文字の大きさ
大
中
小
277 / 791
第二部 宰相閣下の謹慎事情
361 レイナ・ユングベリ
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「そうか……〝ツェツィ・オンペル〟が蘇るか……」
王都商業ギルドに戻って来て、決めた物件についてイフナースが説明をすると、アズレート副ギルド長が、やや感慨深げな目になっていた。
元々、夫人の夫であるベルドヴァ男爵が、フォルシアン公爵領内にある領地を息子に任せて退いた後、王都学園の教師として雇われたと言う事で王都に居を構えていたらしい。
夫亡き後、領地に戻る話が出たものの「今更姑は邪魔でしょう」と、一人王都に残る事を選んで、自分もお直しのお店を手掛けるようになったんだそうだ。
先代ベルドヴァ男爵とその妻と言う肩書きを持ちながらも、清貧を尊ぶ為人だったそうで、周囲との衝突もなく、夫人が亡くなった際も、近隣住民皆が悲しんだ――と言う事らしい。
「ちょうど夫人が、亡き先代男爵から受け継いでいらした財産の整理と、ベルドヴァ男爵領への還元手続きが終わったところで、あの邸宅の保護権も同時に解除されましたからね。これも何かの縁と、ご案内したのですよ」
なるほど夫人の死去と共に、土地建物の権利がギルドに戻ってきたところだったと言う事か。
前回はまだ候補の中になかったと言う事は、本当にタイミングが良かったんだろう。
アズレート副ギルド長が口にした〝ツェツィ・オンペル〟は以前のお店の名前で、夫人の名前であるツェツィーリアと、夫人の故郷の言葉で「縫製」を意味する「オンペル」から名付けられていたそうだ。
「何しろ高齢の老婦人と使用人のみの暮らしだったからな。教員採用に携わっていたボードリエ伯爵の依頼で、私やギルド長も時々様子を見に行っては、お茶をご馳走になったものだ」
一応、わざと服のボタンを一つ外したり、見え見えなりの理由はいつも付けて行っていたそうだが、毎回バレバレで、夫人もクスクスと微笑いながらお茶を振る舞ってくれていたんだそうだ。
さすが夫が王都学園の教師にスカウトされるだけあって、夫人本人の知識も豊富で、ギルド長や副ギルド長が〝ロッピア〟関連のトラブルで王宮に上がる時などは、礼儀作法のチェックなんかもしてくれていたとか。
そんな女性なら、私も会ってみたかったと思う。
きっと公爵邸で礼儀作法を教えてくれる皆とは、また違った話が聞けただろうに。
「ボードリエ伯爵やフォルシアン公爵もご存知のご夫婦だったと言う事ですか?」
首を傾げる私に、どうだろうな…と首を傾げたのは、意外にもエドヴァルドだった。
「ボードリエ伯爵は、学園関連で顔を合わせる事くらいはあっただろうが、フォルシアン公爵となると、男爵家との身分の差が大きすぎて、会う機会もなかったかも知れん。恐らくは、傘下の貴族が王都にいる――あたりの認識だったと思うが」
「ええ。私も生前のご夫妻からは、ボードリエ伯爵以外の高位貴族のお名前を耳にする事はありませんでしたね。恐らく、ギルド長もそうでしょう」
アズレート副ギルド長も、そう言って頷いている。
フォルシアン公爵の事は、傘下貴族がベルドヴァ男爵家だとの情報だけ、頭にあれば(今は)良いのかも知れない。
「あ、店舗については、名前をそのまま残すのは難しいかも知れませんけど、間取りに関しては少なくとも、1階部分は今の間取りを維持したいと思ってるんです。玄関先あたり、商会で取り扱う予定の新商品を並べたいので、少し手を加えたいかな…と」
まだ素案ですが…と前置く私に、それでも元の店の雰囲気がそれほど損なわれないと聞いたからか「……そうか」と、アズレート副ギルド長はちょっと嬉しそうだった。
この様子だと、リーリャ・イッターシュギルド長の反応も、もしかしたら似たようなものになりそうな気がした。
「ああ、すまない。話が逸れてしまったな。先に身分証に名前を入れ直してしまおう。マノン女史や革職人のファルダからは何も言われなかったか?まぁ…名前の修正に行くだけで、揉める要素もないと思うが」
「そうですね……そう言えば、揉めはしなかったんですけど、ギルド長さんから、有能な眼鏡職人がいたら紹介して欲しいとは言われましたね」
