ヒロインかもはみだし番外編集

深月織

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結婚後◆ 【休日の過ごしかた。1】

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 今朝、目が覚めたときから、うちの奥さんはご機嫌ナナメだった。
 ぷっくり膨らんだ頬を横目に、濃く淹れた珈琲に牛乳を投入して砂糖をスプーン山盛り一杯。カフェオレというよりコーヒー牛乳だと思うソレを彼女の席に置く。
 トーストにトマトとポテトのサラダ、ボイルソーセージに目玉焼き。
 絵に描いたようなモーニングセットを食卓に並べ、イタダキマスの声もムッツリと、カフェボゥルを見下ろし「こんなんであたしのご機嫌が良くなるとでも思ったら大間違いなんだからね!」とばかりに俺を睨みながら、彼女は焼けたトーストにかぶりついた。
 考えてみても不機嫌の原因がわからん。
 同じようにトーストにかぶりつきつつ目の前の妻を観察する。
 睨みあったまま、もしゃもしゃと朝食を咀嚼する音がダイニングに響き――俺は白旗を上げた。
 せっかくの二人揃って予定がない休日だ。時間がもったいない。
「降参。何を怒ってるんだ、奥さんは」
「……心当たりがないっての、旦那さん」
 まったく。昨日は悪さしてないし、面倒も起こしていないはずだ。
  そう正直に言うと、彼女は頬をふくらませた。
「昨日っ。幾見さんと話してたっ」
「うん?」
 確かに、企画部の同期幾見が書類持ってきたときに、雑談していたことは認めるが。奴が何。
「彼女さんとのデート、オススメスポットとかっ」
「ああ。あいつデレデレとウザかったな」
「違うしっ!」
 ゴンッ、とマグカップをテーブルに叩きつけて怒りと否定を示す妻は、ウザかったのは同意だけど、と付け足してからこちらに指を突きつけてきた。
「あたしデートとかしたことない、ずるいっ!」
「……はあ?」
 呆気にとられた俺の態度が悪かったのか。更にいきり立つ。
「旦那の野放し時代に誰と出掛けようがデートしてようが今さら関係ないけどねっ、奥さんとデートのひとつもしたことないってどゆことー!? 失礼しちゃうじゃないのっ」
 思考すること暫し。結論にたどり着いた俺は、ニヤリと唇を曲げた。
「なんだ、俺とそんなにデートがしたかったのか」
「ばっ! 違うし! 違うっつーの! あたしに対する手抜き度の話をね!」
 怒ってるふりで図星を誤魔化そうとしても無駄無駄。っていうかマグが割れるからゴンゴンするな。
「ちーがーうーのーー!!」
「ふーん? じゃあ、お出掛けはナシか」
 ピタリと動作が止まる。
「部屋でのんびりするのもいいが、天気もいいし外に出ようかと思ったんだけどな。奥さんは出掛けるのイヤかぁ」
 ニヤニヤと意地の悪いことを言いながら、膨れた頬をつつく。恨めしそうな上目遣いに笑みを落として。
「――で、どこに行きたい?」
「……水族館とか……屋上庭園があるショッピングビルでお買い物とか……映画とか?」
「なんで疑問系だよ」
 しかも昨日俺が幾見に言ったコースまんまじゃねぇか。
「だってちゃんとしたデートなんてしたことないもんっ。わかんないもんっ」
 可愛いこと言いやがってコンニャロウ。
 丸い頬をきゅっと摘まんでから、拗ねて尖った唇を啄んだ。
「きっちりエスコートしてやるから、可愛くしてこい」
「俺様めー」
 ぶつくさと悪態をつきながらも、部屋へ向かう後ろ姿はご機嫌上昇。
 さて、どこに連れて行けば奥さんは一番喜ぶだろうかと考えながら、車のキィを取り上げた。


(初出:2012/12/01 メルマガSS)
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