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第三部 宰相閣下の婚約者
779 もう一つの風評被害
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「……フォルシアン公爵令嬢」
カトル・アルノシュト伯爵令息の現状を把握したところで、そろそろ潮時かとの空気は確かに流れ始めていた。
にも関わらずそれを、絶妙なタイミングで遮った声があった。
「ガールシン医局長?」
「その、出来れば彼の症状を改善させる可能性のある食材の話を、もう少し詳しく聞きたいのだが――」
そうは言いながらも、目線はエドヴァルドの方を向いている。
何となく、許可が出ないことを悟りながらも、万が一を考えて聞いている風ではあった。
「却下だ、ガールシン医局長」
そして案の定、エドヴァルドは思い切り眉根を寄せている。
聞かれた私ではなくエドヴァルドが答えているのってどうなの……? とは思いながらも、他に誰もそのことを不自然に思っていないように見えるのが、イマイチ釈然としない。
いや、直接私に聞かれたとしても、この後の予定が詰まっている以上は、エドヴァルドにお伺いを立てないわけにもいかないのだけれど。
「彼女はこれから閣議の間で行われる話し合いに立ち会って貰わねばならない。陛下と全ての公爵、テオドル大公殿下らも顔を合わせる重要な話し合いだ。後で書面にして医局に届けさせることなら出来るだろうが、この場に留まらせることは出来かねる」
ですよね、と心の中で呟いたのは、私だけではなく、多分医局長もだろう。
医局長は、この後何があるかまでは知らなかったにせよ、フォルシアン公爵を始め色々な高官が医局に出入りしている状況を鑑みて、私ひとりが残る許可は下りないだろう――くらいのことは考えていたはずだ。
「それはその……アルノシュト伯爵令息の処遇も含めての話し合い、ということでしょうか」
ただ、医局長もそこは確認しておきたかったのかも知れない。
少しでも私がこの場に残る余地があるなら――と言ったところだろうか。
けれど、問われたエドヴァルドの表情は、まるで変わらなかった。
「知ってどうする」
そうとも違うとも、彼は言わなかった。
だけどそれが事実上の「諾」だと言うのは、ガールシン医局長にも私にも理解が出来た。
「いえ……申し訳ない、私の職分を越えたことを申し上げたようだ。では、書面の件はお願いをしても?」
医局長は自らの判断で素早く身を引き、エドヴァルドは返事をする代わりに無言でこちらを見つめてきた。
どうやら、これは私に「答えていい」との合図を送っている……気がした。
「あっ、はい、分かりました!」
そしてここは、それ以外に答えようがないのだから、医局の空気だって冷えないだろう。
「その、王宮の厨房で試して貰えそうなレシピもお付けしようと思うので、何回かに分けてお渡しをしてもよろしいですか?」
とは言え、どう考えても何かを書き上げるには、時間が圧倒的に足りない。
放置しておいていい問題じゃないことが分かりきっていても、だ。
素早く考えを巡らせた私は、分割して書面を作成するという窮余の策をそこでひねり出した。
「それは……もちろん。一朝一夕に解決する問題ではないのだから、一度きりで話が途切れてしまうよりもよほど建設的なことと私も認識している」
そしてどこまで私の状況を察してくれたのかは不明ながら、ありがたいことに医局長は私の妥協案をその場で呑んでくれた。
ただガールシン医局長の話には続きがあったようで、私の妥協案を呑んでくれたことばかりを喜んではいられなかった。
「何より貴女には、今回の話以外にもじっくりと聞きたいことがあった」
「え?」
「――――」
話の続きも気になるものの、すぐ傍に立つエドヴァルドのこめかみがピクリと動いたような気がして、うっかりそちらに意識を持っていかれてしまった。
(医局長、おかしなこと言わないで下さいね!? 医局が吹雪いても、私、責任持てませんし……!)
いざとなったら、医局長と管理部長の仲の良さを無理矢理にでもエドヴァルドにアピールすべきかと、ナナメ上のことを考えている私をよそに、医局長は存外真剣な表情でこちらの様子を伺っていた。
「その……先ほど、管理部長との話の中にも少し出ていた、私のこの容姿のことだ」
「!」
私以外の全員が、要領を得ない表情を見せた。
それはそうかも知れない。
あの広間で同じテーブルを囲んでいたのは、私とシャルリーヌとヴェンツェン・ド・ブロイ管理部長と、目の前のガールシン医局長の四人だったのだ。
医局長の話から、容姿つまり〝先天性色素欠乏症〟のことだと推測出来る人間は、この中では私しかいなかった。
「あの、今ここでその話をしてしまっても……?」
この世界では、個人情報保護も何もないわけだけれど、それでも遺伝子疾患云々を口にするとなると、なかなかにセンシティブな話題なんじゃないか。
私が気を遣っていると分かったんだろう。
ガールシン医局長は、微笑みながら片手を振った。
「構わない。私の身体全体が陽の光に弱く、視界も普通の者よりも極端に狭いことは、医局の皆が承知している。むしろ治る治らないはともかく、呪いでも伝染病でもないらしいと言うことを、同じようにこの場で周知して貰いたくて、呼び止めさせて貰った」
「!」
その瞬間、確かに医局内がどよめいた。
「レイナ……?」
エドヴァルドも、そしてファルコも、どう言うことかとこちらを見る視線が語っている。
「あ、その、えーっと……まず、アルノシュト伯爵令息とは、原因も症状もまるで違う話だと言う前置きはさせて下さい」
人的原因による鉱毒と、本人にはどうしようもない、先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患。事象そのものに、被る要素は何一つ存在していない。
「医局長が仰りたいのは、未知の症状に対する風評被害、すなわち呪いだ伝染病だと周囲から蔑まれ、孤立をしてしまう、その状況が酷似しているのでは――ということなんですよね?」
同調圧力、あるいは同調行動。
ガールシン医局長は、類稀なその医学知識で今の地位にまで昇り詰めてきた人のようだけれど、年齢を分かりにくくしている、肌や髪の色素が少ないその容貌は明らかに集団の中では浮いてしまっており、常に彼を排除しようとする勢力の悪意に晒されてきたことを如実に感じさせていた。
「こんな年齢になって、愚痴るようなことでもないのかも知れないが」
「医局長の場合は、既にご自身の実績で全て覆していらっしゃるようには思いますけれど……だからと言って、なかったことに出来るものでもないと思いますよ」
心に傷を負った側は、負わせた側よりも遥かに長くそのことを覚えている。
私がそう言うと、医局長は少し困ったように微笑っていた。
「私が弱かったのだとは思わないのだな」
「そんな権利は、私どころか誰にもありません」
もともと先天性色素欠乏症とて、日本どころか発展途上国においては未だに差別と迷信に晒されている聞く。
怪しげな呪師の作る民間薬がいまだに広く使われている地域で、権力や幸せ、健康をもたらすとされる薬を作るために、なんとアルビノの身体の一部が使われることがあるというのだ。
現代の悲劇、アルビノ狩り。そんな言葉さえ存在しているほどに。
黒髪民族の日本ですら、他の人と違う容姿をからかわれる話が複数存在している。
いずれも本人には一切の非がないのに、だ。
その点、公害病との共通点を見たガールシン医局長の見解は、あながち間違いだとは言えない。
アルビノ狩り――私の国の話としてそれを口にしたところでは、医局長どころかエドヴァルドやファルコ、この部屋の皆が顔を強張らせていた。
「私に言えるのは、医局長の体質は、ほんの些細な突然変異だと……それだけです」
「そうか……ああ、いや、すまない。公爵令嬢にさせるような話ではなかった。つまり私が知りたかったのは、鉱山が原因の毒素に有効な食材がありそうと言うのなら、私のこの、色を回復させるのにも何か手はあるのでは――ということなんだ」
