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前編
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マリエル・ジュライト伯爵令嬢はジュライト伯爵家の一人娘である。
金髪碧眼が美人の基準である貴族としては大変平凡な栗色の髪と濃い茶色の瞳を持ち、10人に聞けば10人が平凡と答えるような地味な印象の顔立ちだ。
ジュライト伯爵の領地は王都から離れた場所に位置し、自然豊かといえば聞こえがいいが、酪農が中心ののどかな田舎で、マリエルは小さな頃から領地でおっとりと育ち、のどかな領民と触れ合いながら、将来は婿を取り、現領主である父親の跡を継ぐつもりでいた。
マリエル、13歳の春
マリエルは父であるジュライト伯爵の書斎の扉を忙しなく叩くと、部屋の中へ駆け込んだ。
「お父様、マリエルです。今宜しいでしょうか?」
「マリエル、お帰り。どうし……」
父親譲りの濃い茶色の瞳をキラキラさせながら、マリエルは父親の手を両手で握りしめる。
「お父様!わたくし、婚約したい方がおりますの!ええ!是非とも!」
「いやいや、マリエル、何を…」
いつもおっとりとしている娘はどこへ行った。ジュライト伯爵は握られた手を上下にブンブン振られるままになってしまっている。
「マリエル、落ち着いてお話ししなければ、お父様もわかりませんよ。」
興奮する娘のあとから入ってきたのは、マリエルとともにお茶会から帰ったジュライト伯爵夫人だ。
父と母に宥められ、ソファに座ったマリエルは改めて話し出す。
「わたくし、今日のお茶会で運命の出会いをいたしましたの!お父様、是非ともレイオン様と婚姻したいのですわ。」
「レイオン?まさか、あのレイオン・カレンディールかい?!」
**************
「レイオン。お前に婚約の話が来ている。」
「私にですか?」
カレンディール侯爵家はレイオンの上に2人の兄がおり、7つ上の長兄の婚約がまとまったところである。順番で言えば4つ上の次兄に話が来るところであろう。
「相手はジュライト伯爵家のマリエル嬢だ。」
「マリエル嬢?覚えがないですね。」
「先日のルビナス伯夫人のお茶会で、お前を見染めたそうだ。」
「はあ……」
見染めたのが格下の伯爵令嬢と聞いてレイオンはがっかりした。
レイオン・カレンディールは白皙の美少年だ。母親譲りの光り輝くような金髪とどこまでも透き通る海のような深い碧眼。
学園に通い始めた14歳ではあるが、女性に囲まれるのはすでに日常になっている。
本人が知らないうちに見染められ、婚約の打診や愛人の立候補など当たり前のように湧いてくる。
16歳で社交界にデビューしてからと言うもの「陽光の君」やら「新緑の貴公子」などと言われた長兄は、隣国の末の王女との婚約が決まった。王女とは言わないが、もう少し良い縁を願ってもいいだろう。
「父上、この話は無かったことに……」
「この婚約はお受けすることにする。」
「はあ?いえっ!父上!私はまだ学生で、そんなに急いで決める必要はないでしょう!」
父もてっきり断るのだと思っていたレイオンは慌てて反対するが、カレンディール侯爵は嬉しそうだ。
「マリエル嬢も来年から学園に通うとのことだ。3年後、卒業を待って婚姻しよう。」
そして真面目な顔でレイオンを見つめると続けた。
「いいか、レイオン。カレンディール侯爵家は手持ちの爵位は侯爵家以外に子爵しかない。しかも子爵は無領地だ。
お前が伯爵家に求められて婿入りできることは幸運だ。貴族は血筋も見た目も重要だと言われているが、それだけではないと私は考えるんだよ。」
カレンディール家は遥か昔、時の王弟が興した公爵家に始まり、様々な有力貴族と婚姻を結んできた家である。
権力のある家柄にこだわり、美しい容姿にこだわって綿々と続いてきた血脈だが、前カレンディール公爵のある失策が元で降爵され侯爵となった。
爵位だけではない。先祖代々続いてきた名家といえど、領地も少しずつ失っていることに現カレンディール侯爵は、ようやっと危機感を感じ始めていたのである。
カレンディール侯爵は自分に商才がないことは自覚している。侯爵家を維持するので精一杯だ。
ジュライト伯爵家の名前は、最近よく聞いていた。伯爵家と言うよりは食材の産地としてだが。
名前のあがる家はなにかある!
