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1.フィルシールド誕生
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しおりを挟む—・・・・・・ガタンッ、コトッ!・・・・・・ガタッ!ットン! ッ!カッ!カララッララー・・・・・・—
おぉ、市壁が見えてきた。漸く王都に帰って来たんだな。
「ねえ、サーシャ。見て、フィルのこの寝顔。とっても可愛らしいと思わない?まるで、大聖堂の祈りの間にある “天使像” の様ね。」
また、アンリエッタが微妙な褒め方をしているな。
フィル君は、アンリエッタによく似ている。
だから、見方によっては “自画自賛” とも捉えられてしまうだろう。
まぁ、当の本人の方は、欠片もそう思ってはいないだろうが。
それよりも・・・・・・・・・
「今日は関所がかなり混んでいるな。いくら今が、混みやすい時間帯である昼の7刻の少し前だとしても、流石にこれは、混みすぎではないか?」
そう、オルフェリオス義兄上の言う通り、今日の関所は混みすぎている。
いつものこの時間帯であれば、王都市壁東側関所はせいぜい十数台の馬車が停まっているだけだ。
商人や冒険者等が泊まる宿も部屋なら十分足りただろう。
因みに、これが、昼の7刻を過ぎればもっと混みだすが、今日ほどまでは行かない。
だが、今の王都市壁東側関所は、どう少なく見積もっても百は軽く越えているであろう膨大な数の馬車が停まっていて、関所前の宿はどう考えても部屋が不足していることだろう。
僕たちの居なかった2週間、王都ではいったい何事が起きたのだろうか?
不安だな。ソルトの奴が、また何かやらかしたのだろうか?
「あぁ、そう言えば、今、王都では空前絶後の勇者様ブームが発生しているのだったな。うちの派閥の商人達もこぞって、活動しているみたいだったな。」
あぁ、成る程。
フィル君の名前のことを考えると、何となくこの騒ぎも納得できる。
ベイルマート王国初代国王であるフィルシールド陛下は、国内外問わず多くの国と地域で認められた勇者様だったはずだ。
だが、彼の生涯を詳しく書いた書物などは、全くと言っても差し支えない程、発見されていないため、その存在は創神教の勇者記録とベイルマート王国建国記などの国宝や聖遺物指定された物でしか確認できない。
その為か、一部の国や地域では、彼の存在を否定しているところもあるそうだ。
「フフ、ナイスです、お兄様。これでフィルも立派な王族ですね。これだけ多くの人が大切に思っている初代陛下の名前を継いだのです。きっと優秀な王子様に成るでしょう。楽しみですね、サーシャ。」
・・・・・・・・・本当に、アンリエッタの想像力には敵わないな。きっと、アンリエッタの頭の中では、フィル君がおとぎ話に出てくる様な “白馬の王子様” とやらにでも成っていることだろう。
そう言えば、幼い頃のアンリエッタは “白馬の王子様” に憧れていたな。
まぁ、そんな王子は、コーナウドぐらいしかいなかったが。
・・・・・・・・・?
そう言えば、謎だよな、あいつも。
ソルトの奴と同腹の兄弟だと言うのに、性格が全くと言って良いほど似ていない。
『面倒くさがりで、不真面目、サボり癖もある“駄目人間の代表”と称されるソルトラルド』
と
『爽やかで、努力家、文武両道な“魔法師界の貴公子”と呼ばれるコーナウド』
どう考えても似て・・・・・・・・・あっ、そうか!
