愛してもいいですか?

hina

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「龍之介は可愛いなあ」
「颯くんも綺麗だよ」
「お前らなあ」
同じオメガの龍之介と孝治と食堂で朝食を囲む。寮生活だしクラスも一緒だから、いつもの顔ぶれだ。


「孝ちゃんも美形」
「ちゃんはやめてくれって言ってるだろ、龍之介」
「えー」
「えーじゃない」
「孝治は気にしいだね」
「そんなことない」
よしよしと孝治の頭を撫でると、ムッとした様子で口を尖らせる孝治に苦笑して、食事を続ける。
今朝は焼き魚と卵焼き、野菜の小鉢が二品とお味噌汁にご飯だ。
もう少しで夏休み。夏バテしないようにしっかり食べる。
僕は大丈夫だけど、夏休み中に発情期が来る子なんかはあえて発情期用の部屋がある寮に残ったりすることもあるらしい。
オメガをたくさん受け入れている我が校はオメガに優しい学校を目指しているらしくて、オメガだけのクラスもあって安心して学ぶことが出来てすごく良い。
アルファのクラスもあるけど、別々の校舎だし、学食や委員会や部活動だったりは一緒になるけど、アルファに慣れるのも大事なことだから、丁度良いくらいの距離を保てているのかなと思う。
もし在校生と番になったら一緒に住める寮の部屋もあるのだとか。

「番かあ……」
「番って……いきなりどうしたの?」
「番がいたら、生活も変わるよね……」
「まあ、番が一番になるだろうな」
「番とは離れられないって言うよね」
「二人はどんな人と番になりたい?」
「そうだなあ……」


朝食の話題にしては重かったかなあと思いながらも、僕は二人の理想を聞いていた。










「俺もアルファだから、番という関係には少なからず夢見ちゃってるかもな」
「僕は夢というか、希望は持ってるかな……」
「ちなみにその希望とは?」
参考までにと続きを促すNさんはリラックスした様子で空色スライムで遊んでいる。
上に向かって放り投げられてるスライムはたまったもんじゃないだろうと思うけど、スライムでも落ちたら衝撃を感じるのだろうか考えてしまう。VRゲームの中のモンスターには不要な心配かもしれないけれど。

「うーん、将来を誓い合える相手と番いたいとかそんな感じです」
「そうか。誠実な人がお好みなのかな」
「不誠実な人よりは」
「そりゃそうだ」
「Nさんこそ、どんな相手がいいんですか?」
「俺は君がいいな」
「は!?」
「ふふ、本気にしてくれていいよ?」
「ええ?」

揶揄われてるのかな。Nさんの余裕のある態度が憎らしい。

「そんなに長く生きてきたわけじゃないけど、今まで知り合った中での癒され度、チョコがダントツなんだよね。このスライムの次くらい」
「スライムに負けてるのか……」
「番という関係に夢は見るけど、夢は夢だし、押し付けるつもりもないし、語るのもやめとくからこれからもよろしくね」
「え、あ、はい」

鼻歌でも歌い出しそうなご機嫌なNさんを眺めながら、自分の後頭部を数度撫でる。

どんな夢なのか、ちょっとだけ聞いてみたかったな。








「へー。ランカーのNってそんな人なんだね」
僕が所属しているギルドDOLLのサブマスター、雪さんが今の話し相手。
侍がジョブの頼れるお兄さんだ。

「知り合って二週間、気が付けばほぼ毎日、じゃあ明日何時にここでって決められてて」
「そんなところはアルファっぽいね」
「無理なら引いてくれるので、決められるまま従ってる僕も僕なんですけど、Nさんは本気なのかなあって……」
「本気かあ。どうなんだろうね、逃せないとは思ってそうだけど……」

ギルドの談話室は今は僕達だけの貸切で、雪さんは真剣に僕の話を聞いてくれている。

「Nさんも高校生らしいから、番なんてまだ早いんじゃないかと思うんですけどね……」
「直感派なのかもね」
「まさか……」
「ん?」

もしかして本当に本気だったら、どうしようと、色んな意味でドキッとしてしまった。
気が付いたら逃げ道が塞がれてるってことも十分あり得そうだから困る。


でもVRだけじゃわからないフェロモン問題とかもあるし。
オメガとアルファって複雑だ。


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