異世界物語 ~転生チート王子と愉快なスローライフ?~

星鹿カナン

文字の大きさ
35 / 196
1.フィルシールド誕生

1-014,15

しおりを挟む

 —・・・・・・ガタンッ、コトッ!・・・・・・ガタッ!ットン! ッ!カッ!カララッララー・・・・・・—


 おぉ、市壁が見えてきた。ようやく王都に帰って来たんだな。

「ねえ、サーシャ。見て、フィルのこの寝顔。とっても可愛らしいと思わない?まるで、大聖堂の祈りの間にある “天使像” の様ね。」


  また、アンリエッタが微妙な褒め方をしているな。

  フィル君は、アンリエッタによく似ている。
  だから、見方によっては “自画自賛じがじさん” とも捉えられてしまうだろう。
 まぁ、当の本人の方は、欠片もそう思ってはいないだろうが。

 それよりも・・・・・・・・・

「今日は関所がかなり混んでいるな。いくら今が、混みやすい時間帯である昼の7刻の少し前だとしても、流石にこれは、混みすぎではないか?」

  そう、オルフェリオス義兄上あにうえの言う通り、今日の関所は混みすぎている。

  いつものこの時間帯であれば、王都市壁東側関所イーストサイドはせいぜい十数台の馬車が停まっているだけだ。
  商人や冒険者等が泊まる宿も部屋なら十分足りただろう。

  因みに、これが、昼の7刻を過ぎればもっと混みだすが、今日ほどまでは行かない。

  だが、今の王都市壁東側関所イーストサイドは、どう少なく見積もっても百は軽く越えているであろう膨大な数の馬車が停まっていて、関所前の宿はどう考えても部屋が不足していることだろう。

  僕たちの居なかった2週間、王都ではいったい何事が起きたのだろうか?
  不安だな。ソルトの奴が、また何かやらかしたのだろうか?

「あぁ、そう言えば、今、王都では空前絶後くうぜんぜつごの勇者様ブームが発生しているのだったな。うちの派閥の商人達もこぞって、活動しているみたいだったな。」

  あぁ、成る程。
  フィル君の名前のことを考えると、何となくこの騒ぎも納得できる。


  ベイルマート王国初代国王であるフィルシールド陛下は、国内外問わず多くの国と地域で認められた勇者様だったはずだ。
  だが、彼の生涯を詳しく書いた書物などは、全くと言っても差し支えない程、発見されていないため、その存在は創神教の勇者記録とベイルマート王国建国記などの国宝や聖遺物指定された物でしか確認できない。
  その為か、一部の国や地域では、彼の存在を否定しているところもあるそうだ。


「フフ、ナイスです、お兄様。これでフィルも立派な王族ですね。これだけ多くの人が大切に思っている初代陛下の名前を継いだのです。きっと優秀な王子様に成るでしょう。楽しみですね、サーシャ。」

  ・・・・・・・・・本当に、アンリエッタの想像力には敵わないな。きっと、アンリエッタの頭の中では、フィル君がおとぎ話に出てくる様な “白馬の王子様” とやらにでも成っていることだろう。
  そう言えば、幼い頃のアンリエッタは “白馬の王子様” に憧れていたな。
  まぁ、そんな王子は、コーナウドぐらいしかいなかったが。

 ・・・・・・・・・?
  そう言えば、謎だよな、あいつも。
  ソルトの奴と同腹の兄弟だと言うのに、性格が全くと言って良いほど似ていない。

『面倒くさがりで、不真面目、サボり癖もある“駄目人間の代表”と称されるソルトラルド』 
  と
『爽やかで、努力家、文武両道ぶんぶりょうどうな“魔法師界の貴公子”と呼ばれるコーナウド』

 どう考えても似て・・・・・・・・・あっ、そうか!
  コーナウドには、身近にとても素晴らしい反面教師はんめんきょうしが居たじゃないか。

  成る程、そう言うことか。
  納得した。

_____________________



 — その頃のナイトパレス 王 城  —

「の、のぅ、ジーク。今、誰かが余について酷いことを考えているような気がしたのじゃが・・・・・・・・・。!何故、その様に何当たり前のことを聞いてくるんだ、と言わんばかりの顔をする?」

