悪役令息は未来を憂う

hina

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「リュシー。元気してる?」
「ユアン殿下。はい、元気ですよー」

金髪碧眼のα男性、ユアン・ダルジェン殿下は隣国ダルジェンの第三王子殿下だ。
この国に留学中のユアン殿下は、カミルと同じクラスで学んでいる。

「私のリュシアンに親しげに話しかけるな」
「狭量だなあ。ついこの間僕の国に罪人を一人放遂したのは、どこの国の王太子だったっけ」
「決めたのは私ではない」
「そういう問題じゃないんだけど」

ノアが追放されて連れて行かれたのは、ユアン殿下の国だ。
ダルジェンは中央山脈のお膝元にあり、自然環境が厳しい国として知られている。
でも絶景の宝庫らしい。

いつか行ってみたいなあと思いつつ、二人のやりとりを見守る。

「そういうわけで、今日の昼食は僕もご一緒するから、よろしくね」
「え!? あ、はい」
「私とリュシアンの時間を邪魔するな」
「護衛もいるのにね。カウントに入ってないのかな」
「あはは……」

イライラしてるカミルだけど、威圧のフェロモンは出していないから、大丈夫……なのかな。
あとが怖いなあ……。

席につき、さっそく運ばれてきた柑橘のドレッシングがかかったサラダを咀嚼していると、ユアン殿下が深刻な顔で話し始める。

「最近、国の西側で、災害級の魔獣の目撃例が何件か上がってるらしくて」
「ダルジェンだけで対応出来るのか?」
「我が国にも竜騎士団があるし、宮廷魔法師に一人、数年前に特級魔法師になった男がいる。彼が出ればどうにか……」
「特級? 事実だったのか」
「事実だよ。認定試験が大変だったらしい」
「だろうな」

特級魔法師なんて、想像上の存在じゃないのか……。
上級でさえ、合格率がとても低い事で有名なのに。

「ランシートの協力が必要なら言ってくれ」
「ああ、その時は頼む」

犠牲が出ない事を心で祈る。


僕はまだまだ続く二人の話に相槌を入れながら、食事を続けた。
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