この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります

かにくくり

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第48話 天空都市ルシエール

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 俺達は気球に乗って上昇し、雲を抜けると一面に青空が広がった。

 そして下を見ると、雲海に浮かぶルシエールの町が見える。

「まさに絶景だね」
「これは、見惚れてしまうな」
「綺麗……」

 幻想的なその景色に思わず仲間達から感嘆の声が洩れる。
 もしここに意中の相手でもいたのなら「君の方が綺麗だよ」などと歯が浮くようなセリフを言ってみたかったところだ。

 こんな交通が不便な山の上に町を作るなんて何を考えているのか分からなかったけど、この景色を目の当たりにすると納得をしてしまうな。

 暫く空から町を眺めていると、町から天馬騎士の一隊がこちらに向かってきた。
 気球の中にいる俺達が何者かを確認すると隊長らしき男が前に出て敬礼をする。

「これはアレス殿下ではありませんか。あの雷雲を抜けてこられたのですか? ご連絡いただければお迎えにあがりましたのに」

「いや、急ぎの用があったのでな。リカイン卿と話がしたい」

「はっ、お取り次ぎ致しますのでまずはこちらへどうぞ」

 俺達は隊長の誘導に従って空港に着陸する。

 空港といってもこの世界には飛行機は存在しない。
 この世界では気球やペガサス、飛竜の離着陸場の事を空港と呼んでいる。

 空港には多くの天馬騎士や竜騎士の姿が見えた。
 まるで出撃の準備でもしているようだ。
 その物々しい雰囲気にアレス殿下が隊長に問いかける。

「まるでこれから戦闘でも始まるような雰囲気だな」

「ははっ、実は近頃この付近の魔王軍の動きが活発になっておりまして、警戒態勢を敷いているのです」

「そうえばここに来る途中で魔王軍四天王のフレガータと一戦を交えたぞ。幸いこちらにはヘステリアがいたので撃退できたが」

「左様でしたか。ご無事で何よりでした。この町は山の上にあるので今まで魔物に襲われる事はありませんでしたが、近頃奴の部下である鳥型の魔族が偵察にやってくるようになりましてね」

「なるほど、それは警戒するに越した事はないな」


 フレガータがルシエールを狙っている……?

 俺は二人の会話に違和感を覚えた。
 原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドではフレガータの軍勢がルシエールを襲撃するというシーンはなかった。
 それどころかこの町とフレガータは接点すらない。

 いつの間にか俺が知らないルートに進んでしまっているのだろうか。
 このまま進めてしまっていいのか、元のルートに戻さなくてはいけないのかを早い内に見極めなくてはいけないな。


「それではこちらでお待ち下さい」

 俺達は領主リカインの屋敷の一室に案内され待つ事数分、多くの勲章が付けられた派手な服を身に纏った初老の男性が現れた。

「これはアレス殿下、このような辺境までよくぞいらっしゃいました」

「うむ、今日ここに来たのは他でもない。王国の次期聖女についての相談をしようと思ってな」

「ヘステリア様とデメテルの事は私の耳にも入っております。てっきりヘステリア様が聖女の座に戻られるものだと思っておりましたが」

「ヘステリアは既に冒険者の道を選んでいるからそれはないな。率直に言おう、我々は貴様の娘リーディアを次期聖女に推したいと考えている」

 リカインは笑って言う。

「ははは、それは買いかぶりすぎというものです。あやつはただの世間知らずな箱入り娘だ」

「リカイン卿、私とて何の調査もなくここへ来た訳ではない。彼女に聖女としての素質がある事は調べがついている。王国の未来の為に、この私を信じて彼女を預けてくれないか」

 アレス殿下の真剣な眼差しにリカインは笑うのを止め、姿勢を正して口を開く。

「……殿下が本気でそう仰られているのならば私には異存はありません。あやつがどれだけお役に立てるか分かりませんが、リーディアを殿下にお預け致しましょう」

 可愛い娘を取られる父親の気持ちは痛い程分かる。
 もっと反対をするかと長期戦を覚悟していたが、思ったよりスムーズに話は付いたようだ。
 後はリーディアを王都へ連れて帰るだけでミッションコンプリートだ。

 その時、バンという大きな音と共に扉が開いてひとりの少女が部屋の中に入ってきた。
 それを見てリカインは目を丸くする。

「こ、こらリーディア、お客様の前ではしたないぞ。殿下、娘の躾がなっておらず申し訳ございません」

 まだ幼さを残したその顔とは対照的に、彼女の透き通るような青い瞳と緑色の長い髪は年齢とは不相応な色気を放っている。
 原作の設定通りならば外見的な特徴は母親譲りだが、がさつな性格は武人である父親に似てしまっているらしい。

「いや、元気があっていい。お淑やかなだけでは聖女は務まらないからな」

 アレス殿下は特に気にした様子もなくリーディアをフォローしているが、リカインは気が気でないといった様子だ。

「リーディア、アレス殿下の御前だぞ。まずは挨拶をせんか」

 リーディアは俺達の前に進み出ると左足を斜め後ろに引いて右膝を軽く曲げ、両手でスカートの裾を持ちあげて言う。

「皆さま方お初にお目にかかります。リカインの娘、リーディアです」

 それは礼法に則った挨拶だ。
 俺はやればできるじゃないかと内心思ったが、いち冒険者に過ぎない俺にそんな事を思われる筋合いはないだろうな。

 リカインはほっと胸を撫で下ろし、アレス殿下はその所作の美しさに満足そうな笑みを浮かべている。

「リーディア嬢、我々は次期聖女候補として君を迎えに来た。共に王都へ来て欲しい」

 アレス殿下の要請にリーディアは間髪入れずに答えた。

「お断りします」

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