カレンディール侯爵の持論だ。
カレンディール侯爵家とジュライト伯爵家の婚約はトントン拍子に進み、両家の顔合わせも滞りなく済んだ。
しかし、レイオンとマリエルの距離が縮まる事はなかった。
いよいよマリエルが学園に入学する前日、レイオンがジュライト伯爵家を訪問した。色々理由をつけては婚約者として交流を避けてきたレイオンの来訪に、マリエルは満面の笑みで迎えた。
「学園では私に関わらないでもらおう。」
「はい?」
「私はまだこの婚約をまだ了承していない。!学園では間違っても婚約者気取りはしないで欲しい。」
「それは、レイオン様のお願いですか?」
「お願いというか…まあいい。とにかく、学園では関わらなければいい。」
言いたいことだけ言うと、レイオンは帰っていった。
「なんて失礼な!!お嬢様!いくらイケメンでも言っていいことと悪いことがあります!このことは旦那様に報告して」
「お父様とお母様が留守で良かったわ。
エミリ、このことは内緒よ。婚約解消されちゃうもの、」
唇の前に人差し指を立ててマリエルは侍女のエミリに笑いかける。
「こんなことで婚約解消されちゃったら大変よ。わたくし、ど~してもレイオン様と婚姻したいの。」
「お嬢様~っ!なんでですか?イ、イケメンだからですか?イケメンだけど、イケメンだけど~!!」
「エミリって面食いよね~。
いいのよ、わたくしは婚約していただけで充分なのだから。」
**************
サザラウンド王立学園は、サザラウンド王国の貴族の子息子女のほとんどが通う学校である。
王室から支援を受け、貴族からの寄付で成り立つこの学校は、基本的に14歳で入学資格を得ると2年の基本カリキュラムが組まれる。基礎的な授業を一単位として規定の単位数を取れれば卒業となるが、専門的な授業は2年間のカリキュラム修了後、自由に選択することが出来る。
女生徒の多くは2年で卒業となるが、男子生徒、特に領主や官僚など専門的な知識を求める生徒は卒業単位取得後、1~2年ほど多く学生生活を送ることが多いだろう。知識、人脈を広げることが目的とされるのと同時に、王室、貴族が有望な人材を育成、確保する場ともなっているのである。
入学して2週間が経ったある日、マリエルは1年の校舎前でレイオンを見かけた。
「まぁ!ご覧になって。レイオン様とイザベル様ですわ。」
「なんて麗しいのでしょう。」
レイオンの美しさに周囲の視線が集まる。
そのレイオンと一緒に歩いているのは、同じ2年に在籍している、かの有名なイザベル・ウルリアス伯爵令嬢だ。美しいレイオンに勝るとも劣らない美貌の持ち主。豊かな波打つ金髪に深い蒼の瞳。大きな瞳を縁取る長い睫毛。薔薇色の頬と艶めく唇はまるで果実のようである。
「お二人が並ぶと、まるで絵のようですわ。」
「レイオン様が伯爵令嬢と婚約したと言う噂を聞きましたわ。やはりイザベル様でしょうか。」
遠巻きに眺める令嬢たちに紛れ、マリエルは歩き去る二人を見送った。そう、紛れているのでレイオンに気づかれなかったのだ。決して地味だからではない、はずだ。
ちょっとだけ悲しくなったマリエルがそっと人垣から離れると声をかけられた。
「マリエル・ジュライト伯爵令嬢様。紹介もなくご挨拶することお許しください。ステラ・マリガルと申します。」
「まぁ、マリガル男爵家のご令嬢ね。そんなにかしこまらないで、学園内では身分は関係ないと聞きましたわ。」
「…ありがとうございます。えと、マリガル家をご存知でしたか?」
「ええ。わたくしの名前と似ているので覚えておりましたの。」
にっこり笑うマリエルに、ステラは少し考えるの様子を見せるが、そっと伺うように聞いてみた。
「マリエル様。大変不躾な質問ですが、マリエル様はもうご婚約をされておられますよね?」
「ええ。」
