全力でBのLしたい攻め達 と ノンケすぎる悪役令息受け

せりもも

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1 悪役令息

9.大艦隊襲来

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※サハル視点に戻ります

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ダレイオの謁見室を出て、中庭を横切っていた時だった。
にわかに車寄せが騒がしくなり、馬の嘶きが聞こえた。

「早馬だ!」
「港から早馬が!」
人々が集まって来る。

「早馬だと?」

急ぎの伝令が遣わされるのは、よほどのことだ。たとえば、王族が死んだ時とか、国境を侵犯された時とか……。

「メラウィーの岸辺に敵艦隊接近中! 迎撃の準備を!」
旗を持った伝令が大声で叫びながら、王の謁見室めがけて走っていく。

「おい! 敵艦隊って、どこの国だ? ロードシアか? フェーブルか」
北の帝国か東の帝国か。

「違います!」
踵から煙が出そうな勢いで急停止し、伝令は敬礼した。俺が誰だかわかったのだ。
「隣国インゲレの艦隊です! 旗艦ヴィクトリー号以下戦艦60は下りません!」

「ヴィクトリー号!?」
それは、インゲレ王女ヴィットーリアの船だ。
「つか、なんで陸続きの隣国なのに海から攻めてくんだ、あの女」

しかも大艦隊を従えて。インゲレとの国境は、どこまでも続く砂漠地帯だ。砂漠越えは大変であることは認めるが、大艦隊を動かすよりは金がかからない。それに、インゲレの、海への接岸部分は少なく、港はひとつしかない。しかもそれは、我が国の軍港メラウィーのすぐ近くだ。
つまり、わざわざ艦隊を率いてやってくるほどの距離ではないのだ。

「存じません! しかし、大艦隊であることは間違いありません!」
再び伝令が敬礼する。

「よし。すぐにダレイオの部屋へ行こう」

ヒステリー女ヴィットーリアのすることはよくわからない。だが、国家の一大事だ。いがみ合っている場合ではない。こういう時は、兄弟で協力し合わねばならない。それが王族の、聖なる義務というものだ。
エルナを思うと後ろ髪を引かれる思いだったが、俺は潔く、伝令と共に、兄の元へ戻った。



珍しいことに、ダレイオは、女官長と一緒だった。俺の顔をひと目見るなり、女官長は真っ青になった。
そんなに恐れられるツラではないのだが。むしろ、肌の白さのせいで、女性には好まれることが多い。
だが、深くは考えなかった。それどころではない。なにしろ、隣国が攻めて来たのだから。

俺と伝令の姿を見ると、ダレイオは顎をしゃくって女官長を下がらせた。

「インゲレの船団が攻めてきました! 」
伝令が報告した。

「ほう。それでこの騒ぎか」
さすがはエメドラードの王、ダレイオは落ち着き払っている。
「すぐに、メラウィーの軍港へ参らねばなるまい」

「いや、兄貴は宮殿に残ってくれ」
即座に俺は彼を制した。
「兄貴はこの国の王だ。もし万が一のことでもあったら、国は滅びる」

「だが、軍の総司令官は国王だ」
「俺が行こう」

それはもう、既定路線のように思えた。王弟が軍を率いて、国を守護するのは。それなのに、ダレイオは目を丸くした。

「お前がか、サハル?」
「ああ。肌の色こそ違うが、俺だって王族だ。俺が軍の指揮を執る」
「ダメだ!」

厳しい声が制した。
やはりそうか。
俺は思った。軍は、王の部隊だ。それを誰かに託すなど、王としての威厳と誇りが許さないのだろう。それに、俺が軍を牛耳り、クーデターを起こす可能性だってある。つまり、ダレイオは、俺を信用していないのだ。

「ダレイオ、俺を信じてくれないのか?」
「そうじゃない」

苦しそうな声だった。

隣国インゲレの艦隊が攻めて来たという事は、戦争がはじまるということだ。戦場にお前を送り込むなど……」
潤んだ目で俺を見つめた。
「お前に万が一のことがあったら、俺は一体、どうしたらいい?」
「万が一のことなんか起こらないさ」
「そう言い切れるか?」
「まあな」
「なら、誓え。髪の毛一本も傷つけないと、王の前で誓うのだ」
「いや、そう言われると……」

王の前での誓いは厳粛だ。破れば、恐ろしい罰が下るとされている。

「サハル、お前を失うわけにはいかないのだ。お前は俺の全てだ。お前だけを黄泉の国に送り込むことはできない。いっそ共に討ち死にを」

何言ってんだ、この王は。

「いや、待って、ダレイオ。お前、王だろ。つか、俺は死ぬつもりも負けるつもりもないから。第一、国を守るのは、王弟の役目だ。王であるお前は、しっかり国を治めてくれ」
「サハル……。そんなに俺のことを思ってくれているなんて」
「兄貴の為じゃない。エメドラードの為だ。俺の祖国でもあるからな」

両親には全く可愛がられなかったけど。だが、民を守るのは王族の義務だ。

「それでもお前を戦場にやるわけにはいかぬ。もし万が一にも、お前が戦死したりなどしたら……」

言いかけて、ダレイオはわなわなと震え出した。堂々巡りしてる。

「お前のいないこの世界で、俺は生きていける気がしない」
「いやいやいや。王だろ。生きてけよ」
「できない! サハル、ダメだ! 戦場には俺が行く」
「馬鹿、ダレイオ。王は後方から国を守るものだ。それができない者に、王の資格はない!」

ああ、くそ! いっそ俺が国を乗っ取ってやろうか。
いや、ダメだ。俺の肌は緑じゃない……。

「構わない。お前を失うことに比べたら」
「ありえねーから」
これが初陣ではない。軍属としての俺の腕を嘗めて貰っちゃ困るのよ。
「とにかく、お前は宮殿に残れ」
「許さん。サハル! 行くな! お前が大事だ!」
「王にとって大事なのは国と民だろ……」
「そんなものはどうでもいい! 俺にとって一番大事なものは、お前なんだ!」

「……あの。お取込み中ですが、ちょっと失礼しますよ」

その時、執務室に入って来た者がいた。聞き覚えのある声だ。

「あっ、お前はジョルジュ!」

思わず俺は叫んだ。
所在なさそうに立っていたのは、結婚式場に置き去りにしてきたはずの隣国の王子、ジョルジュだった。






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