――身分証を受け取ったアズレート副ギルド長の手が、ピクリと揺れた気がした。
「眼鏡職人……ちなみにだが、心当たりは?」
「リリアート領のガラスの事はご存知だったみたいで、レンズを1枚お貸し下さいましたよ。同じ物ではなく、それ以上が作れるかどうか、職人本人の指標になれば…と。なので近いうち、リリアート領にあるいくつかの工房で聞いてみようかとは思ってるんですけど」
「……っ」
その瞬間、黙ってこちらのやりとりを耳にしながら、視線は手元の紅茶に向いていたヤンネが、喉に紅茶を詰まらせたのか、ゴホゴホと咽ていた。
「ああ……ちょっと今、キヴェカス卿の気持ちが分かったな……何故、身分証の革漉きに行っただけで、マノン女史から仕事を依頼されて帰って来る事になるのか……」
「えっ、でも、他の商会にも声をかけてあるってギルド長さん仰ってましたし、すぐさまユングベリ商会の案件になるとは限りませんよ?確かに、ギルド長さんの納得のいく職人や工房が見つかれば、独占販売権を取るに等しい事になるでしょうから、その後は大変かも知れませんけど」
「だが可能性があると分かれば、少なくとも現在の眼鏡の流通や販権事情については学んでおく必要が出て来る。見つかってからアレコレとギルドに申請の伺いを立てるようでは、他の商会に出し抜かれる可能性だってある訳だからな」
当然ギルドは中立平等の精神でもって、早く完成形の申請をした方を受け付ける――と、アズレート副ギルド長は重々しい声で私とヤンネを見比べている。
「……その時はよろしくお願いしますね?」
――ここは、言ったモノ勝ちだ。
そしてヤンネが何か言いかける前に、バーレント伯爵領内の村人の、職人ギルドへの登録の話も上乗せしておく事にする。
「それとさっきの職人ギルドで、バーレント領の職人が、向こうの領都の職人ギルドにちゃんと所属しているか、あと新しい製品を作るつもりなら、場合によっては王都職人ギルドへの申請が必要かもと言われたので、会社設立の件とまとめて確認お願い出来ますか?」
「……は?」
どうやら要領を得なかったらしいヤンネに、フォローを入れてくれたのはアズレート副ギルド長だった。
「ああ、確かに既存の製品を王都に流通させたいだけなら領都職人ギルドへの所属確認だけで済むが、特許権絡みの何かを作るとなると、所属ギルドは王都職人ギルドとなると言われたか。特許権問題は地方で扱って良い案件じゃないとされているからな」
とは言えあくまで手工業に限っての話であって、料理レシピに関しては商業ギルド生産部門管轄となるため、職人ギルドへの報告は必須ではないらしい。
「さっきまでキヴェカス卿には、領都職人ギルドへの所属確認の話はしていたが、王都の話はまだこれからと言うところだった。さすがに驚きの方が上をいったんだろう」
苦笑交じりにそう言いながらも、手は焼きごてを持って、一文字ごとに入れ替えるように動かしている。
「いやはや。私もこれまで多くの商会や店舗の設立、廃業と見てきてはいるが、登録前からここまで案件を抱えているのは初めてかも知れんな。アンジェスにギーレンか……そのうち、バリエンダールやサレステーデ、ベルィフまで加わってきても、もはや驚くまいよ」
「………あはは」
アズレート副ギルド長は、ちょっとした冗談のつもりだったかも知れないけど、思わず私が乾いた声を返して、エドヴァルドがこめかみを痙攣らせているのを見たからか、ヤンネの唇が微かに「…まさか」と動いているのが見えた。
ベルィフだけは、まだ何の伝手もないけど――と言おうにも、私がテオドル大公殿下とバリエンダールに行くのは、まだ表沙汰になっていない話であるため、私もエドヴァルドも、それ以上の反応がとれなかったのだ
「…ヤンネ、午後から高等法院に立ち寄れるか」
代わりにエドヴァルドが、今は言えないと言う意味もこめてそれを告げる。
「助手の話を進められるようにしておく」
私ではなくエドヴァルドの言葉となれば、事実上拒否権は存在しない。
夕方になると思いますが――と返すのが精一杯な様に見えた。
(多分そこで、テオドル大公絡みの話を聞いて膝から崩れ落ちそうだなぁ……)
うん、イデオン公爵領の為、死ぬ気で働いて貰おう。
意趣返し?――気のせいです!
