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第五話:嵐がやってきた
5-7:明かされた事実
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「聖弘、君」
「きょっぴーでいいですよ、もう慣れましたし……」
アインさんのマントに入れて貰いながら、エミリオさんと僕とアインさんの三人で歩いてビストロ・ノクターンへと向かう。
最早全員ずぶ濡れなので走るのも無意味だ。
……いや、アインさんだけあんまり濡れていない気がする。
「じゃあきょっぴー。……さっき君は私の事を『聖人みたい』って言ったけれど……本当は違うんだよ。ちゃんと理由があったんだ」
「え?」
「さっき言ったろ? それでもまだここで生きていきたかったって。どうしても、待ちたかったんだ」
アインさんが我慢してまでここで生きてきたかった理由。
それって一体なんなんだろう。
「それに――確かに君のお爺さんは妹から子供を取り上げてしまったけれど、そのお陰で妹の子は死なずに済んだんだ。だから多分、妹はそこに関しては感謝してるんじゃないかな」
「あ……」
そうか。もしも妹さんと一緒にその子が船に乗っていたら、一家全員船の事故で死んでしまっていたかもしれないんだ。
元をただせば、祖父が妹さんたちを受け入れていたのならこんなことにはならなかっただろうけれど。
「……ん?」
そこまで考えて、僕は一つの違和感に突き当たる。
アインさんの妹さんが結婚したのは僕の祖父の子供に当たる人。……そしてアインさんはヴァンパイア。妹さんも当然、ヴァンパイア……。
僕は、ヴァンパイアと人間のハーフ、ダンピール。
……あれ?
「妹がたった一つ残した大切な忘れ形見。……それが君だよ、きょっぴー」
…………。
「えええええええええええっ!?」
そう、確かに話を聞く限り間違いなくそうなんだけれど。いやでも、正直この世のものとは思えない美しさのアインさんが僕の伯父さ……いや、もうそんな呼び方するのも申し訳ない程に僕は一般市民顔だしでもいやそんな……。つまり僕とアインさんは親戚という事になるわけで、でも僕みたいな一般市民がそんなアインさんの親戚なんて恐れ多くていやいや……。
「きょっぴー? きょっぴー?」
「あッ……! エミリオさん!?」
「大丈夫か、えらいぶつぶつ虚空を見ながら言っとたで」
「す、すみません、あまりの事に驚いてしまって……」
慌てて僕はエミリオさんに謝った。
「あれ、でもアインさん。それいつから気づいてたんですか? 僕が妹さんの子供だって」
少なくとも僕はビストロ・ノクターンに来るまでアインさんに会った事がない。仮に会った事があるとしても、それは多分赤ちゃんくらいの時だろう。
「うん、最初は本当に知らなかったんだ。名前を見たときに少しあれ?と思って、その後暫くしてちょっと思うところがあって、それでかな」
思うところって一体何だったんだろう。
気になったけれど、それ以上は深く聞かなかった。
少なくとも今は。
さっきまであんなに号泣していた僕だけれど、ひとしきり泣いて落ち着いたので今はすっかり落ち着いてしまった。
正直穴があったら入りたい。
「そういえば、そのマント、魔法のマントか何かですか? アインさんあんまり濡れてないですよね」
不思議なことに、これだけの豪雨にも拘わらずアインさんのマントの中は思っているよりは濡れていなかった。
「いや、これは超撥水のレインコートだよ。……私はあまり雨は得意ではないからね。最高級のとっておきの一品なんだ」
……まさかのただのレインコートだった。
「ワイはそのまんまで飛び出してきてもーたさかい、もうズボン中までずぶ濡れや。ええなー、店長のレインコート」
エミリオさんが滅茶苦茶羨ましそうにアインさんのレインコートをまじまじと見つめていて、僕はそれが可笑しくて思わず吹き出してしまった。
「きょっぴーでいいですよ、もう慣れましたし……」
アインさんのマントに入れて貰いながら、エミリオさんと僕とアインさんの三人で歩いてビストロ・ノクターンへと向かう。
最早全員ずぶ濡れなので走るのも無意味だ。
……いや、アインさんだけあんまり濡れていない気がする。
「じゃあきょっぴー。……さっき君は私の事を『聖人みたい』って言ったけれど……本当は違うんだよ。ちゃんと理由があったんだ」
「え?」
「さっき言ったろ? それでもまだここで生きていきたかったって。どうしても、待ちたかったんだ」
アインさんが我慢してまでここで生きてきたかった理由。
それって一体なんなんだろう。
「それに――確かに君のお爺さんは妹から子供を取り上げてしまったけれど、そのお陰で妹の子は死なずに済んだんだ。だから多分、妹はそこに関しては感謝してるんじゃないかな」
「あ……」
そうか。もしも妹さんと一緒にその子が船に乗っていたら、一家全員船の事故で死んでしまっていたかもしれないんだ。
元をただせば、祖父が妹さんたちを受け入れていたのならこんなことにはならなかっただろうけれど。
「……ん?」
そこまで考えて、僕は一つの違和感に突き当たる。
アインさんの妹さんが結婚したのは僕の祖父の子供に当たる人。……そしてアインさんはヴァンパイア。妹さんも当然、ヴァンパイア……。
僕は、ヴァンパイアと人間のハーフ、ダンピール。
……あれ?
「妹がたった一つ残した大切な忘れ形見。……それが君だよ、きょっぴー」
…………。
「えええええええええええっ!?」
そう、確かに話を聞く限り間違いなくそうなんだけれど。いやでも、正直この世のものとは思えない美しさのアインさんが僕の伯父さ……いや、もうそんな呼び方するのも申し訳ない程に僕は一般市民顔だしでもいやそんな……。つまり僕とアインさんは親戚という事になるわけで、でも僕みたいな一般市民がそんなアインさんの親戚なんて恐れ多くていやいや……。
「きょっぴー? きょっぴー?」
「あッ……! エミリオさん!?」
「大丈夫か、えらいぶつぶつ虚空を見ながら言っとたで」
「す、すみません、あまりの事に驚いてしまって……」
慌てて僕はエミリオさんに謝った。
「あれ、でもアインさん。それいつから気づいてたんですか? 僕が妹さんの子供だって」
少なくとも僕はビストロ・ノクターンに来るまでアインさんに会った事がない。仮に会った事があるとしても、それは多分赤ちゃんくらいの時だろう。
「うん、最初は本当に知らなかったんだ。名前を見たときに少しあれ?と思って、その後暫くしてちょっと思うところがあって、それでかな」
思うところって一体何だったんだろう。
気になったけれど、それ以上は深く聞かなかった。
少なくとも今は。
さっきまであんなに号泣していた僕だけれど、ひとしきり泣いて落ち着いたので今はすっかり落ち着いてしまった。
正直穴があったら入りたい。
「そういえば、そのマント、魔法のマントか何かですか? アインさんあんまり濡れてないですよね」
不思議なことに、これだけの豪雨にも拘わらずアインさんのマントの中は思っているよりは濡れていなかった。
「いや、これは超撥水のレインコートだよ。……私はあまり雨は得意ではないからね。最高級のとっておきの一品なんだ」
……まさかのただのレインコートだった。
「ワイはそのまんまで飛び出してきてもーたさかい、もうズボン中までずぶ濡れや。ええなー、店長のレインコート」
エミリオさんが滅茶苦茶羨ましそうにアインさんのレインコートをまじまじと見つめていて、僕はそれが可笑しくて思わず吹き出してしまった。
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