悪役令息は未来を憂う

hina

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「この教室は……歴史研究部だって。少し見ていこう?」
今日は学園祭! 時間を合わせて、カミルと一緒に広い校内を見て回る。
僕達の学校は八歳から二十歳までの生徒が通っている規模の大きな王立の学園で、生徒は王侯貴族から平民まで幅広い。

「あ、王家の成り立ちについてまとめられてるよ。あれ、カミル、インタビュー受けた?」
「……そういえば、色々聞かれたな」
「え、そういう事は教えてよ」
「ごめん」
「ふふ。いいよ、別に。……初代国王陛下は神様から直接祝福を授かったとされているαの男性だったんだよね」
「ああ。番のΩの女性と共に祝福を授かったと伝えられている」

この国、ランシートは国土が広いから、その分人も多い。
貴族も他の国に比べると多くて、覚えきらないほどで。
顔、名前、領地の特色、爵位など、最低限の情報でも全て頭に入れるのは骨が折れる思いだった。

小さな頃から貴族同士での交流はあったけど、正式な社交界デビューは十五歳。
僕はカミルの婚約者として注目されてたっけ。
公爵家子息だし、失敗出来なくてすっごく緊張したのを覚えてる。
みんなの前でカミルとダンスを踊ったんだ。


「一から国を造るって大変だったよね、きっと」
「そうだな。苦労の連続だったんじゃないか」
「でも守って繁栄させてくのも大変だよね」
「リュシアンがいてくれるなら、私はいくらでも頑張れるよ」
「無理は禁物だよ?」
「リュシアンに癒されるから、問題ない。だから私の隣にいて。でないと、国を滅ぼすかもしれないよ?」
「じょ、冗談……」
「さあ、どうかな」

万事安泰な未来はどこですか……!?






「カミル、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう、リュシアン」

晩秋。カミルの十九回目の誕生日。ノアが国外追放された今でも使っている学園の特別室で、いつもよりちょっと豪華な昼食をいただく。

「これ、プレゼント……」
でもその前に、包装された細長い箱をそっと渡す。

「ありがとう。開けてもいいか?」
「うん。気に入ってもらえるかわからないけど……」
「薄紫色の万年筆か、嬉しいよ」
カミルが箱から万年筆を取り出してまじまじと見つめた。

「普段使えるものがいいかなあって。色々悩んだんだけど」
「毎日使わせてもらう。大事にする」
「うん。喜んでもらえたみたいで良かった」
「あとはリュシアンからのキスが欲しいな」
「なっ! しません」
「つれない」
「つれなくて結構」

思いっきり顔を背けて腕を組む。

「機嫌を直して」

そしてカミルは思いついたように席を立ち、プレゼントのお礼と称して濃厚なキスをしてきた。


ディーンさんもいるのに、まったく油断ならない!
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