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花瓶の穴
5 うわーーん、うわーーん、うわーーん!
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「まあまあ、」
俺は割って入った。
独歩は、真っ赤になっていた。今にも泣きそうな顔で、踏ん張っている。独歩がここまで言い張るなんて、滅多にないことだ。初めてなんじゃないか?
一方、おえんは、ふくれっ面だ。いつもはおとなしく従順な独歩が、何度も言い返してくるからだ。
「別にいいだろ。金で蓋を作ったって」
「五右衛門まで! その金を、どこから持ってくるのさ!」
「それは、俺がぬす、」
まで言いかけて、慌てて言葉を引っ込める。
「どこから盗んでくるのさ!」
せっかくぼかしたのに、あやまたず言葉に載せ、おえんが追及してくる。
「確かに、それほどの金のあるお店は、そうそうあるもんじゃねえが」
「磁器には、金の蓋をつけるものなんだ。金の取っ手も!」
独歩が地団駄踏みだした。
「外の国ではそうしてる!」
「外の国?」
「海の向こうの、大きな国のことさ! 南蛮や伴天連の国のことだよ!」
俺とおえんは顔を見合わせた。独歩の奴、言うに事欠いて……。
「なんでお前が、海の向こうの国のことを、知ってるんだ?」
だって幕府は、国を鎖している。
「そうよそうよ。あんたが知るわけないのよ!」
「まあ、俺だって知らないけどさ、」
「嘘つき! 独歩の嘘つき!」
金切り声でおえんが叫ぶ。
「嘘じゃない! 僕は、嘘なんかついてない! 南蛮や伴天連の国では、割れる器に、金の金具を取り付けるんだ!」
「ばてれん、なんて、言っちゃいけないのよ!」
「そんなことはない。みんな、言ってた」
「みんなって誰よ?」
「みんな……」
独歩の声が揺らいだ。
「ほおら。全部独歩の嘘なのよ。磁器に金の蓋なんて、変よ!」
「変じゃない! 海の向こうでは、そうするんだ!」
「五右衛門も、知らないって言ったじゃない」
「五右衛門は知らないことが多い!」
意外なとばっちりが飛んできた。
「おいおい、」
「そうよ。五右衛門はクズよ。でも、金の蓋なんて、あるわけない!」
「確かに五右衛門はクズだ。けど、金の蓋は、ある!」
「ない!」
「ある!」
「き、」
おえんの顔が歪んだ。
「嫌いよ。独歩なんて、大嫌い!」
「うわーん」
いきなり、大音声で独歩が泣き出した。
「僕のこと、嫌いって言ったーーーーーっ!」
「嫌い嫌い嫌い、独歩なんか、大っ嫌い。あっち行っちゃえ!」
「うわーーん、うわーーん、うわーーん!」
あまりの凄まじい泣き声に、周りの空気がびりびりする。壁土がひとつかみ、ぼろりと崩れて落ちた。
「大声出すな。おえんは、ちょっと言い過ぎただけだ。いつものことじゃねえか」
そのおえんは、こちらも、目に涙をいっぱいためている。
「わ、馬鹿、おえん、泣くな」
こいつの泣き声もまた、尋常じゃねえ。麓の村から、人がすっ飛んでくる。
「ひっ、ひっ、ひっく、」
「泣くな、泣くな、ったら。この上、お前まで泣いたら、寺が崩れる」
「え、え、え、えーーーーーーん!」
慌てて俺は、耳に蓋をした。ボロ寺は仕方ないとしても、自分の耳だけは守らなければならない。
「何を大騒ぎをしているのです」
耳を塞いだ指の隙間から、蓮の間から湧き出るが如き、麗しい声が忍び込んできた。
「あ、如信尼様」
「五右衛門殿。いらしてたのですか」
「如信尼様。あなたにお渡したいものが……」
「それより、なんです、この騒ぎは」
如信尼様は、泣き叫んでいるガキ二人を、当分に見渡すが早いか、背中で庇い、き、っと俺を睨み据えた。
「さては、また、あなたが……」
「待って、俺は無実……」
皆まで言わせず、殆ど、蹴り出すような迫力で、俺を、寺の外へと追い出した。
俺は割って入った。
独歩は、真っ赤になっていた。今にも泣きそうな顔で、踏ん張っている。独歩がここまで言い張るなんて、滅多にないことだ。初めてなんじゃないか?
