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第三部 社会人編

第24話 都市伝説・トレンチコートの男

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仕事を始めて、そろそろ1年が経とうとしている。僕は相変わらず忙しく外回りの仕事をしている。


ところで、最近、巷ではある都市伝説が語られるようになっているんだ。

誰ともなく語られ始め、一部のSNSではかなり盛り上がっているらしい。


それは、街中を歩くトレンチコートの男の噂。トレンチコートは冬の防寒具として普通に着られる上着で、さほど珍しいものでもない。

ただ、噂によると、噂のトレンチコートの男は、中に何も着ていないらしい。こっちの世界での性犯罪で、トレンチコートの中に何も着ないで男性の前に表れ、胸や秘部を露出させる女性については、しばしばニュース沙汰になるので、これほど話題にはならない。

そういう女の人には、実際、僕も会ったことがあって、あの時は逆にそのまま繁みに連れていって、オチンチンを入れさせてもらったりしたもんね。(←お巡りさん、この人変質者です。)

今、騒がれてるのは、トレンチコートの中に何も着ずに街中を歩くがいるらしいという話で、男の性的な変質者がいるかもということで、すごく盛り上がってるんだ。


僕も驚いたよ。

だって、こっちの世界に来てから出会った男性って、どの人も性欲がほとんどない人ばかりなんだよ。あの、ヤクザの迫間さんだって、AVをシノギにしてても自分が参加することなんか絶対にしてなかったし。一体どんな人なんだろう。もしかしたら、僕のような転生者なのかもしれないね。


SNSのトレンドワードを見てみると、今は「トレンチコートの男」がトップに出てくるんだ。すごい騒ぎだよね。ちょっと会話を見てみたけど、私は見たとか、確かに中が裸だったとか言ってる人が結構いる。でも、内容に不自然さがあるんだよね。多分デマかな。SNSにありがちなことだよね。

後は、見つけたら逆に襲いたいとか、そういう発言が多いね。デマを本気にして、グループで街中のいろんなところで待ち伏せて、裸見せてきたら押し倒して犯ろうぜ、みたいな犯罪一歩手前のやり取りも結構目にしたよ。


ほんとにもう、なんか物騒な世の中になって恐いよ。


今日も忙しく外回りをしている僕は、歩きながらSNSをいろいろ見ていたんだけど、改めてこの都市伝説の盛り上がりが恐いなって感じた。

そういえば、最近、街中でトレンチコート着ている男性をめっきり見なくなった。多分、この噂とばっちりで強姦事件に巻き込まれることを恐れて、みんな自己防衛しているみたい。

こうなってくると、ただの都市伝説で片付けられない話になっちゃうよね。もはや社会問題だよ。どうしてこんな話が世間をにぎわせちゃってるのかなぁ。


最寄りの駅に着いたので、一旦スマホをカバンにしまい、僕は改札に向かって歩き出した。

さっきまで、怪獣みたいな人たち(←失礼ですよ)へのやっつけ訪問を頑張って、何とか業務のノルマを達成したので、これからは挿入申込の対応に移ろうと思うんだ。

以前に比べると申し込みの密度は少し下がったかな。この活動を始めた頃は、みんなほぼ同時に、試しに申し込んでみようってやり始めたから、スケジュール調整がとんでもないことになっちゃったんだけど、申し込みが一巡してからは、少し落ち着いてきた。

一応手数料を1回1万円ってしてるから、さすがに毎日という訳にはいかないよね。とはいえ、週一とか隔週に一回とかという頻度の人はざらにいるんだけどね。僕としては、いろんな美人さんの中で気持ち良く出せて、何か月額にすると挿入申込対応の副収入の方が、お給料よりたくさんになっちゃうくらいで、おいしい事尽くしなんだ。(←ほんとにこの小僧は・・世の中そんなに甘くないと思いたい。)


さて、今日は6件の挿入申込対応なんだ。以前はこの倍以上を捌いてたから、本当に1件10分とか15分とかで次に進まないと終わらなかったんだけど、それに比べれば落ち着いて、挿入できるようになって、収入は少なくなるけど、気持ち的には今の方がいいかなって思ってる。

あ、多目的トイレを見つけた。

僕も毎日申込対応をしてきて、より効率的に進める工夫をいろいろしてるんだ。

広い間取りの多目的トイレは、着替えをするのに便利なので、ノルマの外回りが終わったら、ここで着替えることにしている。

着替えるっていうか、正確には脱ぐだけなんだけどね。だってほら、どこを訪問してもとりあえず脱ぐことには変わらないわけでさ、服を着て、少し歩いてまた脱いでって、めんどくさいじゃん?だから、最初から脱いでおいて、上着で隠すことにしたんだ。

以前、振るチンで同じマンション内の訪問先を回ったこともあったけど、さすがにあれはリスクが高いなって思って今は控えている。結構、見つかっちゃったりするんで危ないんだ(←当たり前だ)。ナイスバディの高井戸さんに見つかった時はまだ良かったんだけど、その後もゴリラやお相撲さん(←本当に失礼だから)に見つかってしまったこともあって、・・・嫌だって言ってるのに泣く泣く搾り取られた日もあって、大変だったんだ。

という訳で、多目的トイレに入った僕は、上着のトレンチコートをフックにかけ、シャツとズボン、下着を脱いでたたみ、カバンにしまい、再び上着を着た。

トレンチコートはちょっと丈が長すぎるくらいのサイズの大きいのを選んでいる。丈が長いといっても、標準サイズを選ぶとひざ下が見えちゃうからね。ビジネスカバン持ってるのにひざ下が素肌が見えていると不自然なんで、足首まで隠れるような大きいサイズにしてるんだ。

よし、ちょっとスース―するけど大丈夫。申込対応に行こう。


とにかくさ、最近、トレンチコートの男性が激減してるんで、ちょっと目立っちゃうから気を付けないとね。どこの変質者が噂になってるのか知らないけど、僕にまでとばっちりが来やしないかって、不安になるよ。



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圭太君、あんたが震源地じゃん。
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