74 / 77
それから
10-02:それぞれのその後
しおりを挟む
それから暫くの後。
今回の功績を讃え、更に昇進した輝く君は、めでたく内親王との結婚が決まったという報せが昂明達の元に届いた。当然、輝く君が押し切られる形だったことは言うまでもない。
しかし個人的に言わせてもらうなら、内親王は人間的にとても出来た女性だ。
結婚するとなれば内親王は降嫁することになるのだろうが、しかし中宮大夫の話ではないが、皇籍復帰する可能性もある。いずれにしても本人の意思はともかく輝く君にとっては良い縁なのではないかと思う。
あくまで昂明が思っている、だけなのだが。
しかし、更に地位が上がる上結婚したら当然仕事も増えるだろう。今までのように頻繁に姫達の元に通うのは難しくなりそうだな……とは思うのだった。
昂明と銀は今まで通りの生活を続けている。
しかし少しだけ以前と変わったこともあった。
自分自身のこと。それに銀のこと。
頼央邸での泰山府君祭の評判もあってか、以前よりは陰陽寮の中で肩身は狭くなくなったし、陰陽寮の仕事にも真面目に取り組むようにもなった。昂明のことを目の敵にしていた者たちは以前より嫌味を言わなくなったし、嫌がらせも減ったように思う。
そして以前のように雑務に近いような事ばかりいいつけられることは減って、まっとうな頼まれごとをすることも増えた。
(もしかして晴明さまはこうなる事を見越して、俺に嘘の府君祭を任せたんだろうか)
真意は分からないし、きっと聞いても教えてはくれないだろう。
けれどそのお陰もあって、以前より少しだけ前向きになる事が出来た気がする。陰陽頭になろうとまでは思わないが、せめてこの居場所を用意してくれた爺様に認めて貰える程度には頑張りたい。
それに、銀のこれからを守る為にも。
銀は一層太刀の稽古に励み、時折は頼央の邸へ赴いて稽古をつけて貰っている。まだまだ頼央には遠く及ばないらしいのだが、目標が出来たからか以前より生き生きとしているように見える。
しかし困ったのは頼央邸を訪れるたび、銀のことを一目見ようと女房達がわっと集まってくることだ。これには流石の銀も困り果てている。
上の兄晶朝は変わらず式部少丞を務めつつ、時折輝く君の宴に呼ばれることも少なくはない。しかしいずれ輝く君は内親王と結婚する。そうなると輝く君の立場も変わるだろうし今までと同じようには行かないかもしれぬと憂いている。
下の兄弘継は、頼央の屋敷で行った泰山府君祭の際に他の検非違使達と中宮大夫、弾正大弼両名を捕らえるのに貢献した。もしかすると近々帝より褒美を賜るかもしれないそうだ。何より弘継の地位が向上すれば……兵部卿の二の姫との結婚に一歩近づくことになる。そのせいか近々浮き足立っていて、何を話しかけても心ここに在らずなことが多い。
困った兄だと、昂明は思う。
桜は、変わらない。
死人から生者に戻ったはずの桜だが、未だに昂明達と共に邸にいる。
実は、頼央が桜を引き取るという話も出てはいるのだ。
しかし、当の本人が首を縦に振らない為、無理やりに行かせる訳にもいかず、頼央も『気長に返事を待つ』と言ってくれている。
しかし、子供の成長は早い。
いずれ桜も成長し大人になってゆくのだ。その時までに、昂明達の元でしてやれることはそう多くはない。
あの日、泰山府君祭を行ったあの夜のことを昂明は思い出す。
頼央と輝く君、それに昼貞と共に公卿たちの中にいた桜。
やはり桜のいるべき場所はあそこだと感じた。少なくとも昂明達にはそこまでのことをしてやることが出来ない。
出来ることなら、恵まれた環境で暮らした方が本当は良いと思ってはいるのだが……。
今回の功績を讃え、更に昇進した輝く君は、めでたく内親王との結婚が決まったという報せが昂明達の元に届いた。当然、輝く君が押し切られる形だったことは言うまでもない。
しかし個人的に言わせてもらうなら、内親王は人間的にとても出来た女性だ。
結婚するとなれば内親王は降嫁することになるのだろうが、しかし中宮大夫の話ではないが、皇籍復帰する可能性もある。いずれにしても本人の意思はともかく輝く君にとっては良い縁なのではないかと思う。
あくまで昂明が思っている、だけなのだが。
しかし、更に地位が上がる上結婚したら当然仕事も増えるだろう。今までのように頻繁に姫達の元に通うのは難しくなりそうだな……とは思うのだった。
昂明と銀は今まで通りの生活を続けている。
しかし少しだけ以前と変わったこともあった。
自分自身のこと。それに銀のこと。
頼央邸での泰山府君祭の評判もあってか、以前よりは陰陽寮の中で肩身は狭くなくなったし、陰陽寮の仕事にも真面目に取り組むようにもなった。昂明のことを目の敵にしていた者たちは以前より嫌味を言わなくなったし、嫌がらせも減ったように思う。
そして以前のように雑務に近いような事ばかりいいつけられることは減って、まっとうな頼まれごとをすることも増えた。
(もしかして晴明さまはこうなる事を見越して、俺に嘘の府君祭を任せたんだろうか)
真意は分からないし、きっと聞いても教えてはくれないだろう。
けれどそのお陰もあって、以前より少しだけ前向きになる事が出来た気がする。陰陽頭になろうとまでは思わないが、せめてこの居場所を用意してくれた爺様に認めて貰える程度には頑張りたい。
それに、銀のこれからを守る為にも。
銀は一層太刀の稽古に励み、時折は頼央の邸へ赴いて稽古をつけて貰っている。まだまだ頼央には遠く及ばないらしいのだが、目標が出来たからか以前より生き生きとしているように見える。
しかし困ったのは頼央邸を訪れるたび、銀のことを一目見ようと女房達がわっと集まってくることだ。これには流石の銀も困り果てている。
上の兄晶朝は変わらず式部少丞を務めつつ、時折輝く君の宴に呼ばれることも少なくはない。しかしいずれ輝く君は内親王と結婚する。そうなると輝く君の立場も変わるだろうし今までと同じようには行かないかもしれぬと憂いている。
下の兄弘継は、頼央の屋敷で行った泰山府君祭の際に他の検非違使達と中宮大夫、弾正大弼両名を捕らえるのに貢献した。もしかすると近々帝より褒美を賜るかもしれないそうだ。何より弘継の地位が向上すれば……兵部卿の二の姫との結婚に一歩近づくことになる。そのせいか近々浮き足立っていて、何を話しかけても心ここに在らずなことが多い。
困った兄だと、昂明は思う。
桜は、変わらない。
死人から生者に戻ったはずの桜だが、未だに昂明達と共に邸にいる。
実は、頼央が桜を引き取るという話も出てはいるのだ。
しかし、当の本人が首を縦に振らない為、無理やりに行かせる訳にもいかず、頼央も『気長に返事を待つ』と言ってくれている。
しかし、子供の成長は早い。
いずれ桜も成長し大人になってゆくのだ。その時までに、昂明達の元でしてやれることはそう多くはない。
あの日、泰山府君祭を行ったあの夜のことを昂明は思い出す。
頼央と輝く君、それに昼貞と共に公卿たちの中にいた桜。
やはり桜のいるべき場所はあそこだと感じた。少なくとも昂明達にはそこまでのことをしてやることが出来ない。
出来ることなら、恵まれた環境で暮らした方が本当は良いと思ってはいるのだが……。
0
あなたにおすすめの小説
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる