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第十九話 給仕と抱擁 ④
しおりを挟む「──ご馳走様……」
何とか朝食が終わり、サイラスは一旦は自室に戻って行ったが、直ぐに大広間に戻って来た。
そして、再びテーブルに着き、後片付けをしているマーガレットを横目で見ながら、静かに声を掛けた。
「──なぁ、マギー? エイダの躾はなかなか厳しいだろう? 」
「えぇ……」
どういう顔をして返答をしようか戸惑っているマーガレットに構わず、サイラスは続ける。
「──いや、さっきはすまなかった」
「えぇ……まぁ、気にしてませんけど……」
「さっきのことはお互いに忘れよう? 」
「えぇ……でも……」
──でも、胸を触られて、しかも男の人のを初めて見ちゃったし……あんな風なのかぁ、でも、ちょっと可愛かったかも……しかも、わたしったら、それを顔とかお口とかで押し付けて……
マーガレットはぼんやりとまたそんなことを想いながら、何気なく指先で唇を撫でていることに気がつくと、ブンブンと首を横に振った。
──あぁん……厭らしい。わたしったら、変なことを考えて、もぉっ! どうしましょう……
マーガレットの顔が再び火照ってくる。
「──ん? どうした、マギー? 」
「え? うぅん……何でもない……」
「──いや、俺も恥ずかしかったし……」
「わたしだって……」
「まぁ、早く忘れよう……ははは……まだメイドの仕事にも慣れないから──最初は仕方ないが徐々に慣れてくれればそれでいいからさ」
──でも元はと言えば、あなたのあの『ビクッ』が原因だし……
「──はい。ありがとうございます。ご主人様……」
──でも一応はわたしのこと気を遣ってくれるのね……サイラス……
そう思いつつマーガレットは腰を落とし、恭しく若い主人にお辞儀をした。
「あと、それから……マーガレット……君にこれを渡しておくよ。俺からのささやかなプレゼントだ」
「え? 何でしょう、ご主人様……」
サイラスが懐から出し手渡した、何やら細い棒のようなものをマーガレットは不思議そうに手に取って暫し眺めた。
「杖……? 」
「──あぁ……マギー、最初は信じられなかったが、君が昨日アンドレイ王の御前で言ったように、もし本当に妖精を見たというのならば、君には魔法の『才能』があるかもしれないんだ……少なくとも妖精の力を借りる魔術領域『妖精使い』としてね……その才能のない普通の人に奴らが見えることは決してないだろうからな……」
「えぇっ!? あのちっちゃな小さなおじさんのこと?! でも、あのおじさんってば、何かすごい厭らしい目つきでわたしのはだか……」
「──裸? 」
マーガレットはサイラスの射るような視線に恥じらいを感じ、思わず顔を赤らめて言い直した。
「いえ……その……わたしの方をじっと見てたのよ……」
「そうか……マギー、君はこれまでも他に自分に不思議な力があると感じたことはあるの? 」
「え? う~~ん、え~とぉ……あ! そうだ! ……小さい頃からそわそわして落ち着かない気分の朝は、大抵決まって良くないことが起こったりしたわ。それが怖いくらいによく当たったの……そう言えば、昨日のキーガンとの遠乗りの朝もそうだった……」
サイラスは腕組みしながら、マーガレットの話にじっと耳を傾けている。
「──なるほど、そうか……それは君の才能の表れである可能性は高いな……その力は未来予知の魔術には欠かせない能力なんだ……それならば……マギーには今度水晶珠もプレゼントしようか……」
「ホントに? ありがとう……ご主人様」
「仕事を覚えながらな……手の空いた時でいいから。杖を握って深呼吸をしてリックスしながら、少し気持ちを杖の先に集中させて、手頃な軽いものを浮き上がるよう念じてみるといい──もしかすると君の才能が花開くかもしれない………」
※◇※◇※◇※◇※
「……魔法使いかぁ……」
マーガレットはその夜自室に戻って、ベットの上でもらった杖を撫でながらそう呟いた。
エイダの魔法を見て少し憧れのような気持ちが湧いていたマーガレットにとって、サイラスからの思わぬプレゼントと、才能があるかも知れないという言葉がマーガレットにちょっとした幸せと興奮を与えてくれた。
それが使用人としての初日に起きた、穴があったら入りたいくらいの恥ずかしいハプニングも少しだけ忘れさせてくれたような気がした。
マーガレットは、翌日から仕事の間に暇を見つけては、沈黙を続ける杖とにらめっこをし始めたのだった。
※※※※※※※※※※
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