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トーマス編
2-5 続・リアリス視点
しおりを挟む===★<リアリス視点続き>★===
公爵家から謝罪の手紙が来た。トーマスへの無礼を詫びる内容で私への謝罪は無かった。王太子妃の実家ですもの第二王子殿下の婚約者ごとき眼中にないのでしょう。
トーマスから教えて貰って前回私の死後、家族が処刑されたと知った。
殿下は毒の後遺症で苦しみ、エヴリンだけが無事だった。私は悪女として名が残り、エヴリンは悲劇のヒロインになったそうだ。
「<王家の指輪>が怪しいと思うんだ」
「確かに指輪をもらってから私は殿下に恋をしていました」
「<魅了の指輪>かもしれないね。今はどこにあるの?」
「紛失したみたいなの。でもこの失態を理由に婚約の解消を願い出てみます」
今まで父が何度も婚約解消を訴えてくれていた。先日までの私は婚約解消を拒んでいたが、もう殿下とは一刻も早くお別れしたい。
「お父様、私も一緒に婚約の解消をお願いしますわ」
「ああリアリス、やっと正気に戻ってくれたのか」
長く父にも心配をかけてしまった。
「お父様、これまで御免なさい」
父と共に陛下への謁見を申し出て、やっと叶うことになった。
陛下と王妃様まで玉座で私達を待ち構えており、身震いしたが【死】よりも恐れるものは無い、私と父はファーレン殿下との婚約解消を訴えた。
「リアリスはファーレンを慕っていると聞いていたが、本当に解消したいのか?」
「はい、私は殿下に憎まれています」
そう言って手足に残る痣を見せた。
「暴力を振るわれて罵倒される日々、これ以上は耐えられません。どうか婚約の解消をお願い致します」
私は床に額をつけて懇願した。陛下は考え込んでいるが王妃は聞き届ける気は無さそうだ。
「お前が心変わりしたのではないですか?最近はコートバル侯爵令息と仲睦まじく過ごしていると報告がありますよ?」
「父である私が娘に危害を与えられないよう、娘の傍に居て欲しいと彼に頼んだのです。娘の痣をご覧になったでしょう?殿下に都合の良い報告だけが陛下の耳に届いているのですか?我が娘の惨状はご存じないとは」
「お父様・・・」
父がここまで言ってくれるのが申し訳なくて涙が零れた。
「陛下、私はお詫びをしなくてはなりません。殿下より賜った<王家の指輪>を紛失してしまったのです」
「<王家の指輪>ですって?それは私と陛下の元にあります」
王妃と陛下はお互いの指を確認して頷き合った。
「殿下が下さった指輪は偽りだった・・・良かった」
「では娘には値打ちのある物は何一つ殿下より頂けなかったのですね。公爵令嬢には高価なドレスや宝石が送られた証拠があります。これは殿下による資金横領の」
「待て!あい分かった。婚約は解消しよう」
「陛下!何を言われるのです!この婚約は・・・」
「そりが合わぬのでは仕方がない。醜聞が広がるのも望ましくない。ファーレンには別の相手を見つければ済むことだ、婚約は解消で良いのだな?」
「はい、解消して頂ければ当家では何も望みません」
父が頑張ってくれて拍子抜けするほどあっさりと婚約は解消された。
「すぐに手続きを取らせる。解消理由は性格の不一致だ」
「畏まりました、有難うございます」
父は私を見て嬉しそうに微笑んだ。
「お待ちなさい!解消するなら次の婚約のお相手を選んで差しあげましょう」
「いいえ、結構です!当分は婚約など出来ません。また暴力を振るわれたらと思うと恐ろしくて、無理ですわ!」
「何ですって!人の親切を無下にするのですか!」
今まで大人しく言う事を聞き続けた私が声を荒げたので王妃は恐ろしい顔で私を睨み、扇を折ってしまいそうな勢いで握りしめていた。
王妃は王太子妃を可愛がり私など馬鹿にして無視していた。傲慢なエヴリンを第二王子妃にすればいい。貴族間のパワーバランスなど知った事ではないわ。
「申し訳ございません。娘の心の傷が癒えるまではそっとして置いてやって下さい」
「王妃様、今まで可愛がって頂いて有難うございました。ご期待に沿えず申し訳ございません」
「もう下がって良いぞ。ファーレンが済まなかったな」
そうして私達は急いで手続きを済ませて、帰宅したのだった。
家では母も弟も抱き合って喜んでくれた。
「姉上おめでとうございます!王家の責任で破棄でも良かったと思いますが」
「多くを望むと仕返しが怖いからな。これでいいんだ」
「お父様本当に有難うございました」
家族を守って未来の死を回避できた。
こんな私をトーマスは味方してくれて私が間違えないように見守ってくれた。
「トーマス、私、これからは罪を償って生きていくわ」
「君に罪は無いよ。指輪の謎が残ってる。それを解明しないとまだ終われないんだ」
「あの指輪にどんな秘密があるの?」
「まだ分からない。それよりお祝いにカシアンと三人で街に出かけないか」
婚約を解消したばかりだから二人で出かけるなんて出来ない。宝石店でカシアンと私にトーマスは三人お揃いの指輪をプレゼントしてくれた。
「いつかもっとリアに相応しい指輪を贈るよ」
そう言ってトーマスは私をドキドキさせてくれた。
でも私は罪人だ。前の記憶はトーマスにもある。お互い思い出しては辛い思いをするだろう。
罪を背負って私は一人で生きていこう。
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