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国盗り編

役割を与える

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自主的に城に集まっていた人達だけだけど、ふるいに掛けて、まとめる人も半強制的にではあるけど任命した。

これで急激に国が良くなるとは思ってないけど、一歩前に前進出来たと信じることにする。

国のことは一旦、ブライアさんを中心に元々この国で領地を治めていた人に任せて、次はクラスメイトの方をなんとかすることにする。


「それがいいですね。クラスのみんなを集めてもらえますか?僕から話をします」
桜先生と今後どうするかを相談してから、部屋に引きこもっている人達を呼んできてもらう。


「話は聞いていると思うけど、王国は一度解体して、僕が王として新しい国になります。王国がなくなったので、命令に従う必要も怯える必要もないです。自由に城から出てもいいです」

「助かったのね……」
「よかった……」
安堵の声が聞こえる。

「当然だけど、王国がなくなったので、部屋に引きこもっていてもご飯が出てくる生活も終わりです。引きこもっていてもいいけど、養ってくれる人は自分で探してください。今日から100日間は今まで通りの食事を配ります。部屋も使っていいです。ただ、その後も今の部屋を使うなら家賃をもらいます」

「私達が邪魔だから出て行けってこと?」

「クラスメイトだからってタダ飯をいつまでも食べさせる程に優遇するつもりはないって言っただけで、邪魔だから出て行けとは言ってないよ。ただ、地球に帰る方法は見つかってない。このままだと、死ぬまでこの世界で暮らすことになる可能性は高いと思う。それなら本気でこの世界で生きることを考えないといけない。働いてお金を稼ぎたいけど、何をしていいかわからない人は、僕か桜先生に言ってくれれば仕事を斡旋することも出来るから」
不満そうな顔が見て取れる。
しかし、いつまでも特別扱いするわけにはいかない。

「え……」
「なんで……」


「ヒドい!」
「好きでこんな世界に来たわけじゃないのに!」
「適当な理由を付けて、邪魔なんでしょ」

「話しは以上だから、よく考えてください」
不平不満がとまらなくなったので、言わないといけないことは言ったし解散させる。

「影宮君」
みんなが納得いかない顔で出て行く中、武藤さんが王の間に残り、僕に話しかける。

「何?」

「助けてくれてありがとう。みんな心が疲弊しているから文句を言っただけで、冷静になればみんなも影宮君に感謝するはずよ。本当はすぐにお礼を言いたかったんだけど、影宮君が悪者みたいな空気になってて言い出せなかった。ごめんなさい」

「ああなることは予想出来ていたから、気にしなくていいよ」
武藤さん1人だけでもわかってくれてよかった。

「それで、一歩踏み出す為にも自立しようと思う。でも、この世界のことも未だによく知らないし、連れて来られる前に働いたこともないから、何をすればいいのかわからない」

「武藤さんはやりたいことはある?」

「何の仕事が出来るかはわからない。元の世界に帰りたいとは思うけど……」

「元の世界に帰る方法を探したいわけだね」

「うん。帰るのを諦めたくない」

「なら、それを仕事にすればいいんじゃない?」

「それでお金なんて、誰もくれないよ」

「この世界の人は誰もお金をくれないと思うけど、元の世界に帰りたいと思っているのは武藤さんだけではないよね?その人達からお金を貰えばいい。これは逆のことも言えて、武藤さんは他の仕事をして、代わりに誰かにお金を払って調べごとに集中してもらってもいいと思う」

「そっか。そうだよね」

「それで、どうする?」

「……何か仕事を紹介してください。私だと帰る方法を見つけられないと思うから」

「何かやりたい仕事はある?具体的じゃなくても、頭を動かしたいとか、体を動かしたいとか。やりたくない仕事でもいいよ。全ての条件に合う仕事を紹介することは出来ないかもしれないけど、出来るだけ近い条件の仕事は探すよ」
武藤さんから桜先生と一緒に色々と話を聞いて、武藤さんに合った仕事を考える。

「武藤さんの希望とは少し違うけど、城の外に働きに行くのは怖いってことだから、食糧不足解消の為の農業改革についてのまとめ役はどうかな?武藤さんは城から出ていないからわからないかと思うけど、この世界は魔法やスキルがあることで、科学の発展が地球に比べて著しく遅れているんだ。代わりに魔法があるわけだから、この世界が劣ってるわけではないけど、人が少ない村だと、魔法やスキルで補うことが出来ずに作物が育たず、飢えてしまう人がたくさんいるんだ」

「そんな大役が私に出来るかな……」

「無理強いするつもりはないけど、武藤さんの実家って農家で家の手伝いもしてたんだよね」

「してたけど、ほとんどはお父さんとお母さんがやってたから、そんなに詳しいわけじゃないよ」

「でも、他の人よりは詳しいよね?」

「それは、そうだけど……」

「上手くいかなくても誰も責めたりはしないから、お願いします。嫌になったら他の仕事を紹介するから」

「……そこまで言ってくれるならやってみるわ。何からやればいい?」

「ありがとう。仕事の内容だけど、僕に畑のことはわからないから、武藤さんのやりたいようにやってくれていいよ。必要な物があれば用意するし、人も揃える」

「……やってみるわね」
武藤さんは苦笑いで答える。

「給金に関しては今日から払うけど、武藤さんのペースで進めてくれていいから。食事も今よりは豪華になるから期待してて」
その後、給金に関しての話と、必要な物をわかっている限りで聞いた後、武藤さんには退出してもらう。

「良かったのか?丸投げしすぎじゃないか?」
篠塚君に言われる。

「丸投げしたのは悪いとは思ってるけど、実際に僕が武藤さんより農業に詳しいかっていうと、そんなことはないし、他の仕事を任せるにしても、この世界の人でも出来る仕事を紹介すると、この世界の人から反感を買うかもしれない。そうなるとどうしても専門的なことをお願いするしかなくなるんだよ」

「仕方ないか」

「成果が出なくてもいいわけではないし、期待はしているけど、1番の目的はこの世界で生きていくことの覚悟を決めて自立してもらうことだから、武藤さんが働くって言ってくれた時点で目的は達してるよ。これで武藤さんの生活基準だけが上がるから、それを見て他の人も働く気になってくれればいいんだけど……」

「そうか。俺の役目は終わったよな?」

「うん、助かったよ。ありがとう」

「俺は帰るから、元の世界に帰る方法が見つかったら教えてくれ」

「わかったよ。それじゃあ」
篠塚君が僕の差し出した手を握る。

「違う、違う。元の世界に帰りたいなら少しでいいからお金を置いていって。誰かがそのお金を使って生活しながら、帰る方法を探すんだから」

「ちゃっかりしてるな。そんなこと言われても俺が金を持ってないのは知ってるだろ?あるのはお前への借金だけだ」

「僕への借金は返済済みってことでいいよ。篠塚君のおかげで、安心してこれだけの領地を奪えたからね。十分すぎるほどに返してもらったよ。宝物庫の中身も手に入ったし、渡した方がいいくらいだよ……渡そうか?」

「それは国の復興費用だろう?くれるというなら、それを使って帰還方法を探してくれ」

「そうさせてもらうよ」

「…………復興費用からクラスの奴らを雇う金を出したいなら、初めからそう言えよな。それじゃあな。俺は借りを返し終わったとは思ってないから、必要ならまた呼んでくれ」

「ありがとう。またね」
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