「その方についてお伺いしてもよろしいですか?」
「わたくしからお話しすることはありませんわ、新聞社の方には。」
「…っ…ご存知でしたか。」
うふふとマリエルは扇子で口元を隠しておっとりと笑う。
マリガル家は喧伝こそしてはいないが、最近世間に広まった新聞社の出資元である。しかし、その創設に関わったのがマリガル男爵令嬢であると言うことは知る人ぞ知る情報であった。
「以前、領地の特集をしていた時に興味を持ちましたの。
その記事を書いたのがマリガル男爵令嬢と聞いて驚きましたわ。」
「………レイオン様の噂の婚約者様の情報を確認したかったのですが、やめておきます。マリエル様、失礼いたしました。」
「宜しいのですか?」
「ええ、そんな噂の話よりマリエル様に興味を持ちましたわ。わたしの新聞をご覧になる令嬢に始めてお会いしましたので。」
ステラの知る貴族令嬢とは、噂話とお洒落にだけ興味を持ち、いい家柄の伴侶を得るため血道を上げるものだと思っていた。
社交界ですでに話題となっているレイオン・カレンディールが、マリエル・ジュライトと婚約したと言う情報はほんの偶然から手に入った。
新聞に載せるにはゴシップ要素が強く、購読者層の商業・工業界ではあまり大きな記事にはならないと判断したが、正しい情報を把握したい欲求を満たすためにマリエルに話しかけたのだが。
まさか自分の新聞に興味をもつ令嬢だったとは。
**************
*補足*
作中に出てくる新聞は、いわゆる日刊紙ではありません。日刊紙と専門の情報誌の間みたいなイメージです。
金髪碧眼が美人の基準である貴族としては大変平凡な栗色の髪と濃い茶色の瞳を持ち、10人に聞けば10人が平凡と答えるような地味な印象の顔立ちだ。
ジュライト伯爵の領地は王都から離れた場所に位置し、自然豊かといえば聞こえがいいが、酪農が中心ののどかな田舎で、マリエルは小さな頃から領地でおっとりと育ち、のどかな領民と触れ合いながら、将来は婿を取り、現領主である父親の跡を継ぐつもりでいた。
マリエル、13歳の春
マリエルは父であるジュライト伯爵の書斎の扉を忙しなく叩くと、部屋の中へ駆け込んだ。
「お父様、マリエルです。今宜しいでしょうか?」
「マリエル、お帰り。どうし……」
父親譲りの濃い茶色の瞳をキラキラさせながら、マリエルは父親の手を両手で握りしめる。
「お父様!わたくし、婚約したい方がおりますの!ええ!是非とも!」
「いやいや、マリエル、何を…」
いつもおっとりとしている娘はどこへ行った。ジュライト伯爵は握られた手を上下にブンブン振られるままになってしまっている。
「マリエル、落ち着いてお話ししなければ、お父様もわかりませんよ。」
興奮する娘のあとから入ってきたのは、マリエルとともにお茶会から帰ったジュライト伯爵夫人だ。
父と母に宥められ、ソファに座ったマリエルは改めて話し出す。
「わたくし、今日のお茶会で運命の出会いをいたしましたの!お父様、是非ともレイオン様と婚姻したいのですわ。」
「レイオン?まさか、あのレイオン・カレンディールかい?!」
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「レイオン。お前に婚約の話が来ている。」
「私にですか?」
カレンディール侯爵家はレイオンの上に2人の兄がおり、7つ上の長兄の婚約がまとまったところである。順番で言えば4つ上の次兄に話が来るところであろう。
「相手はジュライト伯爵家のマリエル嬢だ。」
「マリエル嬢?覚えがないですね。」
「先日のルビナス伯夫人のお茶会で、お前を見染めたそうだ。」
「はあ……」
見染めたのが格下の伯爵令嬢と聞いてレイオンはがっかりした。
