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第二部 宰相閣下の謹慎事情
340 保父さん爆誕…?
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※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「よ…宜しいのですか、お館様?無論、否やはございませんし、むしろ光栄!と喜んでお引き受けはしますが、しかし――」
無駄に王宮を刺激する事にはならないか。
ベルセリウス将軍のもっともな疑問に、エドヴァルドは僅かに口の端を歪めた。
「私がギーレンに赴いた際、フィトとナシオが居たのは、そもそも非合法だ。それ以外は全て王宮所属の護衛騎士――つまりは本人あるいは実家が、高位ではなくとも爵位があり、身元が保証されている者達ばかりだった」
言われてみれば、トーカレヴァ以外の王宮護衛騎士たちも、子爵家男爵家の三男四男…と口々に言っていたかも知れない。
王都警備隊と王宮護衛騎士は、家を継げない貴族の三男以下の者達の就職先の中でも上位に位置づけられている部署だと。
そこに〝鷹の眼〟の二人をねじ込んでスルーされていたのは、明らかに国王陛下が見て見ぬふりを通したからだ。
ギーレン側とて強引な手段を取っている――だからこそ、バレたところで何も言えない筈、と。
非合法、とエドヴァルドが言うのも無理からぬ話ではあった。…スミマセン。
「…ただその時は、聖女と宰相の護衛だったから、選定は王宮側に委ねたが、今回は違う。テオドル大公だけならばともかく、レイナがいる。だから護衛の選定を宰相権限でもぎ取ってきた」
後日、軍務・刑務の責任者であり、本来の選定者であるフォルシアン公爵が溢していたところによると「でなければ、管理部で魔力制御の話など聞かん…などと言って譲らなくてね。陛下との間に立つ事になる私の気持ちにもなって欲しかったよ」――との事だったけど。
この時は、私を始め何人かの表情に「職権濫用…?」と、書かれている状態だった。
「そもそも、エドベリ王子の歓迎式典に合わせて本部から出て来た関係上、今回はベルセリウスとウルリック以外の随行者も、全て実家が爵位持ち――王宮内を闊歩出来る身分がある筈だ。そして少なくとも、レイナが戻るまではリリアート領経由でハーグルンド領を見に行く事も出来ない。それまでひたすら〝鷹の眼〟と訓練と言うだけでは、実戦の勘も鈍ろう。だから『任務』として、レイナの護衛になれ」
ベルセリウスならば、万一の時でも、双子もサタノフも抑えられるだろう――?
そこまで問われて、本人もようやく理解が追い付いたのか「お館様……!」と、目を大きく見開いていた。
少し前から察していたっぽいウルリック副長とファルコは「良いんですか?」「王宮に入れる身分と言われちゃな。バルトリは双子に付かせるか」――と、言葉を交わし合っているのが私にも聞こえた。
「向こうもテオドル大公の復帰を当然訝しむだろうし、書記官の一人が女性となれば、どうしたって下に見る連中が出てくるだろう。それも大公の狙いの一つかも知れんが、お前達はせいぜい威嚇してこい。学園に通っていたのだから、バリエンダール語が出来ないとは言わせん」
拒否権はないと言わんばかりのエドヴァルドに、一瞬だけベルセリウス将軍が怯んだ表情を垣間見せた。
体格はまるで違うのに、完全にエドヴァルドの方が圧倒してしまっている。
「…卒業した年齢を考えれば、正直かなり怪しいんですが、致し方ありませんな」
そして将軍も、勝てない戦はしないとばかりに、早々に白旗を上げていた。
「お館様、ではミカ殿は当初の予定通り、お館様が小型の簡易型転移装置を王宮管理部から借りて来られて、私が送ると……?」
ウルリック副長の方は、自信なさげな素振りすら見えないので、バリエンダール語はきっと問題ないって事なんだろう。
