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決して、アリーチェは父に思い入れがあったわけではない。
彼と過ごした時間は僅かで、彼は父親というよりも魔王という存在だった。
アリーチェを器としてしか見ておらず、アリーチェを大切にするのも目的の為だと分かっていたから。
アリーチェをいきなり見知らぬ所へ放り投げた彼に愛情を抱けるわけがない。
だから、魔王が倒された瞬間、アリーチェは父の死に対する寂しさは感じなかった。
むしろ、その時が来てしまったのだとういう衝撃の方は強くて、ルッツとの思い出を茫然と思い返していた。
そして、しばらくして神父がアリーチェに王都を出るように言った。
『今の貴方では勇者に近づくことも出来ませんよ』
神父はアリーチェに警告した。
ルッツとアリーチェでは身分が違うのだと。
──そう、だって、もう・・・
一度吹き出し始めた力は。制御できぬほど大きくなりアリーチェを覆っていく。
アリーチェは自分が、ただルッツの帰りを待っていた時の自分ではなくなっていることは知っている。
それを止めることは出来ず、そのままアリーチェの心まで飲み込んでいく。
「ひぃぃい! 」
マルティラが驚愕の表情を浮かべ、這いずりながらアリーチェから逃げようとするが、腰がひけて動けない。
そして、アリーチェの姿をもう一度目にし、最後には気絶した。
アリーチェの瞳には、そんなマルティラたちが小さく見え始めた。
次の時代に力を受け継ぎ、魔族は強くなる。
もう、アリーチェは人の形を成してなかった。
けれど、中から湧き出る感情を抑え込むことができないアリーチェ。
いや、止めようともしていない。
「 なんで こんな こと 」
アリーチェは上手く回りにくくなった口で神父に尋ねる。
神父はそんなアリーチェの姿にご満悦の様子。
「もちろん。私が忠誠を誓っているのはただ一人。魔王陛下の想いを託された私の責務ですから」
それが自分の幸せだと言わんばかりの笑顔を浮かべる神父。
「 ちがう そんな の ちが う 」
「違いませんよ。私の役目は、次期魔王の器として完璧な貴方を守ること。そして、我らが何百年も待望していた完璧な魔王の誕生をこの目で見届けることです! 」
両手を広げ感無量だと神父は叫んだ。
彼も感情が昂り、頭にツノが現れ人の皮が剥げ始めていた。
「そのためには、全て重要だったのですよ。そのおかしな女に貴方の情報を吹き込んで煽ることだって、勇者が貴方のことを忘れている事実を突きつけて差し上げるのも! アリーチェ様には絶望を味わい、そして本来の力を目覚めさせていただかねばならなぬのですよ!! 」
彼にとっては全てここに来るまでの過程。
王宮での出来事は魔王の力を受け継いだアリーチェには対処できると踏んでの事。
猛毒なんて魔族のアリーチェには一目で分かるし、第一効果はない。
そして誰かに狙われている。
そう自覚させることで、アリーチェの神経を逆撫でしていたのだろう。
そんなマルティラのやり方に、ルッツに影響を受けすぎたアリーチェが怒ることも全て分かって。
彼と過ごした時間は僅かで、彼は父親というよりも魔王という存在だった。
アリーチェを器としてしか見ておらず、アリーチェを大切にするのも目的の為だと分かっていたから。
アリーチェをいきなり見知らぬ所へ放り投げた彼に愛情を抱けるわけがない。
だから、魔王が倒された瞬間、アリーチェは父の死に対する寂しさは感じなかった。
むしろ、その時が来てしまったのだとういう衝撃の方は強くて、ルッツとの思い出を茫然と思い返していた。
そして、しばらくして神父がアリーチェに王都を出るように言った。
『今の貴方では勇者に近づくことも出来ませんよ』
神父はアリーチェに警告した。
ルッツとアリーチェでは身分が違うのだと。
──そう、だって、もう・・・
一度吹き出し始めた力は。制御できぬほど大きくなりアリーチェを覆っていく。
アリーチェは自分が、ただルッツの帰りを待っていた時の自分ではなくなっていることは知っている。
それを止めることは出来ず、そのままアリーチェの心まで飲み込んでいく。
「ひぃぃい! 」
マルティラが驚愕の表情を浮かべ、這いずりながらアリーチェから逃げようとするが、腰がひけて動けない。
そして、アリーチェの姿をもう一度目にし、最後には気絶した。
アリーチェの瞳には、そんなマルティラたちが小さく見え始めた。
次の時代に力を受け継ぎ、魔族は強くなる。
もう、アリーチェは人の形を成してなかった。
けれど、中から湧き出る感情を抑え込むことができないアリーチェ。
いや、止めようともしていない。
「 なんで こんな こと 」
アリーチェは上手く回りにくくなった口で神父に尋ねる。
神父はそんなアリーチェの姿にご満悦の様子。
「もちろん。私が忠誠を誓っているのはただ一人。魔王陛下の想いを託された私の責務ですから」
それが自分の幸せだと言わんばかりの笑顔を浮かべる神父。
「 ちがう そんな の ちが う 」
「違いませんよ。私の役目は、次期魔王の器として完璧な貴方を守ること。そして、我らが何百年も待望していた完璧な魔王の誕生をこの目で見届けることです! 」
両手を広げ感無量だと神父は叫んだ。
彼も感情が昂り、頭にツノが現れ人の皮が剥げ始めていた。
「そのためには、全て重要だったのですよ。そのおかしな女に貴方の情報を吹き込んで煽ることだって、勇者が貴方のことを忘れている事実を突きつけて差し上げるのも! アリーチェ様には絶望を味わい、そして本来の力を目覚めさせていただかねばならなぬのですよ!! 」
彼にとっては全てここに来るまでの過程。
王宮での出来事は魔王の力を受け継いだアリーチェには対処できると踏んでの事。
猛毒なんて魔族のアリーチェには一目で分かるし、第一効果はない。
そして誰かに狙われている。
そう自覚させることで、アリーチェの神経を逆撫でしていたのだろう。
そんなマルティラのやり方に、ルッツに影響を受けすぎたアリーチェが怒ることも全て分かって。
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