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第2章「ここから登る、坂の途中」~真乃×洋輔 編
第53話「真乃にもわかっている―――それから、おれにも」
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(UnsplashのSir Manuelが撮影)
清春は言った。
「今日はほんとうにありがとう。あなたがいなければ真乃は持ちこたえられなかっただろう」
「キヨさんだって大変だったんでしょう」
「おれは、べつにね」
清春はほどいたネクタイをソファに放り投げた。
「おれにとっては、仕事みたいなものだから。だが妹にはきつい一日だったはずだ」
「あたしが少しでも真乃の役に立ったなら、それでいいんです」
佐江はそう言って、清春が放り出したネクタイを拾い上げた。
「真乃は、どんなにつらい時でも助けてほしいとは言わない。自分ひとりで、じっとこらえている。あの姿を見るのはあたしにとってもつらいんです」
「きみは、真乃を愛しているからね」
真乃が鏡ごしに見る異母兄の顔は、わずかに横をむいて表情が読み取れなかった。
「きみがいるから、おれは安心して仕事だけをしていられる。真乃のことは、最後はきみが助けてくれると思っているからだ。この先も、きみのことを信じていいかな」
「あたしは、真乃に信じてもらえる人間でしょうか」
ぽつりと佐江がつぶやいた。こころぼそげな自信なさげな声だった。
清春はゆったりと歩いて、ネクタイをじっと見つめる佐江の後ろに立った。
「きみより真乃を大事にして守ってくれるひとはいないよ。それは真乃にもわかっている―――それから、おれにも」
清春の前には、うつむいた佐江のうなじがあった。25歳の女の清浄な美しさをたたえる、やわらかな曲線。
ゆっくりと清春の身体が佐江に向かって落ちていく。
その優雅な身動きを、真乃は鏡越しに息を詰めるように見つめていた。
清春は言った。
「今日はほんとうにありがとう。あなたがいなければ真乃は持ちこたえられなかっただろう」
「キヨさんだって大変だったんでしょう」
「おれは、べつにね」
清春はほどいたネクタイをソファに放り投げた。
「おれにとっては、仕事みたいなものだから。だが妹にはきつい一日だったはずだ」
「あたしが少しでも真乃の役に立ったなら、それでいいんです」
佐江はそう言って、清春が放り出したネクタイを拾い上げた。
「真乃は、どんなにつらい時でも助けてほしいとは言わない。自分ひとりで、じっとこらえている。あの姿を見るのはあたしにとってもつらいんです」
「きみは、真乃を愛しているからね」
真乃が鏡ごしに見る異母兄の顔は、わずかに横をむいて表情が読み取れなかった。
「きみがいるから、おれは安心して仕事だけをしていられる。真乃のことは、最後はきみが助けてくれると思っているからだ。この先も、きみのことを信じていいかな」
「あたしは、真乃に信じてもらえる人間でしょうか」
ぽつりと佐江がつぶやいた。こころぼそげな自信なさげな声だった。
清春はゆったりと歩いて、ネクタイをじっと見つめる佐江の後ろに立った。
「きみより真乃を大事にして守ってくれるひとはいないよ。それは真乃にもわかっている―――それから、おれにも」
清春の前には、うつむいた佐江のうなじがあった。25歳の女の清浄な美しさをたたえる、やわらかな曲線。
ゆっくりと清春の身体が佐江に向かって落ちていく。
その優雅な身動きを、真乃は鏡越しに息を詰めるように見つめていた。
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