猛虎閣下は番を溺愛したいけど方法が分からない!

ぽよよん

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愛ってなんぞや

第二十五話

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 ーー時間は少し遡る。

 山の中でディアナが2回目の狼煙に火をつける。手が震えてなかなか火が付かないが、無事、不思議な青い煙が空へと上がって行く。
 これで良し、とばかりにパンパンと手を叩いて煙を眺める。第二の門の人たちが気がついていてくれることを祈るばかりだ。

「では、我々は第二の門にむかいます。」

「「「大将、姐さん、御武運を!!」」」

 スミノフの号令に従って、第三兵団の面々は木々の間を縫って走り去って行く。

(姐さんて、わたくしのことよね…)

 初めは奥様やら夫人やら呼んでいた団員たちに、名前でも構わないから気楽に呼んでほしい、と伝えたところ何故か「姐さん」呼びをするものが続出。
 どうやら気楽に呼んでいるようなので、若干の違和感は気が付かないこととした。
 ちなみに名前呼びは、殺気だけで殺されそうな気がするので、団員の中では速攻で却下された。


「皆様も御武運を。」

 ディアナの声に応えるようにスミノフがくるりと宙を回って飛んでいった。







「以前、兄とフランツ殿下と山の中を探索した時にあの場所を見つけましたの。」 
 
 バルドゥルの背にしがみつくディアナが切れ切れに話す。
 
 バルドゥルとディアナが向かっているのは、第一の門だ。二人の他、隠密に長けた兵士が二人ついてきている。
 第二の門の戦闘中に第一の門を奪還する。
 これこそがディアナが戦場へと出てきた目的である。第一の門には魔道具によるからくりがあるが、その操作方法はディアナしかわからず、またディアナも説明できるほど詳しいわけではない。
 ディアナが実際動かした方が間違いない、と言うのである。

 もちろんバルドゥルだけでなくラビアやレオンハルトも反対したが、見たことのない魔道具にモルゼコフがディアナの味方に付いたのである。



「兄は戦争は嫌いですが、戦術を立てるのは好きなのです。本人は認めませんが。」

「バルド王国では必要かっただろう。」

「ええ、でもいつでも備えなければならないとフランツ殿下はお考えでしたわ。」

 
 戦うわけではないが、ディアナは初陣だ。
 初陣の時は誰しもが、怯えや緊張から思いもかけないミスをする。そのミスが命取りになった仲間を何人も見てきたバルドゥルは、出来るだけディアナに話をさせる。
 余計なことを考えないように。
 少しでも緊張をほぐすように。


「狼煙の色を変える事ができると聞いて、フランツ殿下があの青い狼煙をプレゼントだと
言って持ってきたのです。
 おかしいですよね。宝飾品ではないのですから。フランツ殿下の目の色だなんて。」

「目の色と宝飾品はなんの関係があるんだ?」

「バルドでは相手に自分の目や髪の色の宝飾品を贈るのです。フランツ殿下は綺麗な青い目をしていますから。」

 ディアナの緊張をほぐすためなどと思っていたが、自分へのダメージがデカすぎる。
 目の色の宝飾品なんて知らんぞ。
 俺の目の色の宝飾品………。

 それにフランツ王太子の話が多すぎじゃないか?幼馴染だというから仕方がないかもしれないが、羨ましい!




「バルドゥル様!第一の門が見えましたわ。」

 木立の間から石造りの砦のようなものが見える。
 崖から繋がるような作りの塀の近くに身を隠す。

「やはり残っている人数は少ないな。」

 門の前後に2~3人の見張りが見えるだけで、他に人影はないように見える。あたりは風に揺れる木々の音や鳥の声だけで人の声はしない。

「第一の門が占拠されたのに、第二の門を占拠できていないと言うことは、第一の門の兵士に間者スパイがいたと考えますわ。」

「そうだな。」

「ということは、門の中にいる者たちは全て拘束という事でいいですかね?」

「ああ、門の外に逃げ出した奴は追わなくていい。もし捉えられている者をを見つけても後回しだ。俺たちには敵か味方か区別がつきにくいからな。」

「「了解。」」


 そうして、四人は第一の門の屋上に降り立ったのである。
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