全力でBのLしたい攻め達 と ノンケすぎる悪役令息受け

せりもも

文字の大きさ
41 / 41
3 英雄トーナメント

12.漁夫の利

しおりを挟む
 体重をかけてホライヨンの振り下ろした拳を、ルーワンが横跳びに飛んで避ける。

「おのれ、躱したな!」
 すかさず飛び上がり、二度三度、ホライヨンはルーワンめがけて打ち込む。
「俺のことをアホウドリと言いやがって。違うぞ。俺は、鷲の王だ!」
「ふうん」
「お前が言ったんじゃないか!」
「そうだっけ?」」

 再び振り下ろされた拳を避けながら、ルーワンがにやりと笑う。
 ホライヨンの顔が歪んだ。

「くそっ、すばしこい奴め。あのな。俺は嬉しかったんだぞ。鷲の王って言われて」
「へえ?」
「だって、家来がいるなんて、どんなに誇らしいか!」
「知恵の足りない鳥どもなのに、家来がいるのがそんなに嬉しいか」

 ホライヨンの一撃を横に飛んで避け、ルーワンが嘲る。

「うるさい、黙れ。馬鹿なやつほど可愛いんだ」
「同族だからか。呆れた奴だ」

ルーワンは背負った鞘から剣を抜いた。

「そろそろ、こっちからもお返しする」
「あ?」

ルーワンが真剣を突き出し、ホライヨンは後方にのけぞって、切っ先を逃れた。
「俺、剣を持ってないんだよな」

「ホライヨン!」
 叫んでタビサが煌めく何かを投げた。
 剣だ。

「え? 母上。まともにこいつと殺し合えと?」
「そうよ! 売られた喧嘩は買わなくちゃ」
「年下の文官ですよ?」
「従弟であっても息子であってもよ!」

 ホライヨンには意味が分からなかったが、タビサの叱咤激励を受け、しぶしぶ剣を構える。
 ルーワンが横に剣を構えた。
 ホライヨンが切り込み、双方の剣が火花を散らした。


 「ルーワンに死なれたら困るでしょ」
少し離れたところで観戦中のサハルの耳元で、誰かが囁いた。

「あいつは死なないさ。なにせ、緑色の肌をしているからな」
「でも、ホライヨンは強大です。英雄トーナメントの優勝者だ」
「大丈夫。ルーワンを仕込んだのは俺だ」
「なるほど。彼は、貴重ですからね。なにしろ、

 ぎょっとしたようにサハルは隣を見た。
 そこにいたのは、いつもの従者ではなかった。

「ジョルジュ……」
「お迎えに上がりました、サハル殿下。いえ、陛下」


 「ちょ、ちょっと待て!」
天空に舞い上がったホライヨンがだらりと剣を垂らした。
「待つか。下りて来い、卑怯者が!」
地上でルーワンが鼻を膨らませた。

「もし、僕が空を飛べないのをペナルティーだと考えていやがるなら……」
「叔父様!」

 ルーワンを無視して、ホライヨンが金切り声を上げる。
「賊だ! こらっ! 叔父様をどこへ連れて行く!」

 ぎょっとしてルーワンも振り返った。
 すらりとした金髪の男が、馬車の扉を閉めたところだった。一条の赤い髪が閃いて、すぐに馬車の中に吸い込まれた。

「叔父様!」
「義父殿!」

 空中のホライヨンと、地上のルーワンが同時に叫ぶ。
 馬車は、勢いよく走り始めた。

「ダメだ! 叔父様は僕の物だ!」
「義父殿をどこへ連れて行く!」

 空と地上から、ホライヨンとルーワンが、凄まじい勢いで逃げる馬車を追い始めた。
 御者台から金髪の男が身を乗り出した。

「悪いね。彼には先約があるんだ」
軽薄な青い目が笑っている。

「あっ、お前は!」
 鷲の目を持つホライヨンには、それが誰かはっきりとわかった。
「あの時のインゲレ人!」
 無銭飲食をしたロンダを捕まえた時に会った男だ。
「くそっ、お前のお陰で、危うく英雄トーナメントで負けそうになったんだぞ!」

「インゲレ人?」
 地上のルーワンが、驚いたように繰り返す。
「前に会った! 英雄トーナメントの直前に! 無銭飲食をしたインゲレ人をこらしめた時!」
「なんでその時に捕まえておかなかったんだよ?」
我を忘れ、ルーワンが喚き散らす。
「叔父様をさらうなんて、知らなかったんだよ。くそう! インゲレ人なんて、やっぱり大嫌いだーーーーっ!」