「医局長の色……」
「貴女の話を聞いて、少し、希望を持ちたくなってしまったと言うのが正しいのかも知れないが」
先天性色素欠乏症の際たる原因は、肌や髪の毛の色を構成するメラニン色素が極端に少ないことだ。
とは言え現代日本では、白髪改善・予防の研究は確かに存在していた。美白のための研究とはまた別に、だ。
「ええと……私の国で行われていたのは、加齢からくる白髪の改善、予防の研究だったので、それが当てはまるのかどうかはまだ未知の領域だったんですが……」
加齢、と私が言ったところで医局員の何名かがピクリと反応をしていた。
すみません、美白の研究程内容を詳しく覚えてはいません。内心でそう思いながらも、それを口に出来ない空気が医局内に蔓延していた。
こうなると、とにかく某頭髪化粧品メーカーが研究していたらしい内容を、私としても必死に思い返すしかない。
「チーズや牛乳と言った乳製品に大豆食品、豆乳などを積極的に摂っていくことで、失われた色素を取り戻す効果が期待されていたような……あ、大豆はアンジェスでは自生していないんだっけ……たらこ、かつお、アーモンド、バナナならある……?」
「「「⁉」」」
私の呟きに、複数人が目を瞠っている。
「――分かった、レイナ、それも医局長宛に別に取りまとめるといい」
そして盛大な溜息と共に、エドヴァルドがそう言って私の頭の上に手を乗せた。
「いいんですか?」
「今更だな。そこまで言っておいて、情報を制限していてはただの嫌がらせだ」
カトル・アルノシュトより緊急性は低いにしろ、管理部長が魔道具型の眼鏡を渡して補助をするくらいには、日常生活に支障のある体質なのだ。
呪いだの病原菌だのと、ロクでもない扱いをされる現状を少しでも改善出来るなら。
それは確かに、研究の価値があることだと言えた。
「有難うございます。私的なことでお引き止めして申し訳なかった。今は言質をいただけただけで充分。どうか閣議の間へ向かわれて下さい」
そう言いながらガールシン医局長は、私たちが医局を後にするまで、無言で深々と頭を下げ続けていた――。
カトル・アルノシュト伯爵令息の現状を把握したところで、そろそろ潮時かとの空気は確かに流れ始めていた。
にも関わらずそれを、絶妙なタイミングで遮った声があった。
「ガールシン医局長?」
「その、出来れば彼の症状を改善させる可能性のある食材の話を、もう少し詳しく聞きたいのだが――」
そうは言いながらも、目線はエドヴァルドの方を向いている。
何となく、許可が出ないことを悟りながらも、万が一を考えて聞いている風ではあった。
「却下だ、ガールシン医局長」
そして案の定、エドヴァルドは思い切り眉根を寄せている。
聞かれた私ではなくエドヴァルドが答えているのってどうなの……? とは思いながらも、他に誰もそのことを不自然に思っていないように見えるのが、イマイチ釈然としない。
いや、直接私に聞かれたとしても、この後の予定が詰まっている以上は、エドヴァルドにお伺いを立てないわけにもいかないのだけれど。
「彼女はこれから閣議の間で行われる話し合いに立ち会って貰わねばならない。陛下と全ての公爵、テオドル大公殿下らも顔を合わせる重要な話し合いだ。後で書面にして医局に届けさせることなら出来るだろうが、この場に留まらせることは出来かねる」
ですよね、と心の中で呟いたのは、私だけではなく、多分医局長もだろう。
医局長は、この後何があるかまでは知らなかったにせよ、フォルシアン公爵を始め色々な高官が医局に出入りしている状況を鑑みて、私ひとりが残る許可は下りないだろう――くらいのことは考えていたはずだ。
「それはその……アルノシュト伯爵令息の処遇も含めての話し合い、ということでしょうか」
ただ、医局長もそこは確認しておきたかったのかも知れない。
少しでも私がこの場に残る余地があるなら――と言ったところだろうか。
けれど、問われたエドヴァルドの表情は、まるで変わらなかった。
「知ってどうする」
そうとも違うとも、彼は言わなかった。
だけどそれが事実上の「諾」だと言うのは、ガールシン医局長にも私にも理解が出来た。
「いえ……申し訳ない、私の職分を越えたことを申し上げたようだ。では、書面の件はお願いをしても?」
医局長は自らの判断で素早く身を引き、エドヴァルドは返事をする代わりに無言でこちらを見つめてきた。
どうやら、これは私に「答えていい」との合図を送っている……気がした。
「あっ、はい、分かりました!」
そしてここは、それ以外に答えようがないのだから、医局の空気だって冷えないだろう。
「その、王宮の厨房で試して貰えそうなレシピもお付けしようと思うので、何回かに分けてお渡しをしてもよろしいですか?」
とは言え、どう考えても何かを書き上げるには、時間が圧倒的に足りない。
放置しておいていい問題じゃないことが分かりきっていても、だ。
素早く考えを巡らせた私は、分割して書面を作成するという窮余の策をそこでひねり出した。
「それは……もちろん。一朝一夕に解決する問題ではないのだから、一度きりで話が途切れてしまうよりもよほど建設的なことと私も認識している」
そしてどこまで私の状況を察してくれたのかは不明ながら、ありがたいことに医局長は私の妥協案をその場で呑んでくれた。
ただガールシン医局長の話には続きがあったようで、私の妥協案を呑んでくれたことばかりを喜んではいられなかった。
「何より貴女には、今回の話以外にもじっくりと聞きたいことがあった」
「え?」
「――――」
話の続きも気になるものの、すぐ傍に立つエドヴァルドのこめかみがピクリと動いたような気がして、うっかりそちらに意識を持っていかれてしまった。
(医局長、おかしなこと言わないで下さいね!? 医局が吹雪いても、私、責任持てませんし……!)
いざとなったら、医局長と管理部長の仲の良さを無理矢理にでもエドヴァルドにアピールすべきかと、ナナメ上のことを考えている私をよそに、医局長は存外真剣な表情でこちらの様子を伺っていた。
「その……先ほど、管理部長との話の中にも少し出ていた、私のこの容姿のことだ」
「!」
私以外の全員が、要領を得ない表情を見せた。
それはそうかも知れない。
あの広間で同じテーブルを囲んでいたのは、私とシャルリーヌとヴェンツェン・ド・ブロイ管理部長と、目の前のガールシン医局長の四人だったのだ。
医局長の話から、容姿つまり〝先天性色素欠乏症〟のことだと推測出来る人間は、この中では私しかいなかった。
「あの、今ここでその話をしてしまっても……?」
この世界では、個人情報保護も何もないわけだけれど、それでも遺伝子疾患云々を口にするとなると、なかなかにセンシティブな話題なんじゃないか。
私が気を遣っていると分かったんだろう。
ガールシン医局長は、微笑みながら片手を振った。
「構わない。私の身体全体が陽の光に弱く、視界も普通の者よりも極端に狭いことは、医局の皆が承知している。むしろ治る治らないはともかく、呪いでも伝染病でもないらしいと言うことを、同じようにこの場で周知して貰いたくて、呼び止めさせて貰った」
「!」
その瞬間、確かに医局内がどよめいた。
「レイナ……?」
エドヴァルドも、そしてファルコも、どう言うことかとこちらを見る視線が語っている。
「あ、その、えーっと……まず、アルノシュト伯爵令息とは、原因も症状もまるで違う話だと言う前置きはさせて下さい」
人的原因による鉱毒と、本人にはどうしようもない、先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患。事象そのものに、被る要素は何一つ存在していない。
「医局長が仰りたいのは、未知の症状に対する風評被害、すなわち呪いだ伝染病だと周囲から蔑まれ、孤立をしてしまう、その状況が酷似しているのでは――ということなんですよね?」
同調圧力、あるいは同調行動。
ガールシン医局長は、類稀なその医学知識で今の地位にまで昇り詰めてきた人のようだけれど、年齢を分かりにくくしている、肌や髪の色素が少ないその容貌は明らかに集団の中では浮いてしまっており、常に彼を排除しようとする勢力の悪意に晒されてきたことを如実に感じさせていた。
「こんな年齢になって、愚痴るようなことでもないのかも知れないが」
「医局長の場合は、既にご自身の実績で全て覆していらっしゃるようには思いますけれど……だからと言って、なかったことに出来るものでもないと思いますよ」
心に傷を負った側は、負わせた側よりも遥かに長くそのことを覚えている。
私がそう言うと、医局長は少し困ったように微笑っていた。
「私が弱かったのだとは思わないのだな」
「そんな権利は、私どころか誰にもありません」
もともと先天性色素欠乏症とて、日本どころか発展途上国においては未だに差別と迷信に晒されている聞く。
怪しげな呪師の作る民間薬がいまだに広く使われている地域で、権力や幸せ、健康をもたらすとされる薬を作るために、なんとアルビノの身体の一部が使われることがあるというのだ。
現代の悲劇、アルビノ狩り。そんな言葉さえ存在しているほどに。
黒髪民族の日本ですら、他の人と違う容姿をからかわれる話が複数存在している。
いずれも本人には一切の非がないのに、だ。
その点、公害病との共通点を見たガールシン医局長の見解は、あながち間違いだとは言えない。
アルビノ狩り――私の国の話としてそれを口にしたところでは、医局長どころかエドヴァルドやファルコ、この部屋の皆が顔を強張らせていた。
「私に言えるのは、医局長の体質は、ほんの些細な突然変異だと……それだけです」
「そうか……ああ、いや、すまない。公爵令嬢にさせるような話ではなかった。つまり私が知りたかったのは、鉱山が原因の毒素に有効な食材がありそうと言うのなら、私のこの、色を回復させるのにも何か手はあるのでは――ということなんだ」
「医局長の色……」
「貴女の話を聞いて、少し、希望を持ちたくなってしまったと言うのが正しいのかも知れないが」
先天性色素欠乏症の際たる原因は、肌や髪の毛の色を構成するメラニン色素が極端に少ないことだ。
とは言え現代日本では、白髪改善・予防の研究は確かに存在していた。美白のための研究とはまた別に、だ。
「ええと……私の国で行われていたのは、加齢からくる白髪の改善、予防の研究だったので、それが当てはまるのかどうかはまだ未知の領域だったんですが……」
加齢、と私が言ったところで医局員の何名かがピクリと反応をしていた。
すみません、美白の研究程内容を詳しく覚えてはいません。内心でそう思いながらも、それを口に出来ない空気が医局内に蔓延していた。
こうなると、とにかく某頭髪化粧品メーカーが研究していたらしい内容を、私としても必死に思い返すしかない。
「チーズや牛乳と言った乳製品に大豆食品、豆乳などを積極的に摂っていくことで、失われた色素を取り戻す効果が期待されていたような……あ、大豆はアンジェスでは自生していないんだっけ……たらこ、かつお、アーモンド、バナナならある……?」
「「「⁉」」」
私の呟きに、複数人が目を瞠っている。
「――分かった、レイナ、それも医局長宛に別に取りまとめるといい」
そして盛大な溜息と共に、エドヴァルドがそう言って私の頭の上に手を乗せた。
「いいんですか?」
「今更だな。そこまで言っておいて、情報を制限していてはただの嫌がらせだ」
カトル・アルノシュトより緊急性は低いにしろ、管理部長が魔道具型の眼鏡を渡して補助をするくらいには、日常生活に支障のある体質なのだ。
呪いだの病原菌だのと、ロクでもない扱いをされる現状を少しでも改善出来るなら。
それは確かに、研究の価値があることだと言えた。
「有難うございます。私的なことでお引き止めして申し訳なかった。今は言質をいただけただけで充分。どうか閣議の間へ向かわれて下さい」
そう言いながらガールシン医局長は、私たちが医局を後にするまで、無言で深々と頭を下げ続けていた――。
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