一方、おえんは、ふくれっ面だ。いつもはおとなしく従順な独歩が、何度も言い返してくるからだ。
「別にいいだろ。金で蓋を作ったって」
「五右衛門まで! その金を、どこから持ってくるのさ!」
「それは、俺がぬす、」
まで言いかけて、慌てて言葉を引っ込める。
「どこから盗んでくるのさ!」
せっかくぼかしたのに、あやまたず言葉に載せ、おえんが追及してくる。
「確かに、それほどの金のあるお店は、そうそうあるもんじゃねえが」
「磁器には、金の蓋をつけるものなんだ。金の取っ手も!」
独歩が地団駄踏みだした。
「外の国ではそうしてる!」
「外の国?」
「海の向こうの、大きな国のことさ! 南蛮や伴天連の国のことだよ!」
俺とおえんは顔を見合わせた。独歩の奴、言うに事欠いて……。
「なんでお前が、海の向こうの国のことを、知ってるんだ?」
だって幕府は、国を鎖している。
「そうよそうよ。あんたが知るわけないのよ!」
「まあ、俺だって知らないけどさ、」
「嘘つき! 独歩の嘘つき!」
金切り声でおえんが叫ぶ。
「嘘じゃない! 僕は、嘘なんかついてない! 南蛮や伴天連の国では、割れる器に、金の金具を取り付けるんだ!」
「ばてれん、なんて、言っちゃいけないのよ!」
「そんなことはない。みんな、言ってた」
「みんなって誰よ?」
「みんな……」
独歩の声が揺らいだ。
「ほおら。全部独歩の嘘なのよ。磁器に金の蓋なんて、変よ!」
「変じゃない! 海の向こうでは、そうするんだ!」
「五右衛門も、知らないって言ったじゃない」
「五右衛門は知らないことが多い!」
意外なとばっちりが飛んできた。
「おいおい、」
「そうよ。五右衛門はクズよ。でも、金の蓋なんて、あるわけない!」
「確かに五右衛門はクズだ。けど、金の蓋は、ある!」
「ない!」
「ある!」
「き、」
おえんの顔が歪んだ。
「嫌いよ。独歩なんて、大嫌い!」
「うわーん」
いきなり、大音声で独歩が泣き出した。
「僕のこと、嫌いって言ったーーーーーっ!」
「嫌い嫌い嫌い、独歩なんか、大っ嫌い。あっち行っちゃえ!」
「うわーーん、うわーーん、うわーーん!」
あまりの凄まじい泣き声に、周りの空気がびりびりする。壁土がひとつかみ、ぼろりと崩れて落ちた。
「大声出すな。おえんは、ちょっと言い過ぎただけだ。いつものことじゃねえか」
そのおえんは、こちらも、目に涙をいっぱいためている。
「わ、馬鹿、おえん、泣くな」
こいつの泣き声もまた、尋常じゃねえ。麓の村から、人がすっ飛んでくる。
「ひっ、ひっ、ひっく、」
「泣くな、泣くな、ったら。この上、お前まで泣いたら、寺が崩れる」
「え、え、え、えーーーーーーん!」
慌てて俺は、耳に蓋をした。ボロ寺は仕方ないとしても、自分の耳だけは守らなければならない。
「何を大騒ぎをしているのです」
耳を塞いだ指の隙間から、蓮の間から湧き出るが如き、麗しい声が忍び込んできた。
「あ、如信尼様」
「五右衛門殿。いらしてたのですか」
「如信尼様。あなたにお渡したいものが……」
「それより、なんです、この騒ぎは」
如信尼様は、泣き叫んでいるガキ二人を、当分に見渡すが早いか、背中で庇い、き、っと俺を睨み据えた。
「さては、また、あなたが……」
「待って、俺は無実……」
皆まで言わせず、殆ど、蹴り出すような迫力で、俺を、寺の外へと追い出した。
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