コーナウドには、身近にとても素晴らしい反面教師が居たじゃないか。
成る程、そう言うことか。
納得した。
_____________________
— その頃のナイトパレス —
「の、のぅ、ジーク。今、誰かが余について酷いことを考えているような気がしたのじゃが・・・・・・・・・。!何故、その様に何当たり前のことを聞いてくるんだ、と言わんばかりの顔をする?」
「今更ではないですか?陛下の本性を知る者であるならば、皆がその様に考えていてもおかしくはないことですから。」
「ぬ、ぬぅ。余は国王なのじゃが。扱いがちと、酷すぎないか?」
「それは、日頃の行いが原因でしょう。そう思うなら、これからの生活を改めるべきであると進言致します。」
「そ、そうか・・・・・・・・・。」
_____________________
市壁前の検問の列に並んでから、3刻は過ぎたのではないだろうか。
この季節は急に日が傾くから、日も暮れて辺りが暗くなり始めている。
僕たちが乗車している馬車も漸く検問の順番が回ってきて、市壁の中へ入るところだ。
「!し、市民証又は、身分証明書等を確認させてください。」
この馬車の外装を見れば、まぁ、馬車に乗っている者が、公爵以上の爵位を持つ家柄の者だということは分かっただろう。それでも確認しなくてはいけないのだから、衛兵とは辛い仕事だな。
「ほいっ!これで良いかな?」
兄上、それは御者の仕事です。勝手なことしないで下さい。
「!?は、はい!た、たった今確認致しました。一応人数確認を・・・・・・・・・。も、もしかして、そちらの方はフィルシールド殿下でしょうか?」
ほら、衛兵も驚いているじゃないか。驚き過ぎたのか、対応の言葉が間違っているのだが、それはまぁ、さておいて、と・・・・・・・・・。
ん?フィル君の確認もするのか?
いやまぁ、今日の列も一応フィル君関係のものだから気になるのかな?
はっ!
そう言えば、フィル君の身分は第一王子に当たるんだった。
すっかり忘れていた。
「うん!そうだね♪」
・・・・・・・・・兄上、随分と楽しそうだな。
って、衛兵!フィル君に見惚れている所悪いが、仕事をしてくれ。
「ほわーぁ。はっ!か、確認できました!どうぞ、お通り下さい。」
あ、焦ってるな。
王族相手にやらかしたようなものだからな。
気の毒だな、この衛兵。
「んー、どうもどうも。」
漸く王都内に入れたようだ。
フィル君は、昼間の休憩からずっと眠っているようだ。
アンリエッタが、フィル君の頬を突っついて楽しんでいる。
「もぅ、寝る子は育つと言うものね。大きく育ったフィル。・・・・・・・・・きっと、格好いいわね。ねぇ、そう思うでしょ?」
誰に問うているんだ?
というか、大きく育ったって、幾らなんでも気が早すぎだぞ。
「フフフ、フィル君は可愛らしく成りそうだね♪ところで、僕の甥か姪には、いつになったら逢えるのかな?サーシャ。」
!?
「あ、あああ兄上!?な、ななな何を言っているのですか!?」
「フフ、フィルに弟か妹が出来るのが楽しみですね。ねぇ、フィル?」
「うーう。」
なっ、フィル君は起きていたのか!
じゃなくて!
何を言い出すのですか兄上。
僕が子どもを産むなんて・・・・・・・・・う、うわぁー、そんな、そんなぁぁぁぁあああぁぁぁ・・・・・・・・・
「あーあ、もう、サーシャったらぁ、顔が真っ赤ですよ?ハァー、これでは、ソル君に何と言ったら良いのでしょうか・・・・・・・・・。」
これは、誰がどう考えてもアンリエッタが悪いじゃないか。兄上もだけど!
「うーうッ、あーアーう?」
あぁ、何故だろう。
フィル君の言った言葉が “サーシャ、大丈夫?” に聞こえたみたいだ。
これは、気のせいだろうか?
もし、気のせいではないのだとしたら、こんなに悪戯好きな母親と駄目人間の父親を持つ子なのに、なんて優しい子なんだ。
“人を育てるのは環境だ” と言うし、二人にはフィル君の教育係を含めた一通りのことは任せられないな。
よし!決めた。
フィル君の教育係は、リーナさんに選出してもらおう。
フィル君には、優秀で、性格の良い人材を宛ててもらわないとな。
「(フフフ、大丈夫だ。僕に任せてくれ!)」
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