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「あ、あそこにも咲いてる!」
僕は今、Nさんと共に来た星の野原というFTOのフィールドで、光星花と呼ばれる花を探している。
夜になると仄かに青紫に光るので、見つけやすい。けど、まばらにしか咲いていない。
「四月には一面に咲くのに、七月限定クエストだから集めるのが大変なんだよな」
「この度はお付き合いいただきありがとうございます」
「終わったら食事に行こうな」
「どうしようかな」
「頑張ったご褒美に奢るから」
「ゴチです!」
さすがトップランカーは違うや。
FTOでは食事でもちょっとだけ経験値がたまるらしくて、Nさんはよく経験値が増えやすい食事に誘ってくれる。
「でも受験生なのにゲームしてて良いんですか?」
「成績も悪くないから平気」
「もってなんだ。もって」
ふふっと笑って僕の後ろをついてくるNさんに構うことなく、光星花を摘む。花束にしなくちゃいけないから、それなりに集めないといけない。
僕が集中して摘み始めると、Nさんが周りを警戒しだした。
夜は影のモンスターが飛び出してくるから、気が抜けない。
それに、Nさんはもうだいぶ前にこのクエストはクリアしたらしいけど、僕はまだ適正レベルに少し足りない。
これは七月限定クエストだからやりたいってなやんでた僕に、Nさんが護衛を申し出てくれたから出来た背伸びだ。
「光星花が一面に咲いたところも見てみたいです」
「じゃ、四月になったらまた来よう」
四月になってもこうしてNさんとFTOをプレイしてるんだろうか。
まだまだ先のことで想像もつかない。
「おっと」
「瞬殺ですか……」
「ま、複数のジョブを極めたレベルカンストで、武器と防具は神級だし、このフィールドだと準備運動にもならないかな。チョコに万が一がないように警戒はするけど」
飛び出してきたモンスターは敢えなく消された。早業だった。
「師匠って呼んでもいいですか?」
「むしろ本名教えるから呼び捨てにして」
「やです」
「なんで」
真顔で聞かないで欲しい。
「ところでチョコはもう帰省した? というか実家どこ? って、聞いてもいい?」
「はい。帰省しましたよ。実家は関東です」
「じゃあおそらくそんなに遠くないな」
「Nさんがどこに住んでるのか知らないですけど、僕の実家は関東でも田舎の方なのできっと遠いですよ」
「小旅行も悪くない」
「来ないで」
クスクス笑って受け流す。
……まだリアルで会う勇気なんてない。
もしフェロモンの相性が良かったら、ころっといっちゃいそうで怖い。
「夏がダメなら冬はどう?」
「それこそ追い込み時期なんじゃ?」
「これでも俺アルファだし、多分心配はいらないよ」
緩く微笑まれて、思いがけず見惚れてしまった僕は、頭を軽く振って気を取り直し、光星花を探す。
夜空には三日月が輝いて、そのまわりを小さな星々が彩っている。
暗い方が探しやすいからちょうど良かった。
広い野原を見渡すと僕達以外にもクエスト中と思しき人達がちらほらいる。
七月も終わりだからなあ。
Nさんはサクサク敵を倒して、僕は仄かな花の光を見つけていく。
Nさんくらい簡単に倒せたら気持ち良いだろうなあ。
結果、光星花が花束になるのにそんなに時間はかからなかった。
光星花は摘んでから一晩だけその光を灯している。あとはクエスト達成のためになるべく早くはじまりの街まで戻るだけ。
FTOの世界では七月に光の灯る光星花を贈られたら幸せになると言われてるから告白やプロポーズ、贈り物に使われたりするのだ。貴重だからクエスト報酬も高額だし。
と思ったら、はじまりの街のレストランでNさんに光星花をもらった。
いつの間に摘んでたんだ。
◇
「久しぶりだね」
「FTOでもたまにしか遊べなかったからな」
「朔、背伸びた?」
「成長期みたい」
「いいなー。羨ましい」
幼馴染の朔は同い年のベータ男子だ。
「……恋人出来た?」
「颯は?」
「卒業から夏休みの間で出来ると思う?」
「その言葉そのまま返す。と言いたいところだけど、出来るやつは出来るみたいだよ。まあ、俺じゃないけど」
Nさんとの関係は少しずつ進展してる……けど、まだ恋人じゃない……。