レイオン・カレンディールは白皙の美少年だ。母親譲りの光り輝くような金髪とどこまでも透き通る海のような深い碧眼。
学園に通い始めた14歳ではあるが、女性に囲まれるのはすでに日常になっている。
本人が知らないうちに見染められ、婚約の打診や愛人の立候補など当たり前のように湧いてくる。
16歳で社交界にデビューしてからと言うもの「陽光の君」やら「新緑の貴公子」などと言われた長兄は、隣国の末の王女との婚約が決まった。王女とは言わないが、もう少し良い縁を願ってもいいだろう。
「父上、この話は無かったことに……」
「この婚約はお受けすることにする。」
「はあ?いえっ!父上!私はまだ学生で、そんなに急いで決める必要はないでしょう!」
父もてっきり断るのだと思っていたレイオンは慌てて反対するが、カレンディール侯爵は嬉しそうだ。
「マリエル嬢も来年から学園に通うとのことだ。3年後、卒業を待って婚姻しよう。」
そして真面目な顔でレイオンを見つめると続けた。
「いいか、レイオン。カレンディール侯爵家は手持ちの爵位は侯爵家以外に子爵しかない。しかも子爵は無領地だ。
お前が伯爵家に求められて婿入りできることは幸運だ。貴族は血筋も見た目も重要だと言われているが、それだけではないと私は考えるんだよ。」
カレンディール家は遥か昔、時の王弟が興した公爵家に始まり、様々な有力貴族と婚姻を結んできた家である。
権力のある家柄にこだわり、美しい容姿にこだわって綿々と続いてきた血脈だが、前カレンディール公爵のある失策が元で降爵され侯爵となった。
爵位だけではない。先祖代々続いてきた名家といえど、領地も少しずつ失っていることに現カレンディール侯爵は、ようやっと危機感を感じ始めていたのである。
カレンディール侯爵は自分に商才がないことは自覚している。侯爵家を維持するので精一杯だ。
ジュライト伯爵家の名前は、最近よく聞いていた。伯爵家と言うよりは食材の産地としてだが。
名前のあがる家はなにかある!
カレンディール侯爵の持論だ。
カレンディール侯爵家とジュライト伯爵家の婚約はトントン拍子に進み、両家の顔合わせも滞りなく済んだ。
しかし、レイオンとマリエルの距離が縮まる事はなかった。
いよいよマリエルが学園に入学する前日、レイオンがジュライト伯爵家を訪問した。色々理由をつけては婚約者として交流を避けてきたレイオンの来訪に、マリエルは満面の笑みで迎えた。
「学園では私に関わらないでもらおう。」
「はい?」
「私はまだこの婚約をまだ了承していない。!学園では間違っても婚約者気取りはしないで欲しい。」
「それは、レイオン様のお願いですか?」
「お願いというか…まあいい。とにかく、学園では関わらなければいい。」
言いたいことだけ言うと、レイオンは帰っていった。
「なんて失礼な!!お嬢様!いくらイケメンでも言っていいことと悪いことがあります!このことは旦那様に報告して」
「お父様とお母様が留守で良かったわ。
エミリ、このことは内緒よ。婚約解消されちゃうもの、」
唇の前に人差し指を立ててマリエルは侍女のエミリに笑いかける。
「こんなことで婚約解消されちゃったら大変よ。わたくし、ど~してもレイオン様と婚姻したいの。」
「お嬢様~っ!なんでですか?イ、イケメンだからですか?イケメンだけど、イケメンだけど~!!」
「エミリって面食いよね~。
いいのよ、わたくしは婚約していただけで充分なのだから。」
**************
サザラウンド王立学園は、サザラウンド王国の貴族の子息子女のほとんどが通う学校である。
王室から支援を受け、貴族からの寄付で成り立つこの学校は、基本的に14歳で入学資格を得ると2年の基本カリキュラムが組まれる。基礎的な授業を一単位として規定の単位数を取れれば卒業となるが、専門的な授業は2年間のカリキュラム修了後、自由に選択することが出来る。