彼の方は、より実務的な質問をエドヴァルドにぶつけていた。
「そうだな。数日以内、バリエンダールへの訪問日が決まったあたりで、私とレイナとミカでスヴェンテ公爵邸を訪問する予定だが、出来ればその訪問の後、ミカはそのままハルヴァラ領の領主館へ転移させてやってくれ。恐らくその頃には、転移禁止令も解けているだろう。サレステーデの王族がしでかしている騒動に関しては、ミカに『話すな』と言うのも、家令相手では限界がある可能性があるから、そこはお前が上手く説明をしておいて欲しい」
ああ、と何となく私も納得した。
コヴァネン子爵の不正を暴けるだけの力量があるチャペックなら、一度何か気付けば、あっと言う間にミカ君から、公になっていない情報まで引き出してしまいそうだ。
多分、ベルセリウス将軍がついて行ったとしても、同じ様な状況になるかも知れない。
情報を取捨選択して渡せる、と言う意味ではきっとウルリック副長が一番適任なんだろう。
「一往復分の装置を渡すから、すぐさま引き返して来てくれれば良い。さすがに軍本部に足を伸ばす分までは渡せないから、そこは諦めて貰いたいがな」
途中から、ウルリック副長の表情を読んだんだろう。
エドヴァルドが、王都とハルヴァラ領との往復だけに留める様、先回りして釘を刺していた。
「ただ、これも近々だが、レイナと王都商業ギルドに向かう予定だ。本部のルーカスに手紙を出すなら、それまでにレイナに手紙を託せ。一両日中には本部に届く」
「そう…でしたね…っ!では戻ったら一筆認めます――!」
「……ああ」
急に前のめりになったウルリックに、エドヴァルドが僅かに表情を痙攣らせていたけど、後の祭りな気がした。
「いえいえ、お館様、ご心配なく!アンディション侯爵様が大公位に復帰される件と、我らが〝貴婦人〟レイナ嬢が、その大公殿下直々のご指名で外遊に同行される事、我々軍関係者が護衛の栄誉を賜った事を、余す事なく連絡するだけですから!」
「お、おい、ケネト……」
思わず目を丸くした私を視界の端に捉えつつ、ウルリック副長はベルセリウス将軍に「何です」と冷ややかに切り返していた。
「将軍自身、王都に出て来られてから、ルーカス様が仰っていた事を悉く無視なさいましたでしょう!せいぜい、それをかき消す様な話題を振り撒いておかない事には、そのうちルーカス様に代理も仕事も拒絶されますよ⁉︎」
「ぐっ……」
防衛軍本部で留守を守る弟さん、相当苦労症っぽいなぁ……きっとウルリック副長が、うっかり味方してしまうくらいには。
いつか、胃に優しいスープレシピとか、思いついたら教えてあげようかな。うん。
「あ、そうそう。シーグもアンジェス王都にいる間に、アナタの代わりに店番していたミカ君と一緒に〝イクスゴード〟洋菓子店に行って、今後の話をしてきてね?お店の前で待ってれば、間違いなく合流出来るだろうし。店主さん、あんなに良い人なんだから、同じ辞めるにしても、義理欠いちゃダメよ?」
料理の事を考えていたら、洋菓子店の事も不意に頭に浮かんだ。
いきなり姿を消しましたじゃ、店主もご近所さんだって心配するに決まっているよね。
急に話を振られたシーグが、ビクッと身体を震わせていたけど、表向きは「う、うん…」とだけ、小さな声で呟いていた。
「え?辞めるんじゃないの?だって向こうも奉仕活動じゃなく、商売してるんだから、気が向いた時だけ働ける様な、そんな都合の良い席は用意してないと思うよ?」
「そ、それは…っ!ちょっと、考えるから…っ」
「…そう?うん、まあ、ギーレンの出先機関みたいな事にだけは、もうしないでね?それやられると、多分目を瞑れなくなるから」
返事の代わりにシーグは、ブンブンと激しく首を縦に振った。
「……正直、この子達同行させて大丈夫かと思わなくもなかったんですが」
どうやら将軍をいじるのに満足?したらしいウルリック副長が、目を眇めながらこちらを見ていた。
