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「ああ。本当にリュシアンが連れてきたわけじゃなくて良かった。毎回誘惑のフェロモンを撒き散らして迷惑で不快だし、私もディーンも我慢の限界だったんだ」
ディーンさんもαだ。僕はただ甘い匂いだと思っていたけど、誘惑のフェロモンだったなんて。
「リュシアンに誘惑されるなら本望だけどな」
「僕は発情期がまだだから、うまくフェロモンも出せない……」
「発情期が来たら、誘惑してくれるか?」
「え! えーと、それはどうかなあ?」
顔が火照ってきて、僕を覗うように見る視線から目を逸らした。
「考えておいてくれ」
カミルは楽しそうに破顔する。
その顔はズルい……!
◇
医務室の先生が言うには、まだ身体の連動がうまくいってないんだろうとのことだった。
軽い治癒魔法をかけてもらい、今は医務室のベッドで横になっている。
「リュシアン、私はもう行くから、いい子で寝てるんだよ」
「授業始まっちゃうよ、早く行って」
額にそっとキスされて、僕は額を押さえた。
カミルが出て行って、しばらくしたら予鈴が鳴る。
この授業の時間だけ休んだら、次の授業は僕も出るんだ。
先輩でαのカミルとはもちろん違うクラスだけど。
一週間も休んじゃってるから、だいぶ遅れちゃってる。
ゲームでは、ミニゲームで授業をこなしていたけど、ここは現実の世界。
しかも僕は悪役な公爵令息。
今までこの世界で生きてきた記憶と経験があるけど、前世の記憶を取り戻した今、自分も魔法が使えるのは、やっぱり不思議でならない。
と言っても、得意ではないんだけどね。
魔法理論の授業なんて地獄だし、実技も不安だらけである。
簡単な生活魔法を使ってみて問題はなかったけど、本格的な攻撃や防御の魔法がうまく繰り出せるか自信がない。
でも前世では叶わなかった学園生活を楽しめる。
僕はそれが嬉しかった。
今のところ僕に甘く優しいカミルだけど、この先もそれが続くとは限らない。
ノアは王太子ルートに入っている。
油断は禁物だ。
僕に出来ることは、まずはいつ発情期が来ても、カミルが相手をしてくれなくても大丈夫なように、よく効く抑制剤を探す事から始めようかな。
使ってみないと効果が不確かなのがネックだけど。
ディーンさんもαだ。僕はただ甘い匂いだと思っていたけど、誘惑のフェロモンだったなんて。
「リュシアンに誘惑されるなら本望だけどな」
「僕は発情期がまだだから、うまくフェロモンも出せない……」
「発情期が来たら、誘惑してくれるか?」
「え! えーと、それはどうかなあ?」
顔が火照ってきて、僕を覗うように見る視線から目を逸らした。
「考えておいてくれ」
カミルは楽しそうに破顔する。
その顔はズルい……!
◇
医務室の先生が言うには、まだ身体の連動がうまくいってないんだろうとのことだった。
軽い治癒魔法をかけてもらい、今は医務室のベッドで横になっている。
「リュシアン、私はもう行くから、いい子で寝てるんだよ」
「授業始まっちゃうよ、早く行って」
額にそっとキスされて、僕は額を押さえた。
カミルが出て行って、しばらくしたら予鈴が鳴る。
この授業の時間だけ休んだら、次の授業は僕も出るんだ。
先輩でαのカミルとはもちろん違うクラスだけど。
一週間も休んじゃってるから、だいぶ遅れちゃってる。
ゲームでは、ミニゲームで授業をこなしていたけど、ここは現実の世界。
しかも僕は悪役な公爵令息。
今までこの世界で生きてきた記憶と経験があるけど、前世の記憶を取り戻した今、自分も魔法が使えるのは、やっぱり不思議でならない。
と言っても、得意ではないんだけどね。
魔法理論の授業なんて地獄だし、実技も不安だらけである。
簡単な生活魔法を使ってみて問題はなかったけど、本格的な攻撃や防御の魔法がうまく繰り出せるか自信がない。
でも前世では叶わなかった学園生活を楽しめる。
僕はそれが嬉しかった。
今のところ僕に甘く優しいカミルだけど、この先もそれが続くとは限らない。
ノアは王太子ルートに入っている。
油断は禁物だ。
僕に出来ることは、まずはいつ発情期が来ても、カミルが相手をしてくれなくても大丈夫なように、よく効く抑制剤を探す事から始めようかな。
使ってみないと効果が不確かなのがネックだけど。
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