「さて」
エドヴァルドとヤンネとの間の微妙な空気は敢えて見て見ぬフリで、アズレート副ギルド長は身分証を私の方へと戻して来た。
「実店舗登録申請書類と、現物としての銀は、先ほどキヴェカス卿経由で受け取らせて貰った。物件契約に関しては書類がまた別になる。仮契約書面をまず渡して、代金や内装外観工事の条件やなんかを持ち帰って最終検討してきて貰うのが一般的な流れだ。ユングベリ商会も、その形で良いか?」
「あっ、はい!その辺りはギルドの規則を遵守するつもりです」
「まあ規則と言うよりは、一番、後からの揉め事が少ない『慣習』と言った方が良いかも知れないがな」
そう言って、アズレート副ギルド長はニヤリと口元を歪めた。
「それでもこれで〝ユングベリ商会〟は実店舗のある独立した商会となり、同時に王都商業ギルドの本会員となった。――おめでとう、商会長〝レイナ・ユングベリ〟殿?」
再発行された身分証には、未だ見慣れないアンジェス国の文字で〝レイナ・ユングベリ〟――と、新たな名前が書き込まれていた。
「そうか……〝ツェツィ・オンペル〟が蘇るか……」
王都商業ギルドに戻って来て、決めた物件についてイフナースが説明をすると、アズレート副ギルド長が、やや感慨深げな目になっていた。
元々、夫人の夫であるベルドヴァ男爵が、フォルシアン公爵領内にある領地を息子に任せて退いた後、王都学園の教師として雇われたと言う事で王都に居を構えていたらしい。
夫亡き後、領地に戻る話が出たものの「今更姑は邪魔でしょう」と、一人王都に残る事を選んで、自分もお直しのお店を手掛けるようになったんだそうだ。
先代ベルドヴァ男爵とその妻と言う肩書きを持ちながらも、清貧を尊ぶ為人だったそうで、周囲との衝突もなく、夫人が亡くなった際も、近隣住民皆が悲しんだ――と言う事らしい。
「ちょうど夫人が、亡き先代男爵から受け継いでいらした財産の整理と、ベルドヴァ男爵領への還元手続きが終わったところで、あの邸宅の保護権も同時に解除されましたからね。これも何かの縁と、ご案内したのですよ」
なるほど夫人の死去と共に、土地建物の権利がギルドに戻ってきたところだったと言う事か。
前回はまだ候補の中になかったと言う事は、本当にタイミングが良かったんだろう。
アズレート副ギルド長が口にした〝ツェツィ・オンペル〟は以前のお店の名前で、夫人の名前であるツェツィーリアと、夫人の故郷の言葉で「縫製」を意味する「オンペル」から名付けられていたそうだ。
「何しろ高齢の老婦人と使用人のみの暮らしだったからな。教員採用に携わっていたボードリエ伯爵の依頼で、私やギルド長も時々様子を見に行っては、お茶をご馳走になったものだ」
一応、わざと服のボタンを一つ外したり、見え見えなりの理由はいつも付けて行っていたそうだが、毎回バレバレで、夫人もクスクスと微笑いながらお茶を振る舞ってくれていたんだそうだ。
さすが夫が王都学園の教師にスカウトされるだけあって、夫人本人の知識も豊富で、ギルド長や副ギルド長が〝ロッピア〟関連のトラブルで王宮に上がる時などは、礼儀作法のチェックなんかもしてくれていたとか。
そんな女性なら、私も会ってみたかったと思う。
きっと公爵邸で礼儀作法を教えてくれる皆とは、また違った話が聞けただろうに。
「ボードリエ伯爵やフォルシアン公爵もご存知のご夫婦だったと言う事ですか?」
首を傾げる私に、どうだろうな…と首を傾げたのは、意外にもエドヴァルドだった。
「ボードリエ伯爵は、学園関連で顔を合わせる事くらいはあっただろうが、フォルシアン公爵となると、男爵家との身分の差が大きすぎて、会う機会もなかったかも知れん。恐らくは、傘下の貴族が王都にいる――あたりの認識だったと思うが」
「ええ。私も生前のご夫妻からは、ボードリエ伯爵以外の高位貴族のお名前を耳にする事はありませんでしたね。恐らく、ギルド長もそうでしょう」
アズレート副ギルド長も、そう言って頷いている。
フォルシアン公爵の事は、傘下貴族がベルドヴァ男爵家だとの情報だけ、頭にあれば(今は)良いのかも知れない。
「あ、店舗については、名前をそのまま残すのは難しいかも知れませんけど、間取りに関しては少なくとも、1階部分は今の間取りを維持したいと思ってるんです。玄関先あたり、商会で取り扱う予定の新商品を並べたいので、少し手を加えたいかな…と」
まだ素案ですが…と前置く私に、それでも元の店の雰囲気がそれほど損なわれないと聞いたからか「……そうか」と、アズレート副ギルド長はちょっと嬉しそうだった。
この様子だと、リーリャ・イッターシュギルド長の反応も、もしかしたら似たようなものになりそうな気がした。
