悪役令息は未来を憂う

hina

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王城の入口あたりで、カミルが僕を横抱きにした。

「急ごう」
「あっ、うんっ」

前が張り詰めている。ちょっとの刺激でもイってしまいそうになって、涙が浮かぶ。

「くっ。煽られる」

僕を抱く手に力が込められるのを感じながら、僕もカミルに身体を寄せる。

「そう。しっかり掴まってて」

カミルが歩く速度を早める。僕は熱い息を吐いて、身体を硬くしていた。





「あっ! あっ……ん、あぁっ! はっ、はぁ……」

後ろにみっちりカミルが埋め込まれていて、僕は浅い呼吸を繰り返した。

「リュシアン、噛みたい」
「やっ、それは、ダメっ」

ネックガードは、僕の魔力を流すことで外れるようになってる。
カミルはネックガードの周りに吸い付きながら、腰を揺らす。


「で、出るっ」
僕の何度も吐き出した白濁は薄くなっていて、量も少なかった。

発情期に入って四日目の夕方。発情は段々落ち着いてはきたものの、まだ抜け切っていない欲に翻弄されていた。

「あぁ! ん!」

奥に当たるカミルを締め付けると、ただでさえ大きいものが一際大きくなったような気がした。

快感は絶え間なくて、カミルのフェロモンでのぼせあがりそうだ。

「はっ……はぁ。リュシアン、愛してる」

カミルの腰の動きが早くなって、胎の奥が熱くなる。

「あっ……」

僕から離れたカミルが僕の隣にどさりと横になって、僕の髪を撫でてきた。

「噛みたいよ、リュシアン。なぜ拒むんだ?」
「だって……」

言葉に詰まっていると、軽く触れるキスをされる。

「何か、不安?」
こくりと頷くと、カミルが悲しそうな顔をする。

「私は信頼に値しないか?」
「そ、そんなことない」
「ならば……」
「次……次の発情期まで待って?」
「次の発情期には噛ませてくれるか?」
「う、うん……」

拒みきれなくて、思わず了承してしまう。
もう引き返せない。
覚悟するしかない。

ゲームのシナリオと現実は違っている。
だから、きっと大丈夫。

そう思いたい。


僕は柔らかく抱き締めてくるカミルに身を任せ、素肌の温もりを感じていた。





朝、学園に登校すると、校舎前に人だかりが出来ていた。
何かあったのかと思ってその場に近付くと、カミルとディーンさんがいることに気がついた。

「カミル!?」
「リュシアン! リュシアンはなんともないな」

僕の声に気付いて僕を見たカミルが、僕の全身を確認してほっとしたように笑った。
僕に何かあったら、影の人がカミルに魔法で伝魔鳥を飛ばすから、僕のことは知ってるはずだけど、実際に見て安心したのだろう。
カミルは僕を抱き締めて、僕のフェロモンを吸い込んでいる。

首筋にかかる息がくすぐったくて身を捩ると、ディーンさんが取り押さえていた人を引っ立てた。

その一連の動作を前にも見たことがある。

「あれは……」

ノアだ。

「リュシアンは見なくていい」
「でも」

僕を隠すようにカミルは僕を強く抱き締める。

「魔法で襲われたんだ。リュシアンが一緒じゃなくて良かった。もう魔法を使えないように鍵付きの魔力封じの腕輪を装着させたし、ディーンの他にも学園の警備が駆けつけたし、私は何種類かの魔法防御をかけているから」
心配することはないよ。と背中を摩られた。

「……接近禁止令を破って近付いてきたってことだよね」
「そうだな。でもこれで彼は確実に処罰されるだろう。国外追放になるかもな」
「もし彼が国外追放……になったら、国境の森じゃなくて、せめて隣国の街か村まで送り届けるように言ってくれる?」
ゲームでの僕の最後を思い出して、思わずそう言っていた。
「分かった。リュシアンは優しいな」
「そんなことないよ……」

目覚めが悪いのはイヤだし、ノアもこの世界で現実を生きて欲しい。
ただ、それだけ。

布を噛ませられて、喋れないノアはディーンさんに連れられていったようだ。

「リュシアン、教室まで送っていく」
「うん。ありがとう」

カミルはしっかりと僕と手を繋いで歩き出した。
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