退屈な青春の裏側で、僕達は、世界の真理を究明せんとする。

東雲まくら

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1話 未知との遭遇

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 突然だが、この世界がつまらない、退屈だ、面白くない、そんな感想を抱いた事はないだろうか?

 僕は、ずっと感じていた。

 この世界はつまらない、退屈だ、面白くない、と。

 現在、高校2年の僕、白井しらい 京介きょうすけは、小学1年の頃から、年々強くなるその感覚に、辟易とした気分にさせられていた。

 でもそれは、つまらない、退屈だ、面白くない、と思いながらも、その現状を打破する為の行動をしなかった僕が悪かったのだろう。

 だって彼女は、僕がダラダラと垂れ流していた青春の裏側で、この世界の真理を探求し続けていたのだから。

 真理しんり、あるいは、まことことわりなんて、キザな言い方に置き換えても良い。

 なぁ、知っているか?

 世界なんて、僕達が想像するよりも遥かに、不安定で不定形なものに過ぎないのだと。

 なぁ、知っているか?

 人が世界を観測する事で、その不安定で不定形な世界を、無理矢理、型に押し込んで、どうにかこうにか、人に都合の良い形に歪めているだなんて、にわかには信じがたい真実を。

 なぁ、知っているか?

 世界は1つではないし、裏もあれば、側面もあるし、それらは案外すぐそこにあるし、複雑に絡み、相互に干渉しているし、それも含めて、僕達の住む世界は、辛うじて、奇跡的に、今の状態を維持し出来ているだけだ、という事を。

 僕は知っている。

 この世界の、真の理の一端を。



 ーーー



 その日は、僕が高校2年生となり、初めて登校した1学期の始業式の日。

 肩書きやクラスメイト、担任教師に変化はあっても、つまらないという事に変化のない日だった。

 何故つまらないと感じるのか、それは、ありとあらゆる事象が、僕の想像の範疇を越えないからだ。

 どれだけ傑作と呼ばれる推理小説だって、実は犯人こいつなんです(笑)、なんて序盤にネタバレを食らうと、その後の展開なんて楽しめたものではないだろう?

 感覚的にはそれと同じだ。

 きっとこうなるのだろう、だからこうしておいた方が後々楽だろう、そして、こうなって、そうなって、ああなるんだろう。

 そんな想像が、気持ち悪い位にぴったりと当たり、外れる気配すらない。

 嫌味に聞こえるかもしれないが、100点を取ろうと思っても取れない人と、一切勉強をしなくても100点を取れてしまう人とでは、100点の価値が違う。

 思うに人は、不確定な要素があるからこそ、一喜一憂が出来、楽しい、幸せだと感じることが出来るのだ。

 不変で確定的な要素に囲まれてしまえば、それがどれだけ恵まれた環境であろうと、人はそれを楽しいだとか、幸せだとは感じないのだろう。

 そんな風な事を、帰りのSHRショートホームルームの間、悶々と思案していた。

 僕は普段、SHRが終わるとすぐに下校するのだが、その日は、つまらない事に脳を使い、不足した糖分を補給するために、現在位置から最も近い所にある、部室棟の側に設置された、飲料の自動販売機の前へやって来た。

 激甘プリンじゅーす、という飲料を購入した僕は、すぐさまプルタブに指をかけ、カパッと開けた。

 ドロッとしたプリンを3倍位甘くした様な、激甘の液体を一気に飲み干し、備え付けのゴミ箱に空となった缶を捨てる。

 その際、ふと視界に、部活勧誘のポスターが目に入った。

 「部活・・・、部活・・・か。」

 集団の輪に飛び込み、他人の意見に振り回されるというのは、想像するだけで面倒な事この上ない。

 「とは言うものの、お前ではなし・・・か?」

 結局、どれだけうるさい、面倒だ、煩わしい、と頭を抱えながらも、人は他人との関わりを求めるものなのだろう。

 少なくとも、ポスターで部員を勧誘している部活をチェックする僕は、そう感じる人間の様だ。

 「茶道部、吹奏楽部、情報技術部、書道部・・・、オカルト研究部!」

 オカルト研究部という字面を目の当たりにした僕は、その時、運命的な何かを感じ取った。

 オカルトとは、未知の代名詞と表現するに相応しい単語ではないか。

 それを研究する部活動ともなれば、僕の退屈でつまらない日常に、大いなる刺激と燃えるような活動意欲をもたらしてくれるのではなかろうか?

 無論、現実は世知辛く、オカルトマニアの溜まり場と化した部室で、胡散臭い写真や記事を見て、ダラダラと食っちゃべるだけの日々になるであろう事は、容易に想像出来る。

 それでもとか、もしかしたらとか、万が一とか、そんな微かで淡い期待を抱き、僕はオカルト研究部の部室へと向かう事にした。

 なに、僕の想像の範疇を超えなかったとして、気に入らなければ入部せずに帰ればいい。

 もし、何かしらが気に入り、入部したいと思えば入部すればいい。

 そんな気楽な気分で、オカルト研究部の部室の扉をノックし、返答も聞かず、ガラガラっと、扉を開けた・・・までは、良かった。

 「遂に・・・ッ!!遂にッ!!長かった我らの夜が明けるッ!!」

 オカルト研究部の部室で、僕が目の当たりにしたのは、部室の中央に設置された机の上に立ち、おどろおどろしい雰囲気を纏った般若のお面を被って、中二病チックな台詞を、たった一人、高らかに叫ぶ、女子高生の姿であった。

 「人が数多持つ予言の時が来たッ!!ギャラルホルンよッ!!今こそ、その音色を解き放とうッ!!」

 彼女が手にしていたのは、ギャラルホルンというか、至って普通のホルンであった。

 お面をずらし、さあ、これからホルンを吹くぞ!というタイミングで、彼女はようやく僕の存在を視認し、無言で顔を真っ赤にした。

 「・・・コホンッ!」

 大きな咳払いをし、般若のお面を被り直すと、彼女は構えていたホルンを机の上に置き、サササッと、1人用ソファーに座り、両腕の肘を机の上に置き、重々しい雰囲気を出しながら、「ようこそ、我が真理究明会へ。」と声を掛けてきた。
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