「まあ、ある程度会話が成り立っているのなら、良しとしましょうか」
…何だかウルリック副長が、バリエンダール同行組の保父さんに見えてきたかも知れない……
「よ…宜しいのですか、お館様?無論、否やはございませんし、むしろ光栄!と喜んでお引き受けはしますが、しかし――」
無駄に王宮を刺激する事にはならないか。
ベルセリウス将軍のもっともな疑問に、エドヴァルドは僅かに口の端を歪めた。
「私がギーレンに赴いた際、フィトとナシオが居たのは、そもそも非合法だ。それ以外は全て王宮所属の護衛騎士――つまりは本人あるいは実家が、高位ではなくとも爵位があり、身元が保証されている者達ばかりだった」
言われてみれば、トーカレヴァ以外の王宮護衛騎士たちも、子爵家男爵家の三男四男…と口々に言っていたかも知れない。
王都警備隊と王宮護衛騎士は、家を継げない貴族の三男以下の者達の就職先の中でも上位に位置づけられている部署だと。
そこに〝鷹の眼〟の二人をねじ込んでスルーされていたのは、明らかに国王陛下が見て見ぬふりを通したからだ。
ギーレン側とて強引な手段を取っている――だからこそ、バレたところで何も言えない筈、と。
非合法、とエドヴァルドが言うのも無理からぬ話ではあった。…スミマセン。
「…ただその時は、聖女と宰相の護衛だったから、選定は王宮側に委ねたが、今回は違う。テオドル大公だけならばともかく、レイナがいる。だから護衛の選定を宰相権限でもぎ取ってきた」
後日、軍務・刑務の責任者であり、本来の選定者であるフォルシアン公爵が溢していたところによると「でなければ、管理部で魔力制御の話など聞かん…などと言って譲らなくてね。陛下との間に立つ事になる私の気持ちにもなって欲しかったよ」――との事だったけど。
この時は、私を始め何人かの表情に「職権濫用…?」と、書かれている状態だった。
「そもそも、エドベリ王子の歓迎式典に合わせて本部から出て来た関係上、今回はベルセリウスとウルリック以外の随行者も、全て実家が爵位持ち――王宮内を闊歩出来る身分がある筈だ。そして少なくとも、レイナが戻るまではリリアート領経由でハーグルンド領を見に行く事も出来ない。それまでひたすら〝鷹の眼〟と訓練と言うだけでは、実戦の勘も鈍ろう。だから『任務』として、レイナの護衛になれ」
ベルセリウスならば、万一の時でも、双子もサタノフも抑えられるだろう――?
そこまで問われて、本人もようやく理解が追い付いたのか「お館様……!」と、目を大きく見開いていた。
少し前から察していたっぽいウルリック副長とファルコは「良いんですか?」「王宮に入れる身分と言われちゃな。バルトリは双子に付かせるか」――と、言葉を交わし合っているのが私にも聞こえた。
「向こうもテオドル大公の復帰を当然訝しむだろうし、書記官の一人が女性となれば、どうしたって下に見る連中が出てくるだろう。それも大公の狙いの一つかも知れんが、お前達はせいぜい威嚇してこい。学園に通っていたのだから、バリエンダール語が出来ないとは言わせん」
拒否権はないと言わんばかりのエドヴァルドに、一瞬だけベルセリウス将軍が怯んだ表情を垣間見せた。
体格はまるで違うのに、完全にエドヴァルドの方が圧倒してしまっている。
「…卒業した年齢を考えれば、正直かなり怪しいんですが、致し方ありませんな」
そして将軍も、勝てない戦はしないとばかりに、早々に白旗を上げていた。
「お館様、ではミカ殿は当初の予定通り、お館様が小型の簡易型転移装置を王宮管理部から借りて来られて、私が送ると……?」
ウルリック副長の方は、自信なさげな素振りすら見えないので、バリエンダール語はきっと問題ないって事なんだろう。
彼の方は、より実務的な質問をエドヴァルドにぶつけていた。
