悪役令息は未来を憂う

hina

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「うーん、どうしようかなあ」
「何を悩んでるんだ?」
「ノート。どっちがいいかなあって」

タルトを食べた後、近くの文房具店に来ていた。
二冊のノートを手に持って、どちらを買おうか決めかねる。

翠のノートは装飾が見事なもの。紺のノートは字が綺麗に書ける魔法のノート。
どっちにしよう。

「どちらも購入しよう」
「え、カミル、待って」
カミルは二冊とも僕から奪って会計してしまった。

「ノートは授業で使うものだし、ストックがあっても困らないだろう?」
「とは言っても」
「今日の記念に」
「あ、ありがとう」
「うん。リュシアンが喜んでくれたなら嬉しい」
「えへへ」

ノートが入った袋はカミルがそのまま持ってくれた。
僕はカミルの腕をそっと掴んで、顔を寄せた。

カミルは優しい瞳で僕を見下ろしていた。







「風が気持ちいいね」
王都の真ん中。王城が聳えるテーネの丘から眼下の街を眺める。
「城に入らなくていいのか?」
「うん。ここからでも眺めはいいし。デートだし」
王城の前の広場にはたくさんの人がいる。
みんなこの景色を見に来ているんだ。


「毎日見ている景色でも、リュシアンが一緒だと心にくるものがあるな」
「感動してる?」
「ああ」

後ろからぎゅっとされて、カミルの匂いが強くなる。
今日はなんだかフェロモンを凄く感じるな。

と、思ったら、顔が一気にカッとなった。


「はっ……」
膝から力が抜けてカミルにもたれかかってしまう。
「リュシアン? これは……フェロモンが溢れてる。城に入ろう。歩けるか?」
「うん。うん。早く行こ」

息が上がって、脈が激しくなる。後孔がきゅっと締まった。

経験したことのない身体の変化に、僕は息をのんだ。
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