魔法少女レゾンデートル

宮本某

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8.存在意義

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 翌日、そこには校庭で仲良く遊ぶ皆川と吉村の姿があった。取り巻きと下級生を交え、笑い声の絶えない遊びに興じている。

「吉村は、病気がちであんまり学校に来られないから友達も少ないらしい。それを聞いた皆川が一緒に遊ぼうと近づいたんだが、吉村はあの通り気が小さい上、皆川の悪名も聞いていたから怖がってしまったようだ。何日もそういうことが続くものだから、皆川もとうとう堪忍袋の緒が切れた……らしい」

 ガキ大将ですぐに手が出ると噂の皆川であったが、実のところ滅多なことでは手を出さず、それは上級生に虐められる下級生を助ける際にだけ振るわれていたようだった。ゆえに皆川という少年は、下級生には甚大な支持を得ていた。その悪名だけを、吉村は耳にしてしまったため怖がっていた、ということだ。

「そっか……イジメじゃなかったんだね。良かったぁ」

 ゆかりが安堵と共に微笑んだ。笑った顔は間違いなく天使だ。いや、女神だ。

「ほら、な。魔法に頼らなくとも、仲良くなれたじゃないか」

「うん、ホントだね。二人ともホントに良かったね!」

「……いや、何か違うよね。強引だよね?」

 冴えない顔をしたアルが何か言うが、二人には聞こえない。

 昨日殴られた傷が少々痛むが、なに、大したことはなかった。二人の人間の心を守ることができたのだから——その達成感だけで、明貴は痛みさえも忘れることができた。

「人は安易な奇跡なんかに頼ってはいけないのかも知れない。いつだって、人は自分の手で運命を切り拓くべきなんだ」

「うん。——そうなのかも。わたし、勘違いしてた」

 自分がいいと思ったことが、必ずしも相手のためになるわけではない——今回のこのすれ違いは、その典型だったように思える。

 己の間違いを悔いて、ゆかりの顔に影が落ちた。

 ふと、明貴の手が少女の頭に乗せられる。

「いいんだよ。たとえ間違っても、自分の過ちを素直に認めることのできるゆかりが、僕は好きだ」

 柔らかな髪を指で梳かれた少女が頬を紅く染め、恥ずかしそうに身を縮める。

 そして小さな声で、囁く。

「明貴くん——わ、わたしも……」


「……あれ? ボク、今もしかして存在を根本から全否定された? あれ?」

 光差す世界にやって来た、一匹の〝使徒マスコット〟。

 その受難は、まだ始まったばかりである。
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