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第十四話 ご主人様 ①
しおりを挟むアンドレイ王との謁見を終え、サイラスとマーガレットは屋敷に戻ると、サイラスは直ぐに大広間にエイダを呼び出した。ヨロヨロと腰をさすりながら自室から出てきた老魔女エイダに、王との謁見の結果を伝えた後、サイラスはマーガレットの方を向き直った。
「──そう言う訳だ。王の直々の命だから致し方あるまい、マーガレット? 暫くは俺の下女ということでよろしく頼む……」
マーガレットは不満げに腕を組んで、突然自らのご主人様となった男の、紫水晶のような瞳を見返した。
「う~ん……すごく納得がいかないわ……何でこうなったの?! ……わたし、下女の仕事なんてしたことないし……」
──キーガンだったら、絶対わたしにそんなことはさせないんだから……
取っ付きにくい外見ではあったが、キーガンの厳めしい顔つきが少し懐かしくマーガレットの心に浮かんできた。
サイラスはそれでもマーガレットをなだめ、説得しようと試みた。
「──しかし、石牢に幽閉させられる事態は避けられたのだから、まぁ上出来だぜ? いずれにしても外に出ることは叶わないのだからな。使用人として働いて身体を動かしていれば、部屋に閉じ籠ったせいで運動不足でブクブク太るなんてこともないしな? 」
「まぁ、酷いことをいうのね! わたし、わざわざ下働きなんかしなくたって、ちゃんとダイエット体操とかするから心配ご無用です!! 」
そこまで言うとマーガレットの心に、何か欲しいものがあるとすぐに父親におねだりをしてきたこれまでの悪い癖が、ここでもにわかに顔を覗かせてくる。
「──ねぇ、サイラス……? 」
「──ん? 」
「見逃してぇぇ?! お・ね・が・い・っ! ……」
この過保護に育った令嬢は甘えるような猫なで声を出したかと思うと、上目遣いでパチパチと目を瞬かせながら魔導師の細面をじっと見上げた。
「──え? あ? ……いや……コホンっ! 何の真似だ、マーガレット? ダっ、ダメだぞ! ダメだ! ダメだっ! 」
一瞬だけサイラスは目をキョロキョロとさせて顔を赤らめたが、ぶるぶると首を横に振った。
すると、マーガレットはふうと大きく溜め息をついてから、一転して再び憤りを顕にさせた。
「──もぉっ! サイラス! ちょっとは見逃しなさいったら! そんなこと、言わなきゃばれないことでしょうに! 」
サイラスはやれやれとばかりに首をすくめて、大きく左右に両手を広げた。
「──いやいや、そうもいくまい。宮廷執事が君がちゃんと大人しく『コキ』使われているかどうか、毎日のように仔細状況のチェックにやって来るだろうしな……そうそう誤魔化し切れるものでもあるまい? 」
すると、育ちの良い上流階級の娘は、今度はぷぅっと頬を膨らませて反論する。
「──じゃあ、ところで、サイラス? さっきの謁見で議論されたことを、わたしの記憶から消すようにアンドレイ王はあなたに命じたじゃない? 」
「あぁ……確かにな……」
「あなただったら、わたしの状況を確かめにやって来た宮廷執事の記憶だって簡単に消してしまえるのでしょう? ……ね? だから、執事の記憶なんて宮殿へ戻っていく度にささっと消してしまえばいいのよ! だから、普通にわたしをお客としてここに居させて頂戴? エイダのお料理、すごく美味しかったし……ね? いいでしょう? 」
再びマーガレットは、パチパチとお色気を精一杯アピールした瞬きをサイラスに送って見せた。
「──ゴッ、ゴホンッ! ──いやいや……もぉっ、全く君という人は……本当に悪知恵が働くというか……いやぁ、全くスゴいぜ! 」
「えへへへへ! まぁね! でも、そうでもないわよ? ──へへっ! 」
しかし、それでもサイラスは首を縦には振らなかった。
「──だがそうは言ってもだなぁ……『魔法理論』を学んだことのない君に言っても、すぐには理解してもらえないだろうが……人に魔法を掛ける場合には『魔力保存の法則』と呼ばれる摂理が働くんだよ……」
「──『魔力保存の法則』? 」
サイラスはしかつめらしくマーガレットに頷いて見せた。
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