「ああ、すまない。話が逸れてしまったな。先に身分証に名前を入れ直してしまおう。マノン女史や革職人のファルダからは何も言われなかったか?まぁ…名前の修正に行くだけで、揉める要素もないと思うが」
「そうですね……そう言えば、揉めはしなかったんですけど、ギルド長さんから、有能な眼鏡職人がいたら紹介して欲しいとは言われましたね」
――身分証を受け取ったアズレート副ギルド長の手が、ピクリと揺れた気がした。
「眼鏡職人……ちなみにだが、心当たりは?」
「リリアート領のガラスの事はご存知だったみたいで、レンズを1枚お貸し下さいましたよ。同じ物ではなく、それ以上が作れるかどうか、職人本人の指標になれば…と。なので近いうち、リリアート領にあるいくつかの工房で聞いてみようかとは思ってるんですけど」
「……っ」
その瞬間、黙ってこちらのやりとりを耳にしながら、視線は手元の紅茶に向いていたヤンネが、喉に紅茶を詰まらせたのか、ゴホゴホと咽ていた。
「ああ……ちょっと今、キヴェカス卿の気持ちが分かったな……何故、身分証の革漉きに行っただけで、マノン女史から仕事を依頼されて帰って来る事になるのか……」
「えっ、でも、他の商会にも声をかけてあるってギルド長さん仰ってましたし、すぐさまユングベリ商会の案件になるとは限りませんよ?確かに、ギルド長さんの納得のいく職人や工房が見つかれば、独占販売権を取るに等しい事になるでしょうから、その後は大変かも知れませんけど」
「だが可能性があると分かれば、少なくとも現在の眼鏡の流通や販権事情については学んでおく必要が出て来る。見つかってからアレコレとギルドに申請の伺いを立てるようでは、他の商会に出し抜かれる可能性だってある訳だからな」
当然ギルドは中立平等の精神でもって、早く完成形の申請をした方を受け付ける――と、アズレート副ギルド長は重々しい声で私とヤンネを見比べている。
「……その時はよろしくお願いしますね?」
――ここは、言ったモノ勝ちだ。
そしてヤンネが何か言いかける前に、バーレント伯爵領内の村人の、職人ギルドへの登録の話も上乗せしておく事にする。
「それとさっきの職人ギルドで、バーレント領の職人が、向こうの領都の職人ギルドにちゃんと所属しているか、あと新しい製品を作るつもりなら、場合によっては王都職人ギルドへの申請が必要かもと言われたので、会社設立の件とまとめて確認お願い出来ますか?」
「……は?」
どうやら要領を得なかったらしいヤンネに、フォローを入れてくれたのはアズレート副ギルド長だった。
「ああ、確かに既存の製品を王都に流通させたいだけなら領都職人ギルドへの所属確認だけで済むが、特許権絡みの何かを作るとなると、所属ギルドは王都職人ギルドとなると言われたか。特許権問題は地方で扱って良い案件じゃないとされているからな」
とは言えあくまで手工業に限っての話であって、料理レシピに関しては商業ギルド生産部門管轄となるため、職人ギルドへの報告は必須ではないらしい。
「さっきまでキヴェカス卿には、領都職人ギルドへの所属確認の話はしていたが、王都の話はまだこれからと言うところだった。さすがに驚きの方が上をいったんだろう」
苦笑交じりにそう言いながらも、手は焼きごてを持って、一文字ごとに入れ替えるように動かしている。
「いやはや。私もこれまで多くの商会や店舗の設立、廃業と見てきてはいるが、登録前からここまで案件を抱えているのは初めてかも知れんな。アンジェスにギーレンか……そのうち、バリエンダールやサレステーデ、ベルィフまで加わってきても、もはや驚くまいよ」
「………あはは」
アズレート副ギルド長は、ちょっとした冗談のつもりだったかも知れないけど、思わず私が乾いた声を返して、エドヴァルドがこめかみを痙攣らせているのを見たからか、ヤンネの唇が微かに「…まさか」と動いているのが見えた。
ベルィフだけは、まだ何の伝手もないけど――と言おうにも、私がテオドル大公殿下とバリエンダールに行くのは、まだ表沙汰になっていない話であるため、私もエドヴァルドも、それ以上の反応がとれなかったのだ
「…ヤンネ、午後から高等法院に立ち寄れるか」
代わりにエドヴァルドが、今は言えないと言う意味もこめてそれを告げる。
「助手の話を進められるようにしておく」
私ではなくエドヴァルドの言葉となれば、事実上拒否権は存在しない。
夕方になると思いますが――と返すのが精一杯な様に見えた。
(多分そこで、テオドル大公絡みの話を聞いて膝から崩れ落ちそうだなぁ……)
うん、イデオン公爵領の為、死ぬ気で働いて貰おう。
意趣返し?――気のせいです!
