないとかーーそんな事を言い続けていたら自分もまわりも、誰一人幸せにはなれない。きっとこれは祖母の人生から学んだ大事な事だ。

 幸せとはきっと、絵に描いたような幸せの顔はしていない。

 二度手間三度手間レベルで面倒臭くて、時間もお金も何もかも足りなくて、何もかもが大変でしんどくて、褒めたり感謝してもらえたりするのも、ほんのたまにくらいで……

 そんなドタバタな時代を歳を取った時に後で振り返ったらきっと、人生で一番幸せな時だったなと思えるんだろう。それが自分で気づけるかどうか。

 だから私は今が一番幸せだよ、お祖母ちゃん。

 祖母は少なくとも、母への感謝を口にできた時点で幸せだったのだろう。コツコツと修行しながら極楽に着いたらきっと、慈悲と天恵に満ちた素晴らしい仏様になってくれるに違いないーーそう思いたい。


「やっぱり私もしーちゃん家で待ってていい?」

 ところで、話し込んでいるうちに咲恵ちゃんが家にやって来た。

「さっこ、なかなか来ないねえ」

 午後のバスで発つ予定のみっこ伯母が時計を気にし出した頃、さっこ叔母もやっと顔を出した。
 私達は茶の間の掘り炬燵に移動して何でもない茶飲み話たぐっコ切りを続けていたがようやく、父と畑中君と一緒に戻って来た。

「お帰りなさい」

「寒がったべ、あたって」
 
「あの人ぁどうしたや?」

 私達は立ったり席を空けたりバタバタしながら一斉に聞いた。
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