僕は今、Nさんと共に来た星の野原というFTOのフィールドで、光星花と呼ばれる花を探している。
夜になると仄かに青紫に光るので、見つけやすい。けど、まばらにしか咲いていない。
「四月には一面に咲くのに、七月限定クエストだから集めるのが大変なんだよな」
「この度はお付き合いいただきありがとうございます」
「終わったら食事に行こうな」
「どうしようかな」
「頑張ったご褒美に奢るから」
「ゴチです!」
さすがトップランカーは違うや。
FTOでは食事でもちょっとだけ経験値がたまるらしくて、Nさんはよく経験値が増えやすい食事に誘ってくれる。
「でも受験生なのにゲームしてて良いんですか?」
「成績も悪くないから平気」
「もってなんだ。もって」
ふふっと笑って僕の後ろをついてくるNさんに構うことなく、光星花を摘む。花束にしなくちゃいけないから、それなりに集めないといけない。
僕が集中して摘み始めると、Nさんが周りを警戒しだした。
夜は影のモンスターが飛び出してくるから、気が抜けない。
それに、Nさんはもうだいぶ前にこのクエストはクリアしたらしいけど、僕はまだ適正レベルに少し足りない。
これは七月限定クエストだからやりたいってなやんでた僕に、Nさんが護衛を申し出てくれたから出来た背伸びだ。
「光星花が一面に咲いたところも見てみたいです」
「じゃ、四月になったらまた来よう」
四月になってもこうしてNさんとFTOをプレイしてるんだろうか。
まだまだ先のことで想像もつかない。
「おっと」
「瞬殺ですか……」
「ま、複数のジョブを極めたレベルカンストで、武器と防具は神級だし、このフィールドだと準備運動にもならないかな。チョコに万が一がないように警戒はするけど」
飛び出してきたモンスターは敢えなく消された。早業だった。
「師匠って呼んでもいいですか?」
「むしろ本名教えるから呼び捨てにして」
「やです」
「なんで」
真顔で聞かないで欲しい。
「ところでチョコはもう帰省した? というか実家どこ? って、聞いてもいい?」
「はい。帰省しましたよ。実家は関東です」
「じゃあおそらくそんなに遠くないな」
「Nさんがどこに住んでるのか知らないですけど、僕の実家は関東でも田舎の方なのできっと遠いですよ」
「小旅行も悪くない」
「来ないで」
クスクス笑って受け流す。
……まだリアルで会う勇気なんてない。
もしフェロモンの相性が良かったら、ころっといっちゃいそうで怖い。
「夏がダメなら冬はどう?」
「それこそ追い込み時期なんじゃ?」
「これでも俺アルファだし、多分心配はいらないよ」
緩く微笑まれて、思いがけず見惚れてしまった僕は、頭を軽く振って気を取り直し、光星花を探す。
夜空には三日月が輝いて、そのまわりを小さな星々が彩っている。
暗い方が探しやすいからちょうど良かった。
広い野原を見渡すと僕達以外にもクエスト中と思しき人達がちらほらいる。
七月も終わりだからなあ。
Nさんはサクサク敵を倒して、僕は仄かな花の光を見つけていく。
Nさんくらい簡単に倒せたら気持ち良いだろうなあ。
結果、光星花が花束になるのにそんなに時間はかからなかった。
光星花は摘んでから一晩だけその光を灯している。あとはクエスト達成のためになるべく早くはじまりの街まで戻るだけ。
FTOの世界では七月に光の灯る光星花を贈られたら幸せになると言われてるから告白やプロポーズ、贈り物に使われたりするのだ。貴重だからクエスト報酬も高額だし。
と思ったら、はじまりの街のレストランでNさんに光星花をもらった。
いつの間に摘んでたんだ。
◇
「久しぶりだね」
「FTOでもたまにしか遊べなかったからな」
「朔、背伸びた?」
「成長期みたい」
「いいなー。羨ましい」
幼馴染の朔は同い年のベータ男子だ。
「……恋人出来た?」
「颯は?」
「卒業から夏休みの間で出来ると思う?」
「その言葉そのまま返す。と言いたいところだけど、出来るやつは出来るみたいだよ。まあ、俺じゃないけど」
Nさんとの関係は少しずつ進展してる……けど、まだ恋人じゃない……。
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