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Ⅵ 連休の過ごし方
74話 こういうのって、なんか良いじゃない(2)
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「シーラっ!?」
「お、お母さんッ!!」
母親を見つけ、パタパタと走り出したシーラを見たミーナは、少し寂しそうな笑み浮かべ、アインの腕を引っ張る。
「隠れるわよッ!!」
「・・・へっ??」
「いいから、早くッ!!」
結局、少し道から外れた建物の影から、親子3人の感動的な再会シーンを見守る2人。
シーラがキョロキョロと、ミーナとアインを探している姿を、柔らかな表情で見守るミーナ。
アインは、その横顔を眺めていた。
「・・・、お前の事だから、この子を返して欲しければ、お金を寄越しなさいッ!!そうねッ!白金貨1枚でどうッ!?とか言うのかと思ってたぜ。」
「あのね!あんた、私の事をなんだと思ってるのよッ!?」
「守銭奴。」
「・・・まぁ、その通りね。」
「あ、そこは認めるのか。」
「ふん。でもま、・・・こういうのって、なんか良いじゃない。」
と言って髪を払い、嬉しそうな顔を見せるミーナ。
対して、アインは目を細め、抱き合う3人に向けて、値踏みするような視線を送る。
「・・・ふふっ、嬉しそうね。」
「・・・ハハッ、・・・ゾッとするぜ。」
「はぁ??」
3人から目を離し、不機嫌な表情でアインの方へ顔を向けたミーナは、振り向いた瞬間に思考が停止した。
ミーナが振り向いた、まさにその瞬間、"プシャッ!"と、血しぶきが飛び散って来たからだ。
そこに居たアインは、左肩と胸の間に右手を突っ込んでいた。
「何故だろうな?何故なんだろうね?何故なんでしょう??」
突っ込んだ右手をごそごそと、動かしていた。
「痒くて、痒くて、仕方ない。」
そう言い、小刻みに、右手をごそごそと動かしていた。
「身体の内側が痒くて、痒くてっ、痒くて、痒くてッ!」
吸い込まれる様な漆黒の瞳を大きく見開き、泣き出しそうな顔で、左側の口元だけ吊り上げて。
「・・・仕方無いんだ。」
ドクドクと流れる血は、アインを赤黒く染めていく。
そこでようやく、ミーナが、"ドサッ"と尻もちをつく。
「・・・示さねばならない。」
そしてアインは、右手の小刻みな動きを止め、低く嗄れた声で、口を開く。
「・・・国民に、領民に、力無き人々に、我らクロスフォードが居れば、安泰であると。」
そう言い切り、アインは少しの間、右手を突っ込んだまま静止する。
そして、「あぁ、そういうことか。」と、納得した様子で右手を抜く。
「これが父上や兄様達の、必死になって、守ろうとしている光景だと思うと、あぁ、成る程。そりゃあ、虫酸が走る訳だ。」
ドクドクと流れ出る血を、アインは気にも止めず、満足そうな表情を浮かべる。
そして、少し道から外れた建物の影から、親子3人へ向けて、貴族として、流麗な所作で一礼をする。
「・・・アインより、感謝を込めて。」
その表情も、仕草も、声音も、全てが、ちぐはぐであった。
それは、皮だけがアイン・クロスフォードを象った、何かである。
ミーナには、そう思えた。
「あぁ、血が飛び散ってしまったな。後で、クリーニング代は払うよ。」
そう言って、親子とは真逆の方向へと、アインは、何事もなかったかのように歩き出した。
腰を抜かしたミーナは、しばらく、その場から立ち上がれなかった。
「お、お母さんッ!!」
母親を見つけ、パタパタと走り出したシーラを見たミーナは、少し寂しそうな笑み浮かべ、アインの腕を引っ張る。
「隠れるわよッ!!」
「・・・へっ??」
「いいから、早くッ!!」
結局、少し道から外れた建物の影から、親子3人の感動的な再会シーンを見守る2人。
シーラがキョロキョロと、ミーナとアインを探している姿を、柔らかな表情で見守るミーナ。
アインは、その横顔を眺めていた。
「・・・、お前の事だから、この子を返して欲しければ、お金を寄越しなさいッ!!そうねッ!白金貨1枚でどうッ!?とか言うのかと思ってたぜ。」
「あのね!あんた、私の事をなんだと思ってるのよッ!?」
「守銭奴。」
「・・・まぁ、その通りね。」
「あ、そこは認めるのか。」
「ふん。でもま、・・・こういうのって、なんか良いじゃない。」
と言って髪を払い、嬉しそうな顔を見せるミーナ。
対して、アインは目を細め、抱き合う3人に向けて、値踏みするような視線を送る。
「・・・ふふっ、嬉しそうね。」
「・・・ハハッ、・・・ゾッとするぜ。」
「はぁ??」
3人から目を離し、不機嫌な表情でアインの方へ顔を向けたミーナは、振り向いた瞬間に思考が停止した。
ミーナが振り向いた、まさにその瞬間、"プシャッ!"と、血しぶきが飛び散って来たからだ。
そこに居たアインは、左肩と胸の間に右手を突っ込んでいた。
「何故だろうな?何故なんだろうね?何故なんでしょう??」
突っ込んだ右手をごそごそと、動かしていた。
「痒くて、痒くて、仕方ない。」
そう言い、小刻みに、右手をごそごそと動かしていた。
「身体の内側が痒くて、痒くてっ、痒くて、痒くてッ!」
吸い込まれる様な漆黒の瞳を大きく見開き、泣き出しそうな顔で、左側の口元だけ吊り上げて。
「・・・仕方無いんだ。」
ドクドクと流れる血は、アインを赤黒く染めていく。
そこでようやく、ミーナが、"ドサッ"と尻もちをつく。
「・・・示さねばならない。」
そしてアインは、右手の小刻みな動きを止め、低く嗄れた声で、口を開く。
「・・・国民に、領民に、力無き人々に、我らクロスフォードが居れば、安泰であると。」
そう言い切り、アインは少しの間、右手を突っ込んだまま静止する。
そして、「あぁ、そういうことか。」と、納得した様子で右手を抜く。
「これが父上や兄様達の、必死になって、守ろうとしている光景だと思うと、あぁ、成る程。そりゃあ、虫酸が走る訳だ。」
ドクドクと流れ出る血を、アインは気にも止めず、満足そうな表情を浮かべる。
そして、少し道から外れた建物の影から、親子3人へ向けて、貴族として、流麗な所作で一礼をする。
「・・・アインより、感謝を込めて。」
その表情も、仕草も、声音も、全てが、ちぐはぐであった。
それは、皮だけがアイン・クロスフォードを象った、何かである。
ミーナには、そう思えた。
「あぁ、血が飛び散ってしまったな。後で、クリーニング代は払うよ。」
そう言って、親子とは真逆の方向へと、アインは、何事もなかったかのように歩き出した。
腰を抜かしたミーナは、しばらく、その場から立ち上がれなかった。
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