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二年目◆秋 【はろうぃん】
しおりを挟む「なんっじょーさんっ、とりっくおあとりーとぉー!!」
けたたましい笑い声と共にドシリと背中にぶつかってくる少女。
俺は眉をしかめて腕を伸ばし、その酔っぱらいの襟首を掴んだ。
「お菓子ーくれにゃきゃー、イタズラするにゃー」
ケタケタ笑いながら、押さえつけようとする俺の手から逃れようとジタバタ暴れる。それこそ猫のように。
いてっ、猫パンチするな。誰だよこいつにこれだけ飲ませたの。
と、周りを睨み付けるが似たり寄ったりの酔っぱらいが蠢いているだけで、犯人を探せるわけもなく。
恒例の飲み会。
そういや今日はハロウィンだよなと誰かが言い出し、さっきまでアチコチで『 Trick or treat 』のやりとりが乾杯のようにかわされていた。
俺は我関せず、隅っこで飲んでいたわけだが。目を離した隙にこうなるとは……。
「んむー、おかしぃー」
「噛むな。俺の指は食い物じゃねえ」
ツマミに手を伸ばしてスルメを取り、すっかりグニャグニャになっている木内に与える。
なんの警戒もなく俺の膝にチンマリ座ってスルメをかじるちびっこは、何故か頭に猫耳をつけていた。誰だ。誰が持ち込んだんだ。
……今日女史が不在でよかった。
あの女がコレを見たら、確実にお持ち帰りされてイケナイ世界に連れて行かれただろう。
血の繋がらない兄を自負する俺としては断乎阻止しなければならない事態だ。
なにが楽しいんだか、くふくふ笑って俺の腕に猫パンチを繰り返す木内。
それをあやしつつ、皆のように我を忘れて騒ぐことができない酒の強さが少し寂しかったりする。
「ご機嫌だなー。いいことでもあったのか?」
「んーんーん? ぅふふー、ねーねーとりっくおあとりーとー」
ねだられてチーズを与える。もむもむ頬張り、食むのにあわせて動くつむじを見下ろして、俺はそこはかとなく生温い気分になった。
この馬鹿騒ぎはいつお開きになるんだろう。また俺が後始末か。
たまには俺にもご褒美をくれ。
ふと、悪戯心が湧いて、木内の頬をつついた。
「 Trick or treat? 」
むっ、と寄った眉の下、視線がさ迷い、自分が何も持っていないことを確認して唇がへの字になる様を楽しく眺めつつ、さてどんなイタズラをしてやろうかと思った瞬間。
むにゅう、と色気なく頬に唇が押し当てられた。
柄にもなく驚いて、目を丸くした俺を見上げてニンマリ笑ったかと思ったら。
電池が切れたみたいに、木内はコテンと眠りに落ちた。
子どもみたいな無防備な寝顔を見下ろして、唖然とする。
………オイオイオイ危ねえな~、コイツ絶対外で飲まないように言い聞かせないと。
ていうか。
違うだろ、イタズラするのは俺だろう、
なんで俺がイタズラされたんだ。
首をひねり、まだおかしな感触が残る頬を気につつ、残った酒を飲み干した。
(初出:2009/10/31 ハロウィンSS)
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