「さて」
エドヴァルドとヤンネとの間の微妙な空気は敢えて見て見ぬフリで、アズレート副ギルド長は身分証を私の方へと戻して来た。
「実店舗登録申請書類と、現物としての銀は、先ほどキヴェカス卿経由で受け取らせて貰った。物件契約に関しては書類がまた別になる。仮契約書面をまず渡して、代金や内装外観工事の条件やなんかを持ち帰って最終検討してきて貰うのが一般的な流れだ。ユングベリ商会も、その形で良いか?」
「あっ、はい!その辺りはギルドの規則を遵守するつもりです」
「まあ規則と言うよりは、一番、後からの揉め事が少ない『慣習』と言った方が良いかも知れないがな」
そう言って、アズレート副ギルド長はニヤリと口元を歪めた。
「それでもこれで〝ユングベリ商会〟は実店舗のある独立した商会となり、同時に王都商業ギルドの本会員となった。――おめでとう、商会長〝レイナ・ユングベリ〟殿?」
再発行された身分証には、未だ見慣れないアンジェス国の文字で〝レイナ・ユングベリ〟――と、新たな名前が書き込まれていた。
感想 1,477
あなたにおすすめの小説
《完結》真実の愛のために廃妃ですか。では、王妃の仕事もお返しします。
さんけい結婚して三年、子がないことを理由に、王妃イザベルは廃妃を言い渡された。
若き王アルマンは、美しい側妃コレットを迎え、真実の愛を選んだつもりだった。
イザベルは静かに王妃の印璽と鍵を返し、王宮を去る。
だがその日から、神殿、諸侯、隣国、慈善事業――王妃が支えていたものが次々と止まり始めた。
廃妃にしたのだから、もう戻らない。
王は、周囲は、手放したものの重さを知るのだろうか?
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
「困った子だね」優しい夫が元婚約者に迫られても非情になれなかった日~伯爵夫人をやめる決断とクリーベイジで暴かれる夫の嘘~
水上伯爵夫人であるセシルには、優しい夫がいる。
しかし、彼の優しさは裏を返せば、誰に対しても非情になれないということだった。
たとえ、元婚約者に迫られたとしても……。
「その襟元の赤い汚れは、何でしょうか」
「えっ? ああ、これかい」
彼が始めた言い訳を聞いて、セシルは伯爵夫人をやめる決断をした。
なぜなら、彼の言い訳が嘘だということを、とある理由で彼女が看破したからだった……。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃんリジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
「今なら妹も許してくれるから、きちんと謝ろう」夫が優しく謝罪の強要をした日、侯爵夫人をやめて家を出ました~デラミネーションによる夫の終焉~
水上侯爵夫人であるサフィアには、常に優しい笑みを浮かべる夫がいる。
ある日、夫の妹の行動によって、多額の損害が出る事態が起きる。
それを論理的に批判するサフィアだったが、夫は妹を庇い、さらに……。
「今なら妹も許してくれるから、きちんと謝ろう」
あろうことか、夫は諭すような優しい笑みを浮かべ、サフィアに謝罪の強要をした。
その瞬間、彼女はすべてを悟った。
「あなたのその優しさや気遣いは、私にとっては劇薬でしかありません」
その日、サフィアは侯爵夫人をやめて家を出た。
さらにその後、あることがきっかけで、夫の笑顔の仮面が剥がれ落ち始め……。
【完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debbyヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★第19回恋愛小説大賞で35位でした。投票してくださった方、読んでくださった方、ありがとうございました(*´▽`人)
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」