はい、こちらは『異世界行き課』です。ご用件をどうぞ。

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ほら、こちらは『異世界行き課』です。

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蕪木萌香かぶらきもえか』のパパ活を阻止し食事を共にした眼鏡。
 過干渉であったかもしれないと頭をよぎったが、公務員として公序良俗に反する行いは見逃せなかったと、自分に言い聞かせる。

 数日後、「蕪木萌香」からお礼がしたいと連絡があったが、公務員としてお礼を受け取る事は出来ない旨を伝えると、「友達として会いたい」と提言を受ける。

 胸がギュッとなる。
「会いたい」と、なんてストレートに伝えてくれるのであろうか。顔がニヤけてしまう。
 友達なら仕方あるまいと、早速会う約束をする。

 ――『推し』とはこういうモノか……
 応援したい。会いたい。幸せであって欲しい――
 自身の感情にただただギューっとなる眼鏡。

 そんな様を女神様は頬杖をつきながら見つめている。
「ふぅ~ん……」
 そして指に髪をクルクルと絡ませながら何やら思案しているようであった。


 眼鏡はそれから何度か萌香と会っていた。そして今夜もといったところで女神様が声を掛けてきた。
「あらあらあら~♪ な~に眼鏡ちゃん。デ~トっ、か・し・ら~~♪」

 ――しまった……。態度に出ていたか……。
「ええ、まぁ」
 今夜は久しぶりに萌香と会う事になっていたので浮かれていたようだ。下手な言い訳も訂正も面倒臭い事になりそうだなと、いつものように適当に返事をする。

「んふふ~~♪ 仲良しね~」
 誰と会うのかはお見通しのようだ。
「でも~~。あんまり入れ込むと、後が辛いわよ~~」

 その通りである。あえて見ないようにしていたが「蕪木萌香」の異世界送りは差し迫ってきている。
「……ええ、まぁ」

「あ! そうそう、ところで~」
 元気に話題を変えてくる女神様。
「何か面白い掛け声はないかしら!」

「掛け声? ですか……」
 唐突過ぎて要領を得ない眼鏡。

「そそ。一つはね~ェ、女が男、男が女になる掛け声!」
「女が男に……」
「そ! 性転換になる掛け声ね! その言葉を考えて欲しいわ♪」
「ああ、なるほど。既存品ではなく新たに考案するのですね。『エイエイオー』といった部類でしょうか」
「カッコイイ! より、面白い! っていう方がイイのよね~」
「面白い! ですか……」
「そ。あと重要なのはうっかり口にしないようなヤツね~」
「はぁ」

 あれこれと意見を出し合っているとついに女神様が行き当たる。
「『チンパイチンパイチンチンチン』! どう!?」
 目を輝かせながらドヤ顔を見せてくる女神様。

「『チンパイチンパイチンチンチン』……。『チン』と『パイ』という事ですね……」
「特徴は捉えてるしー、別にカッコよくはないし♪ うっかり口に出すような言葉でもないしー、ね! 最高じゃない!?」

「…………。 流石に性的過ぎではありませんか……」
「あら~そぅ? イイと思ったんだけどー……」

「ふむ……。 『チン』の『ン』を『と』に変えるのはいかがでしょうか。『チン』と『パイ』ではなく更に略して『チ』と『パイ』という事で。『パイ』は縮めると言い辛くなりそうですのでそのママで」

「『チトパイチトパイチンチンチン』! ん。イイわね♪ これにするわ♪」
 何がいいのかは理解出来ないが解決に至ったなら良かったと、時計を見やる眼鏡。

「次は~、こ~、ボンっ、ってするやつ!」
「ボンっ ですか…… 。爆発系といったところでしょうか」
「そそ♪  ボンっってね♪ これもオモシロオカシクねっ♪」
「ふむ…‥。 爆発……。 『〇〇ボンバー!』といった具合ですかね……」
「『〇〇ボンバー!』……。〇〇がキーになるわね~♪」

 チラリとまた時計に目をやる眼鏡。
「んん~♪ 萌香ちゃんとデ~トっだものね~~♪ 残業にならないようパパっと決めちゃいましょ♪」
「まぁ、その……」と居心地悪そうに返す眼鏡。

「あ! 『パパ活ボンバー!!』」
「ブッ」
 流石に吹き出す眼鏡。萌香から着想を得たのだと察する。
「それも流石に……」
「そぉ? なかなかと思ったのだけど~~」

「あ、では『萌え萌えボンバー』」
 眼鏡も負けじと萌香からもじる。

「! な・る・ほ・ど~! 眼鏡ちゃんっ、やるじゃな~~い♪」
「いえいえ」

 といったところで終業のチャイムが鳴る。
「それではお先に失礼いたします」
 小走りで席を後にする眼鏡。

「ハイハイ。おつかれちゃ~ん♪」
 手をヒラヒラとさせ見送る女神様。


「ま、野良猫に懐かれると嬉しいものよね」
 やれやれといった表情を見せる女神様なのでした。
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