 ホライヨンの絶叫を聞いて、馬車の男がにやりと笑った。

「嫌いで結構。ところで、もっと前に、君らは僕に会ったことがある。当時から、君ら二人は、いけ好かないガキだったけどね!」

 「ちょっと! インゲレ王が何の用なの? 隣国の内政に干渉するとは何事?」
 ひときわ高い場所からタビサが問い詰める。
「これはこれは、タビサ殿下。お久しぶりです」
「久しぶりもクソもあったもんじゃないわ! そもそもあんたの姉が、サハルとの婚約を破棄するから、こんなことになったんでしょ!」

 エルドラードとインゲレ、双方の王は、自分たちの王子と王女を婚約させた。けれどこの婚姻は、インゲレ王女ヴィットーリアから、一方的に破棄されてしまった。もともと仲の悪かった両国の講和は、白紙に戻ってしまった。

 婚約を破棄された悪役令息サハルは祖国へ帰った。彼は、元婚約者の懐妊を知らされ、そして、彼女の裏切りを知った。彼女と、自分の兄との。
 激怒した彼は、兄である王を殺し、そして……。

 「おかげさまで姉は幸せに暮らしています。男爵令嬢のポメリアとね」
 苦々し気に、ヴィットーリアの弟ジョルジュは吐き捨てた。
「彼女らの選択のお陰で、私は災難ですよ。とにかく、サハル陛下は頂いていきます。もともと彼は、今は亡き父陛下から、我が国が頂いた方ですからね!」

 言い終わるなり、馬に鞭をくれた。
 二頭立ての馬車には、インゲレ王家の魔法がかけられていたようだ。驚くほどのスピードだ。
 馬車が突進し、内庭の囲いが破られた。
 王宮の外は砂漠だ。熱い砂の上を、馬車は軽快に走り去っていく。

「うわあっ! 叔父様ぁっ!」
「義父殿を返せっ!」

「叔父様ぁーーーっ!」
「義父殿ぉーーーーーっ!」

「うるさい! 耳が潰れる! 音量を落としなさいーーーーっ!」

 大いなる砂漠に、ホライヨンとルーワンの絶叫、そして、自分の耳を塞いで叱りつけるタビサの怒声が響き渡った。
 ……。


 夕日が、少し離れた無人の荒野を照らし出した。
 小さく空気をつんざいて、はるか上空から、何かが落ちて来た。柔らかい音を立てて、枯れ葉が受け止める。

 ダレイオの頭だ。さきほどルーワンが投げ、受け取ったホライヨンが投げ捨てた……。

 木枯らしの吹き抜ける地面をころころと転がったそれは、誰かの足にぶつかって止まった。緑色の足だ。
 地面に転がったまま、閉じていた目が、かっと見開かれた。
 太い腕が伸びてきた。横向きに倒れた頭を拾い上げる。
 小脇に抱え、どこかへ歩み去っていく。






ーーーーーーーーーーーーーー

※お読み下さって、ありがとうございます。おつきあい頂けて、本当に嬉しいです。
 3章はここまでです。

 Mojito先生の「Ennead」のローカライズと言いながら、ますます違う方向へ突っ走りつつあります……が、BL味だけは、これからも死守してまいります。

 ストックが尽きてしまいました。
 私は後からかなり手直しするタイプなので、ご迷惑にならぬよう、ある程度まとまりましてから、更新を再開したいと思います。
 どうか気長にお待ちいただけると嬉しいです。




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡
BL
超覇権BLゲームに転生したのは──ゲーム本編のシナリオライター!? その場のテンションで酷い死に方をさせていた悪役令息に転生したので、かつての自分を恨みつつ死亡フラグをへし折ることにした主人公。 創造者知識を総動員してどうにか人生を乗り切っていくが、なんだかこれ、ゲーム本編とはズレていってる……? ヤンデレ攻略対象に成長する弟(兄のことがとても嫌い)を健全に、大切に育てることを目下の目標にして見るも、あれ? 様子がおかしいような……? 女好きの第二王子まで構ってくるようになって、どうしろっていうんだよただの悪役に! ──とにかく、死亡フラグを回避して脱・公爵求む追放! 家から出て自由に旅するんだ! ※ 一日三話更新を目指して頑張ります 忙しい時は一話更新になります。ご容赦を……

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼不定期連載となりました。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL 不定期更新

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

処理中です...