「そうだな。数日以内、バリエンダールへの訪問日が決まったあたりで、私とレイナとミカでスヴェンテ公爵邸を訪問する予定だが、出来ればその訪問の後、ミカはそのままハルヴァラ領の領主館へ転移させてやってくれ。恐らくその頃には、転移禁止令も解けているだろう。サレステーデの王族がしでかしている騒動に関しては、ミカに『話すな』と言うのも、家令相手では限界がある可能性があるから、そこはお前が上手く説明をしておいて欲しい」
ああ、と何となく私も納得した。
コヴァネン子爵の不正を暴けるだけの力量があるチャペックなら、一度何か気付けば、あっと言う間にミカ君から、公になっていない情報まで引き出してしまいそうだ。
多分、ベルセリウス将軍がついて行ったとしても、同じ様な状況になるかも知れない。
情報を取捨選択して渡せる、と言う意味ではきっとウルリック副長が一番適任なんだろう。
「一往復分の装置を渡すから、すぐさま引き返して来てくれれば良い。さすがに軍本部に足を伸ばす分までは渡せないから、そこは諦めて貰いたいがな」
途中から、ウルリック副長の表情を読んだんだろう。
エドヴァルドが、王都とハルヴァラ領との往復だけに留める様、先回りして釘を刺していた。
「ただ、これも近々だが、レイナと王都商業ギルドに向かう予定だ。本部のルーカスに手紙を出すなら、それまでにレイナに手紙を託せ。一両日中には本部に届く」
「そう…でしたね…っ!では戻ったら一筆認めます――!」
「……ああ」
急に前のめりになったウルリックに、エドヴァルドが僅かに表情を痙攣らせていたけど、後の祭りな気がした。
「いえいえ、お館様、ご心配なく!アンディション侯爵様が大公位に復帰される件と、我らが〝貴婦人〟レイナ嬢が、その大公殿下直々のご指名で外遊に同行される事、我々軍関係者が護衛の栄誉を賜った事を、余す事なく連絡するだけですから!」
「お、おい、ケネト……」
思わず目を丸くした私を視界の端に捉えつつ、ウルリック副長はベルセリウス将軍に「何です」と冷ややかに切り返していた。
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「ぐっ……」
防衛軍本部で留守を守る弟さん、相当苦労症っぽいなぁ……きっとウルリック副長が、うっかり味方してしまうくらいには。
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「あ、そうそう。シーグもアンジェス王都にいる間に、アナタの代わりに店番していたミカ君と一緒に〝イクスゴード〟洋菓子店に行って、今後の話をしてきてね?お店の前で待ってれば、間違いなく合流出来るだろうし。店主さん、あんなに良い人なんだから、同じ辞めるにしても、義理欠いちゃダメよ?」
料理の事を考えていたら、洋菓子店の事も不意に頭に浮かんだ。
いきなり姿を消しましたじゃ、店主もご近所さんだって心配するに決まっているよね。
急に話を振られたシーグが、ビクッと身体を震わせていたけど、表向きは「う、うん…」とだけ、小さな声で呟いていた。
「え?辞めるんじゃないの?だって向こうも奉仕活動じゃなく、商売してるんだから、気が向いた時だけ働ける様な、そんな都合の良い席は用意してないと思うよ?」
「そ、それは…っ!ちょっと、考えるから…っ」
「…そう?うん、まあ、ギーレンの出先機関みたいな事にだけは、もうしないでね?それやられると、多分目を瞑れなくなるから」
返事の代わりにシーグは、ブンブンと激しく首を縦に振った。
「……正直、この子達同行させて大丈夫かと思わなくもなかったんですが」
どうやら将軍をいじるのに満足?したらしいウルリック副長が、目を眇めながらこちらを見ていた。
「まあ、ある程度会話が成り立っているのなら、良しとしましょうか」
…何だかウルリック副長が、バリエンダール同行組の保父さんに見えてきたかも知れない……
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