如何様陰陽師と顔のいい式神

銀タ篇

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それから

10-02:それぞれのその後

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 それから暫くの後。
 今回の功績を讃え、更に昇進した輝く君は、めでたく内親王との結婚が決まったという報せが昂明達の元に届いた。当然、輝く君が押し切られる形だったことは言うまでもない。

 しかし個人的に言わせてもらうなら、内親王は人間的にとても出来た女性だ。
 結婚するとなれば内親王は降嫁することになるのだろうが、しかし中宮大夫の話ではないが、皇籍復帰する可能性もある。いずれにしても本人の意思はともかく輝く君にとっては良い縁なのではないかと思う。

 あくまで昂明が思っている、だけなのだが。
 しかし、更に地位が上がる上結婚したら当然仕事も増えるだろう。今までのように頻繁に姫達の元に通うのは難しくなりそうだな……とは思うのだった。

 昂明と銀は今まで通りの生活を続けている。
 しかし少しだけ以前と変わったこともあった。
 自分自身のこと。それに銀のこと。

 頼央邸での泰山府君祭の評判もあってか、以前よりは陰陽寮の中で肩身は狭くなくなったし、陰陽寮の仕事にも真面目に取り組むようにもなった。昂明のことを目の敵にしていた者たちは以前より嫌味を言わなくなったし、嫌がらせも減ったように思う。
 そして以前のように雑務に近いような事ばかりいいつけられることは減って、まっとうな頼まれごとをすることも増えた。

(もしかして晴明さまはこうなる事を見越して、俺に嘘の府君祭を任せたんだろうか)

 真意は分からないし、きっと聞いても教えてはくれないだろう。
 けれどそのお陰もあって、以前より少しだけ前向きになる事が出来た気がする。陰陽頭になろうとまでは思わないが、せめてこの居場所を用意してくれた爺様に認めて貰える程度には頑張りたい。
 それに、銀のこれからを守る為にも。

 銀は一層太刀の稽古に励み、時折は頼央の邸へ赴いて稽古をつけて貰っている。まだまだ頼央には遠く及ばないらしいのだが、目標が出来たからか以前より生き生きとしているように見える。
 しかし困ったのは頼央邸を訪れるたび、銀のことを一目見ようと女房達がわっと集まってくることだ。これには流石の銀も困り果てている。

 上の兄晶朝は変わらず式部少丞を務めつつ、時折輝く君の宴に呼ばれることも少なくはない。しかしいずれ輝く君は内親王と結婚する。そうなると輝く君の立場も変わるだろうし今までと同じようには行かないかもしれぬと憂いている。

 下の兄弘継は、頼央の屋敷で行った泰山府君祭の際に他の検非違使達と中宮大夫、弾正大弼両名を捕らえるのに貢献した。もしかすると近々帝より褒美を賜るかもしれないそうだ。何より弘継の地位が向上すれば……兵部卿の二の姫との結婚に一歩近づくことになる。そのせいか近々浮き足立っていて、何を話しかけても心ここに在らずなことが多い。
 困った兄だと、昂明は思う。

 桜は、変わらない。
 死人から生者に戻ったはずの桜だが、未だに昂明達と共に邸にいる。
 実は、頼央が桜を引き取るという話も出てはいるのだ。
 しかし、当の本人が首を縦に振らない為、無理やりに行かせる訳にもいかず、頼央も『気長に返事を待つ』と言ってくれている。

 しかし、子供の成長は早い。
 いずれ桜も成長し大人になってゆくのだ。その時までに、昂明達の元でしてやれることはそう多くはない。

 あの日、泰山府君祭を行ったあの夜のことを昂明は思い出す。
 頼央と輝く君、それに昼貞と共に公卿たちの中にいた桜。
 やはり桜のいるべき場所はあそこだと感じた。少なくとも昂明達にはそこまでのことをしてやることが出来ない。
 出来ることなら、恵まれた環境で暮らした方が本当は良いと思ってはいるのだが……。
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