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「は~……凄かった……」
不思議な高揚感に包まれたまま、ドラゴンの羽ばたきでふわりと地上に着き、胸をなでおろした。
FTOでドラゴンを呼べるようになったというNさんに、空中遊泳に連れて行ってもらい、今帰ってきたところだ。
地上で見る景色とはまるで違う眺めと体感に、VRだってわかっているはずなのに、感動が止まらなかった。
「楽しんでもらえたみたいで良かった。また空を飛びたくなったらいつでも言って」
僕を抱えてドラゴンからおろしてくれたNさんが、そのまま僕をぎゅっと抱きしめた。
「ちょ、ちょっと…! スキンシップ禁止です!」
「意地悪言うなよ……」
「離してーっ」
僕は腕を抜いてパタパタと振ったけど、Nさんはそんなのお構いなしで僕を抱き締めて、頬擦りしている。
「チョコ……リアルでもこうして抱き締めたい。本名を呼びたいし、俺の名前も呼んで欲しい。俺は根崎直弥。二人きりの時は直弥って呼んで?」
「な……直弥、さん」
「うん。いいな。想像してたより何倍もいい」
「僕は……颯です。苗字はもっと仲良くなったら教えます」
「颯! 嬉しいよ。教えてくれてありがとう」
抱き締められたまま見上げた先の幸せそうな笑顔を見て、あんまり気を張るのもやめようとふと思う。
近い距離にどうしても心臓は高鳴るけど、もう少し力を抜いてみても良いかもしれない。
VRの中ではフェロモンに左右される事がないからこそ、わかることがあるような気がした。
◇
「チョコの恋人候補のNです。よろしく、新月くん」
「あくまでも候補だよ!」
「そんなに照れるなよ」
直弥さんが僕の肩を引き寄せて、こめかみにキスをする動作は素早くて、避けることも出来ない。
「なるほどな。この前話した時のチョコの反応はこういう事だったのか」
テーブルを挟んで向かいに座った新月……朔は腕を組んだまま、射抜くような視線で直弥さんを見た。
「チョコを泣かせるような事はするなよ。あんたを敵に回したら面倒そうだし」
「泣かせるとしたら、嬉し泣きだけだな。悲しませるようなことはしない。だから敵になることはないはずだけど、もし俺とチョコを引き離すような事があれば、全力で対応するからそのつもりで」
「分かった」
二人が握手をする。
けど、二人とも顔が怖い……。
はじまりの街の広場を朔と歩いてたら直弥さんに声をかけられて、そのまま流れで広場のカフェに入ったんだけど、この判断は間違いだったんだろうか……。
握手をしたあと、その手を痛そうに摩る二人を見ながら、何とも言えない気持ちになる。
「で、二人はリアルで会ったりしてるのか?」
朔の問いかけに、直弥さんが首を振る。
「本名を教え合ったばかりだし、リアルで会うのはまだ先かな。俺はいつでもいいんだけど」
「だってフェロモンの相性が悪かったらとか、もしくは良過ぎたらとか考えちゃって……」
「チョコ……。俺達はアルファとオメガだから、フェロモンからは逃れられないけど、どうしても駄目とかでなければ、俺は諦めないからな」
真剣に見つめる瞳に、僕の鼓動がまた跳ねた。
「Nさん……」
「チョコ、リアルで会えたら俺の気持ちを伝えるよ」
「はいはい。そこまででお願いします」
僕の手を取った直弥さんは、朔の言葉に眉を顰めた。
「VRだから威圧のフェロモンも出せないんだよな。残念だ」
「出せたとしても、そう簡単に威圧のフェロモンなんか出して良いのか? 俺よりチョコの方が影響受けそうだけど」
「もちろんチョコにあてないようにコントロールする」
「出来るのか?」
「上位アルファを見くびるな」
なんかバチバチしてるな、この二人……。
◇
不思議な高揚感に包まれたまま、ドラゴンの羽ばたきでふわりと地上に着き、胸をなでおろした。
FTOでドラゴンを呼べるようになったというNさんに、空中遊泳に連れて行ってもらい、今帰ってきたところだ。
地上で見る景色とはまるで違う眺めと体感に、VRだってわかっているはずなのに、感動が止まらなかった。
「楽しんでもらえたみたいで良かった。また空を飛びたくなったらいつでも言って」
僕を抱えてドラゴンからおろしてくれたNさんが、そのまま僕をぎゅっと抱きしめた。
「ちょ、ちょっと…! スキンシップ禁止です!」
「意地悪言うなよ……」
「離してーっ」
僕は腕を抜いてパタパタと振ったけど、Nさんはそんなのお構いなしで僕を抱き締めて、頬擦りしている。
「チョコ……リアルでもこうして抱き締めたい。本名を呼びたいし、俺の名前も呼んで欲しい。俺は根崎直弥。二人きりの時は直弥って呼んで?」
「な……直弥、さん」
「うん。いいな。想像してたより何倍もいい」
「僕は……颯です。苗字はもっと仲良くなったら教えます」
「颯! 嬉しいよ。教えてくれてありがとう」
抱き締められたまま見上げた先の幸せそうな笑顔を見て、あんまり気を張るのもやめようとふと思う。
近い距離にどうしても心臓は高鳴るけど、もう少し力を抜いてみても良いかもしれない。
VRの中ではフェロモンに左右される事がないからこそ、わかることがあるような気がした。
◇
「チョコの恋人候補のNです。よろしく、新月くん」
「あくまでも候補だよ!」
「そんなに照れるなよ」
直弥さんが僕の肩を引き寄せて、こめかみにキスをする動作は素早くて、避けることも出来ない。
「なるほどな。この前話した時のチョコの反応はこういう事だったのか」
テーブルを挟んで向かいに座った新月……朔は腕を組んだまま、射抜くような視線で直弥さんを見た。
「チョコを泣かせるような事はするなよ。あんたを敵に回したら面倒そうだし」
「泣かせるとしたら、嬉し泣きだけだな。悲しませるようなことはしない。だから敵になることはないはずだけど、もし俺とチョコを引き離すような事があれば、全力で対応するからそのつもりで」
「分かった」
二人が握手をする。
けど、二人とも顔が怖い……。
はじまりの街の広場を朔と歩いてたら直弥さんに声をかけられて、そのまま流れで広場のカフェに入ったんだけど、この判断は間違いだったんだろうか……。
握手をしたあと、その手を痛そうに摩る二人を見ながら、何とも言えない気持ちになる。
「で、二人はリアルで会ったりしてるのか?」
朔の問いかけに、直弥さんが首を振る。
「本名を教え合ったばかりだし、リアルで会うのはまだ先かな。俺はいつでもいいんだけど」
「だってフェロモンの相性が悪かったらとか、もしくは良過ぎたらとか考えちゃって……」
「チョコ……。俺達はアルファとオメガだから、フェロモンからは逃れられないけど、どうしても駄目とかでなければ、俺は諦めないからな」
真剣に見つめる瞳に、僕の鼓動がまた跳ねた。
「Nさん……」
「チョコ、リアルで会えたら俺の気持ちを伝えるよ」
「はいはい。そこまででお願いします」
僕の手を取った直弥さんは、朔の言葉に眉を顰めた。
「VRだから威圧のフェロモンも出せないんだよな。残念だ」
「出せたとしても、そう簡単に威圧のフェロモンなんか出して良いのか? 俺よりチョコの方が影響受けそうだけど」
「もちろんチョコにあてないようにコントロールする」
「出来るのか?」
「上位アルファを見くびるな」
なんかバチバチしてるな、この二人……。
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