「今更ではないですか?陛下の本性を知る者であるならば、皆がその様に考えていてもおかしくはないことですから。」

「ぬ、ぬぅ。余は国王なのじゃが。扱いがちと、酷すぎないか?」

「それは、日頃の行いが原因でしょう。そう思うなら、これからの生活を改めるべきであると進言致します。」

「そ、そうか・・・・・・・・・。」



_____________________



  市壁前の検問の列に並んでから、3刻は過ぎたのではないだろうか。
  この季節は急に日が傾くから、日も暮れて辺りが暗くなり始めている。
 僕たちが乗車している馬車も漸く検問の順番が回ってきて、市壁の中へ入るところだ。

「!し、市民証又は、身分証明書等を確認させてください。」

 この馬車の外装を見れば、まぁ、馬車に乗っている者が、公爵以上の爵位を持つ家柄の者だということは分かっただろう。それでも確認しなくてはいけないのだから、衛兵とは辛い仕事だな。

「ほいっ!これで良いかな?」

 兄上、それは御者の仕事です。勝手なことしないで下さい。

「!?は、はい!た、たった今確認致しました。一応人数確認を・・・・・・・・・。も、もしかして、そちらの方はフィルシールド殿下でしょうか?」

 ほら、衛兵も驚いているじゃないか。驚き過ぎたのか、対応の言葉が間違っているのだが、それはまぁ、さておいて、と・・・・・・・・・。

  ん?フィル君の確認もするのか?
  いやまぁ、今日の列も一応フィル君関係のものだから気になるのかな?

  はっ!
  そう言えば、フィル君の身分は第一王子に当たるんだった。
  すっかり忘れていた。

「うん!そうだね♪」

 ・・・・・・・・・兄上、随分と楽しそうだな。
 って、衛兵!フィル君に見惚れている所悪いが、仕事をしてくれ。

「ほわーぁ。はっ!か、確認できました!どうぞ、お通り下さい。」

  あ、焦ってるな。
  王族相手にやらかしたようなものだからな。
  気の毒だな、この衛兵。

「んー、どうもどうも。」

 漸く王都内に入れたようだ。

 フィル君は、昼間の休憩からずっと眠っているようだ。
  アンリエッタが、フィル君の頬を突っついて楽しんでいる。

「もぅ、寝る子は育つと言うものね。大きく育ったフィル。・・・・・・・・・きっと、格好いいわね。ねぇ、そう思うでしょ?」

  誰に問うているんだ?
  というか、大きく育ったって、幾らなんでも気が早すぎだぞ。

「フフフ、フィル君は可愛らしく成りそうだね♪ところで、僕の甥か姪には、いつになったら逢えるのかな?サーシャ。」

 !?

「あ、あああ兄上!?な、ななな何を言っているのですか!?」

「フフ、フィルに弟か妹が出来るのが楽しみですね。ねぇ、フィル?」

「うーう。」

  なっ、フィル君は起きていたのか!
  じゃなくて!
  何を言い出すのですか兄上。
  僕が子どもを産むなんて・・・・・・・・・う、うわぁー、そんな、そんなぁぁぁぁあああぁぁぁ・・・・・・・・・

「あーあ、もう、サーシャったらぁ、顔が真っ赤ですよ?ハァー、これでは、ソル君に何と言ったら良いのでしょうか・・・・・・・・・。」

 これは、誰がどう考えてもアンリエッタが悪いじゃないか。兄上もだけど!

「うーうッ、あーアーう?」

 あぁ、何故だろう。
  フィル君の言った言葉が “サーシャ、大丈夫?” に聞こえたみたいだ。
  これは、気のせいだろうか?

  もし、気のせいではないのだとしたら、こんなに悪戯イタズラ好きな母親と駄目人間の父親を持つ子なのに、なんて優しい子なんだ。
   “人を育てるのは環境だ” と言うし、二人にはフィル君の教育係を含めた一通りのことは任せられないな。

  よし!決めた。
  フィル君の教育係は、リーナさんに選出してもらおう。
  フィル君には、優秀で、性格の良い人材を宛ててもらわないとな。

「(フフフ、大丈夫だ。僕に任せてくれ!)」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

処理中です...