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第1章「まず、キスから始めよう 」~佐江×清春 編
第19話「あなたの指で、いかされたい」
しおりを挟む(UnsplashのMeghan Schiereckが撮影)
「おれが、イヤになったらきみを止めていい?」
清春はカウチの上で軽く佐江を抱きしめながら笑った。
さっきからもう、どれくらい笑っているのか清春にもわからない。
分かっているのは、二十一歳になる清春にとって、大嫌いな父親の家にいるときにこれほど笑った記憶はない、ということだけだ。
岡本佐江は、清春を笑わせることができる。
これが今夜、井上清春が知った、もっとも重大な発見だった。ひょっとすると岡本佐江のファーストキスを奪ったこと以上に、清春にとっては重大なことかも知れなかった。
これから清春と佐江がやろうと思っている行為以上に、重要なことかもしれない。
清春は微笑みながら言った。
「佐江ちゃん。そいつは一般的には、女性が言うセリフじゃないな」
「ああ、そうですね……そうかもしれない……こういうのは嫌われるのかしら」
「他の男がどう思うかは、知らないが」
清春はふたたび佐江の顔を両手で包み込んでささやいた。
「すくなくとも、おれはイヤじゃないよ」
ゆっくりとディープキスを繰りかえす。キスのたびに清春は心臓がトクンと跳ねあがるのを感じる。
ただのキスなのに。
ただのキスじゃない。
清春の唇から、舌から入り込んだ佐江の体温は、キスをするごとにあたたまり、清春を溶かしていく。
「佐江ちゃん。どこで終わりにするか決めておかないと、おれが引き返せなくなりそうだ」
「……どこが、ゴールです?」
佐江はキスを止め、真剣な顔で清春を見て、尋ねた。
清春はもう、何を言ったらいいのかわからない。
いつもなら、もう言葉を必要としないゾーンへ女性を連れて行っているはずだから。
けれども、佐江を相手にしていると、いつもとは勝手が違う。
清春自身が想像もしない場所へたどり着こうとしていた。
そこが天国とは限らないが。
今の清春に必要な場所であることだけは、確信できた。
「どこがゴールか、きみが決めろよ」
「少し待ってください」
佐江は生真面目な顔で考え込み、やがて答えた。
「じゃあ――」
ほっそりした腕が清春の首にからめられた。
「あなたの指で、いかされたい」
ずくん、と清春の身体が激しく反応した。思わず、くそ、とつぶやく。
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