女生徒の多くは2年で卒業となるが、男子生徒、特に領主や官僚など専門的な知識を求める生徒は卒業単位取得後、1~2年ほど多く学生生活を送ることが多いだろう。知識、人脈を広げることが目的とされるのと同時に、王室、貴族が有望な人材を育成、確保する場ともなっているのである。
入学して2週間が経ったある日、マリエルは1年の校舎前でレイオンを見かけた。
「まぁ!ご覧になって。レイオン様とイザベル様ですわ。」
「なんて麗しいのでしょう。」
レイオンの美しさに周囲の視線が集まる。
そのレイオンと一緒に歩いているのは、同じ2年に在籍している、かの有名なイザベル・ウルリアス伯爵令嬢だ。美しいレイオンに勝るとも劣らない美貌の持ち主。豊かな波打つ金髪に深い蒼の瞳。大きな瞳を縁取る長い睫毛。薔薇色の頬と艶めく唇はまるで果実のようである。
「お二人が並ぶと、まるで絵のようですわ。」
「レイオン様が伯爵令嬢と婚約したと言う噂を聞きましたわ。やはりイザベル様でしょうか。」
遠巻きに眺める令嬢たちに紛れ、マリエルは歩き去る二人を見送った。そう、紛れているのでレイオンに気づかれなかったのだ。決して地味だからではない、はずだ。
ちょっとだけ悲しくなったマリエルがそっと人垣から離れると声をかけられた。
「マリエル・ジュライト伯爵令嬢様。紹介もなくご挨拶することお許しください。ステラ・マリガルと申します。」
「まぁ、マリガル男爵家のご令嬢ね。そんなにかしこまらないで、学園内では身分は関係ないと聞きましたわ。」
「…ありがとうございます。えと、マリガル家をご存知でしたか?」
「ええ。わたくしの名前と似ているので覚えておりましたの。」
にっこり笑うマリエルに、ステラは少し考えるの様子を見せるが、そっと伺うように聞いてみた。
「マリエル様。大変不躾な質問ですが、マリエル様はもうご婚約をされておられますよね?」
「ええ。」
「その方についてお伺いしてもよろしいですか?」
「わたくしからお話しすることはありませんわ、新聞社の方には。」
「…っ…ご存知でしたか。」
うふふとマリエルは扇子で口元を隠しておっとりと笑う。
マリガル家は喧伝こそしてはいないが、最近世間に広まった新聞社の出資元である。しかし、その創設に関わったのがマリガル男爵令嬢であると言うことは知る人ぞ知る情報であった。
「以前、領地の特集をしていた時に興味を持ちましたの。
その記事を書いたのがマリガル男爵令嬢と聞いて驚きましたわ。」
「………レイオン様の噂の婚約者様の情報を確認したかったのですが、やめておきます。マリエル様、失礼いたしました。」
「宜しいのですか?」
「ええ、そんな噂の話よりマリエル様に興味を持ちましたわ。わたしの新聞をご覧になる令嬢に始めてお会いしましたので。」
ステラの知る貴族令嬢とは、噂話とお洒落にだけ興味を持ち、いい家柄の伴侶を得るため血道を上げるものだと思っていた。
社交界ですでに話題となっているレイオン・カレンディールが、マリエル・ジュライトと婚約したと言う情報はほんの偶然から手に入った。
新聞に載せるにはゴシップ要素が強く、購読者層の商業・工業界ではあまり大きな記事にはならないと判断したが、正しい情報を把握したい欲求を満たすためにマリエルに話しかけたのだが。
まさか自分の新聞に興味をもつ令嬢だったとは。
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*補足*
作中に出てくる新聞は、いわゆる日刊紙ではありません。日刊紙と専門の情報誌の間みたいなイメージです。
応援ありがとうございます!
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