2 / 13
ええ、こちらは『異世界行き課』です。
しおりを挟む
始業のチャイムと同時に登場する強めの美人。
「おっはようございまーす!」
毎朝元気に明るい声で出社してくる女神様。カツカツとヒールの音が響く。
女神のママの姿だと悪目立ちするとの事で、日本人に扮しているが美人である事に変わりはない。
「おはようございます」
チラリと目を向け挨拶を返す。
「ン~~。眼鏡ちゃんはいつも通りね~」
「はぁ」
気のない返事を返すが『どう!?』と言わんばかりに髪をかきあげこちらを見てくる。
「今日も変わらずお綺麗ですよ」
適当に返す。
「ん、ん、ん~♪ それはそう! だ・け・ど!! どお♪ 少し髪の色を明るくしたの~!」
「ああ、お似合いですよ」
「ん、もぉ~~。つまんない人ねッ」
「はぁ」
毎度飽きもせず、ああしてみた、こうしてみたと。この女神様は、大層俗世を堪能しておられる様で、合コンへもしょっちゅう参加している。
女神様はドカリと『課長席』へと座る。
そう。このお方、この『異世界行き課』の課長なのである。
「さて、早速だけど昨日の件」
「はい、異世界送りですね」
「そそ。名前は『蕪木萌香ちゃん』」
眼鏡はパソコンに名前を打ち込み情報を出す。
「この子はね~。ちょーっと面白いのよ~♪」
ウフフと笑って見せる女神様。
「準備よろしくね♪ あっと、来週末にタナカちゃん送る事になるから。当日は残業になるかもねー」
「承知いたしました」
『蕪木萌香』眼鏡は資料にサクッと目を通し、次の『異世界行き』送りとして準備を始める。
――それと、まずは「田中一郎」さんっと。
田中一郎氏の最終確認を始める。身寄り無し。不動産も無し。車も無し。借金も無し。大きな趣味も無し。アパートに一人暮らし。アパート一室分なので荷物もそんなに多くはないと見た。ナイナイづくしである。後処理も滞りなく進むであろう。
仕事関連は、まぁこちらの管轄ではないので問題ないといいですね。といった具合だ。
「異世界行きが決まっているのなら先に教えてくれ!」という苦情が発生する事は明白なので、選定作業は秘密裏に運ばれている。なのでこの街の住人たちはある日突然『異世界行き』という憂き目に合うのだ。
ただし、条件に合う者だけだが――
『田中一郎』の後処理に向け手筈を整える。後は異世界行き後に連絡・実行へと移すのみだ。
「さて、お次はと――」
『蕪木萌香』さん。この子は覚えている。少し前に自分が異世界行き対象者としてピックアップした子だ。
だがこうも早く異世界送りになるとは想像していなかった。
――身寄り無し。不動産はあり。戸建て、と……。
この場合は処理に時間がかかる。
家は売却となるが買い手が付かねばまずは更地とする。といった手続きなどが発生するのである。
賃貸の方が手間がかからない。空っぽにすればいいだけなので。
18歳……
まだまだ明るい未来がありそうだが……
人生イロイロだ……
「よし」と気合を入れ仕事を進める。
件の女神様は宙に浮かんでいる鏡のような物を見て、うふふふと楽しそうにしている。
世の中を見通せる鏡だという事です。神器という物なのでしょうか。
日々人智を超えている様を目の当たりにし、神っているのだなーと。薄らぼんやりと思うのでした。
「おっはようございまーす!」
毎朝元気に明るい声で出社してくる女神様。カツカツとヒールの音が響く。
女神のママの姿だと悪目立ちするとの事で、日本人に扮しているが美人である事に変わりはない。
「おはようございます」
チラリと目を向け挨拶を返す。
「ン~~。眼鏡ちゃんはいつも通りね~」
「はぁ」
気のない返事を返すが『どう!?』と言わんばかりに髪をかきあげこちらを見てくる。
「今日も変わらずお綺麗ですよ」
適当に返す。
「ん、ん、ん~♪ それはそう! だ・け・ど!! どお♪ 少し髪の色を明るくしたの~!」
「ああ、お似合いですよ」
「ん、もぉ~~。つまんない人ねッ」
「はぁ」
毎度飽きもせず、ああしてみた、こうしてみたと。この女神様は、大層俗世を堪能しておられる様で、合コンへもしょっちゅう参加している。
女神様はドカリと『課長席』へと座る。
そう。このお方、この『異世界行き課』の課長なのである。
「さて、早速だけど昨日の件」
「はい、異世界送りですね」
「そそ。名前は『蕪木萌香ちゃん』」
眼鏡はパソコンに名前を打ち込み情報を出す。
「この子はね~。ちょーっと面白いのよ~♪」
ウフフと笑って見せる女神様。
「準備よろしくね♪ あっと、来週末にタナカちゃん送る事になるから。当日は残業になるかもねー」
「承知いたしました」
『蕪木萌香』眼鏡は資料にサクッと目を通し、次の『異世界行き』送りとして準備を始める。
――それと、まずは「田中一郎」さんっと。
田中一郎氏の最終確認を始める。身寄り無し。不動産も無し。車も無し。借金も無し。大きな趣味も無し。アパートに一人暮らし。アパート一室分なので荷物もそんなに多くはないと見た。ナイナイづくしである。後処理も滞りなく進むであろう。
仕事関連は、まぁこちらの管轄ではないので問題ないといいですね。といった具合だ。
「異世界行きが決まっているのなら先に教えてくれ!」という苦情が発生する事は明白なので、選定作業は秘密裏に運ばれている。なのでこの街の住人たちはある日突然『異世界行き』という憂き目に合うのだ。
ただし、条件に合う者だけだが――
『田中一郎』の後処理に向け手筈を整える。後は異世界行き後に連絡・実行へと移すのみだ。
「さて、お次はと――」
『蕪木萌香』さん。この子は覚えている。少し前に自分が異世界行き対象者としてピックアップした子だ。
だがこうも早く異世界送りになるとは想像していなかった。
――身寄り無し。不動産はあり。戸建て、と……。
この場合は処理に時間がかかる。
家は売却となるが買い手が付かねばまずは更地とする。といった手続きなどが発生するのである。
賃貸の方が手間がかからない。空っぽにすればいいだけなので。
18歳……
まだまだ明るい未来がありそうだが……
人生イロイロだ……
「よし」と気合を入れ仕事を進める。
件の女神様は宙に浮かんでいる鏡のような物を見て、うふふふと楽しそうにしている。
世の中を見通せる鏡だという事です。神器という物なのでしょうか。
日々人智を超えている様を目の当たりにし、神っているのだなーと。薄らぼんやりと思うのでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる