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奔走編

逃亡者、エルフの里へ

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エルフが住んでいるという帝都の北の森まで馬車でやってきた。

馬車が通れる道はないので、ここからは歩いてエルフの住む里まで進むことになる。
僕はエミルを背負う

「エミル、里がどこにあるかわかる?」
僕はエミルに聞く

「わかりゃない」

「それじゃあ、探しながら森に入ろうか」
適当に歩くしかないかな

エルフもエミルを探しているはずだし、歩いていれば向こうから接触してくると思うだろう……

僕達は森に入る

「あそこにリスがいるよ!かわいいね」
木の上にリスみたいな小動物を見つけた

「ほんとだ!」

僕達は森を楽しみながら進んでいく

「お兄ちゃん、ここさっきも通ったよね?」

「……そうだね」

歩くこと数時間、僕達は迷子になっていた

「適当に歩いてはいたけど、森の奥に向かって大体まっすぐ歩いていたから、迷ったとしても戻ってくるのはおかしいと思うけどなぁ」

「気づかないうちに、少しづつ方向変わってたのかもしれないよ」

「うーん、このままだと夜になっちゃうね。今日は諦めて寝れるところを探した方がいいね。もしかしたら探しているうちにエルフの里も見つかるかもしれないし」

「そうだね。そうした方がいいかも」

寝れそうな場所を探していると、少しひらけた場所を見つけた。

「ここなんて良さそうだね」

「うん、いいんじゃないかな」
ミアも良さそうなのでここに決める

僕は収納からテントを取り出して、中に布団を敷いていく

「少し早いけど、ここで休もうか。ご飯食べよう」

僕は2人分の食事とミルクを取り出す

エミルにミルクを飲ませてから食事を食べる

「明日は何か目印でも付けながら歩こうか……」

「それがいいかも」

僕はテントに偽装を掛けて岩に見えるようにしてから寝ることにする

これで、寝てる最中に森にいる魔物に襲われることはないだろう

翌日は予定通り目印を付けながら森の奥を目指す

「お兄ちゃん、ここさっきいた所だよ」

「そうだね」
目の前の木には僕が目印として付けた紐が付いている

「やっぱりおかしいよ。今日はちゃんとまっすぐ奥に向かってたよ」

「うーん、強制的にループさせられてるのかな?」

「……そうかもしれないけど、そんなことあるのかな?」

「今度はさっき付けた目印に向かって歩いてみようか」

「うん」

僕達は目印の紐に向かって歩いていく。そして……

「ここから先に目印が付いてないね。さっきもこっちに向かって歩いていたはずなのに」

「うん、さっきはまっすぐ進んでたはずだよ」

「ミア達は少しここで待ってて。何かあっても僕だけなら転移で戻ってこれるはずだから」

僕はエミルをミアに預けて、奥に進む

僕の目の前には紐を付けた木がある。

後ろを振り返るけど、ミアはいない。

僕はマーキングを目安にミアのいる場所を確認する。

あれ、ミアがいるのは後ろじゃなくて前方だ。

やっぱり、ここに戻されてるんだな。

僕は転移でミアのいるところまで戻る

「ただいま。ミアから見て、僕に何か異変はあった?」

「うん。段々とお兄ちゃんの事が視認しにくくなって、最後には完全に見えなくなったよ」

ミアからはそんな風に見えてたんだ

「この辺りを通ると、森の入り口付近まで戻されるみたいだよ」

「え、ほんとに?」

「本当だよ。この辺りを調べることにするよ。ミア達が戻されちゃうと大変だからそこで休んでて」

「うん、お願いね」

僕は鑑定を使って探ると原因が見つかった

転移結界

結界に触れたものを指定した位置に強制転移する
周りの認識を阻害する

「ミア、原因は分かったよ。見えないけどここに結界があるよ。これに触ると強制的に転移させられるみたい」

「そんなものがあるんだね。それでどうするの?」

「うーん、結界があることはわかったから、無理矢理なら通れると思うけど、多分結界が壊れると思うんだよね。結界がすぐに張り直せるものなのかどうかがわからないから迷ってるんだよね……」

「ただでさえ一触即発に近いんだから、それはまずいと思うよ」

「そうだよね。でもこのままだと中に入れないよね。結界が張ってあるんだからこの先にエルフの里があるのはほぼ確定だと思うし……」

「困ったね…」

「エルフはエミルを探してるんだよね?なんでここまで来ているのに出てこないんだろう?」
僕は疑問に思っていた。帝都で話を聞いた時はかなり切迫していると思った。森に近づくくらいで攻撃されるかもと思っていたのに静かすぎる

もしかして何か認識とは違うことが結界の中では起きてるのかな?

「なんでだろうね?探してないのかな……?」

「…………。なんとか結界を壊さずに中に入る方法を考えるよ」

僕は考えた結果、改変スキルで結界をイジることにした

強制転移する位置を結界の中に改変する

「お待たせ!多分これで結界の中に入れるよ」

「ほんと?さすがお兄ちゃん!」

僕達は結界の中に入る。

僕は中に入ってから、結界を改変で元に戻しておく

これで僕達が中に入っただけだ

結界の中をさらに奥の方へ進むとエルフの男性に止められた

「何者だ!人間がどうやって入ってきた?」

「僕はハイトです。勝手に入ってきたことは謝りますが、エミルを届けに来たんです。里に入れていただくことは出来ませんか?」

僕はエミルを見せながら弁明する

「エミル?えっ、そんな……いや、しかし……。こ、この方は本当にエミルフル様ですか?」
男性はエミルを見て動揺している

「本人がそう言ってましたよ。今は寝てますけど……どうしたんですか?」

「エミルフル様は先日お亡くなりになったはずです。私はそう聞いておりましたが……この方は本当にエミルフル様ですか?」
どういうことだろう?エミルが死んでる?ここにいるけど……
なんだかきな臭くなってきたな。はぁ

僕も鑑定で見たので、この子がエミルフル・ルリァ・ルージュベリュであることは間違いない。

最初から鑑定を使えば名前がちゃんと分かったと、後から気づいたのは恥ずかしいから内緒だ。

「間違いないと思いますよ。本人からも名前を聞きましたし、僕の方でも確認するすべはありますので……」

「……そうですか。私では判断がつきません。長老に聞くか…いや、でも人間を……女王様の…」

男性は独り言をぶつぶつと言っている。僕達を里の中に入れてしまっていいのか迷っているようだ。
あとは、何故か死んだことになっているエミルをどうするかか……

この人にエミルを渡せばいいかな。皇帝からの手紙と一緒に。
後は、中に入らずにここで待ってるから、魔王城へと行き方を知ってる人がいないか聞いてきてもらえないかお願いすればいいかな

僕がそう考えていると、先に男性が答えを出したようだ

「あなた方は、エミルフル様を保護して頂いたということで間違いないですか?」
ここは嘘を吐かずに話した方がいいだろう

「僕達はエミルを届けにきた冒険者です。別件でエルフの方に聞きたいことがあったので代表として来させていただきました。保護していたのは帝国の貴族であるミハイル様という方です。盗賊が誘拐しているところをたまたま見つけたそうですよ」

「……ご足労頂きましてありがとうございます。一緒に里まで来て頂いて、長老と女王様に説明して頂いてもよろしいですか?」
願ってもない事を頼まれた。
長老と女王に魔王城の事を聞くチャンスだ

「もちろんです」

僕達は男性に連れられてエルフの里に入ることになった
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