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1.フィルシールド誕生

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  ふあーあ、寝過ぎちゃったなぁ。もう、夜になっちゃってるや。
  あれ、ここどこだろう?
  要塞かな?大きな壁だなぁ。

「!し、市民証又は、身分証明書等を確認させてください。」

 ん?市民証とか身分証明書とかで入れるところなんだ・・・・・・・・・もしかして、市壁とかかな?
  確か、今朝サーシャさんが「王都には、今日中に着くよ。だから、安心してくれ。」って、言っていたからこの壁の先が王都なのかな?

「ほいっ!これで良いかな?」

  あっ、サーシャさんのお兄さんだ。
  って、貴族とかが乗った馬車では、検問とかに対応するのは、御者さんのお仕事に分類されるんじゃ・・・・・・・・・衛兵さんがなんだか、可哀想。

「!?は、はい!た、たった今確認致しました。一応人数確認を・・・・・・・・・。も、もしかして、そちらの方はフィルシールド殿下でしょうか?」

  凄く動揺しているみたい。
  新人さんかな?だとしたら、気の毒だなぁ。
  ・・・・・・・・・って、この中で一番偉いの、もしかして、僕だったりする?

  僕の確認も、って、そりゃ当たり前かぁ。
  僕自身、お披露目もされていないけど第一王子だし、国民が慕う初代国王陛下の名前を継承しているし。

  嫌だなぁ。そんなことで注目されるの。

  もしかしたら、前世の僕も、名前とかで注目されていたのかも。
  なんだか忌避感強いみたいだから。

「うん!そうだね♪」

  なんだか、楽しそうだよねぇ。サーシャさんのお兄さんは。
  衛兵さんに悪いから、御者さんに代わってあげてほしいんだけどなぁ。

  って、あれ?
  衛兵さんがずっと僕の方を見ているんだけど!?
  な、なんだか物凄く怖いよ!

「ほわーぁ。はっ!か、確認できました!どうぞ、お通り下さい。」

  はっ!
  まさか、・・・・・・・・・嫌だ、認めたくない!
  絶対に認めないんだからね!


「んー、どうもどうも。」


_____________________



 ・・・・・・・・・えっと、ここが、王都内かぁ。
  んー、何だろうなぁ。
  予想していた雰囲気とは、全然違うなぁ。

  お母さんの家がある辺りは、中世のヨーロッパみたいな雰囲気だったから、そんな感じなんだと思ってたのにぃ・・・・・・・・・。

  何だろう、これぇ?
  和洋折衷わようせっちゅう?かな。
  東洋風の建物と西洋風の建物が入り交じって建っている。
  結構、不思議な感じがする。


「もぅ、寝る子は育つと言うものね。大きく育ったフィル。・・・・・・・・・きっと、格好いいわね。ねぇ、そう思うでしょ?」


  ねぇ、お母さん。
  その言葉は、誰に言ってるんですか?

  サーシャさんかな?

  そして結構気が早い。
  でも、格好良くは成りたいです。

「フフフ、フィル君は可愛らしく成りそうだね♪ところで、僕の甥か姪には、いつになったら逢えるのかな?サーシャ。」

  ううー、やっぱり “可愛らしく” か。

  絶対格好良くなるもんね。
  僕、頑張る。

「あ、あああ兄上!?な、ななな何を言っているのですか!?」

  あれっ、珍しい。
  サーシャさんが、物凄く慌てている。

  ん?
  お母さんの目が一瞬、怪しく光ったような?

「フフ、フィルに弟か妹が出来るのが楽しみですね。ねぇ、フィル?」

  急にどうしたんだろう?
  まぁ、他に弟妹は欲しいですけど?

うーうそうだね。」

  あっ!
  サーシャさんの顔が真っ赤になった。

  ふむ、成る程。
  お母さんはサーシャさんを弄りたかったのか。

「あーあ、サーシャ。顔が、真っ赤ですよ?ハァー、これでは、ソル君に何と言ったら良いのか・・・・・・・・・。」

  きっと、お母さんとサーシャさんのお兄さんが悪いんですよ。
  でも、それだと僕も共犯になってしまうんだよねぇ・・・・・・・・・。
  分かりました、誰にも言いません。

  とりあえず、サーシャさんに声掛けをしないと。

うーうッサーシャ(さん)あーアーう大丈夫?」

  な、なぁに?サーシャさん。
  僕、じーっと見つめられるのは苦手なんだけどなぁ。

  って、どうしたんだろう?
  サーシャさんの目が “強い決意の表明” をしている、気がする。


_____________________



  ここが、王城、なのかなぁ?

  これは、城壁?
  とっても大きな壁だから、たぶん城壁だよねぇ。
  要塞みたいだなぁ。

  んー、なんだろう。
  なんだか懐かしい感じがするなぁ。
 ・・・・・・・・・あっ、そうだ!
  前世でやっていたRPG系のゲームに出てきた、要塞そっくりな城壁だ。
  うーん、偶然かな?
  そう言えばあのゲーム、マップがかなり滅茶苦茶だったんだよねぇ。
  覚えるのに苦戦したんだよねぇ。

「フィル、着きましたよ。フフフ、ここがあなたのお家ですよ。とても綺麗でしょう?ベイルマート王国の王城は、 “ナイトパレス” と呼ばれているのですよ。」

 へぇ、ナイトパレスかぁ。

  って、あれ?
  あのゲームのお城の名前もナイトパレスだったような?
  でも、あのゲームの世界、ではなさそうだけど、・・・・・・・・・どういう事なんだろう?

「ベイルマート王国建国記によると、 “ナイトパレス” と命名したのは、初代国王陛下らしいのですよ。」

  初代国王陛下って言ったら、僕と同じ名前の人だよね。
  もしかして、初代陛下は、僕と同じように異世界出身の人だったとか?
  それなら少しは、納得出来るんだけどなぁ。

「それも追記で、『何となく、それっぽくない?』と、初代陛下が何となくで決めたと記されていたがな。」

 そう言われると、お城の雰囲気も何となく似ているのかな?

  窓の配置やお城の造形、庭の配置とかも・・・・・・・・・うん、確かにそっくりだね。
  僕、結構あのゲームやりこんでいたから、かなり覚えているんだよね。

  もしかして、城内も似ているのかなぁ。
  だとしたら、助かるんだけどなぁ。
  暮らしやすい上に、覚える必要もないし。

「お帰りなさいませ。アンリエッタ様、サーシャ様。それから、よく御越しくださいました。シェルネオン殿、オルフェリオス殿。そして、初めまして。フィルシールド殿下。私は、ナイトパレス内においてメイド長を勤めております、ハイ・エルフの“リーナ”と申します。よろしくお願いします。」


  め、メイド長!

  って、しかもハイ・エルフ!
 ・・・・・・・・・この人が、リーナさんかぁ。
  何だか、厳しそうな人だなぁ。じゃなくて、エルフだなぁ。

  ピクリとも表情筋が動いていない。
  大丈夫だよね?
  ちゃんと、笑えるよね?
  こ、怖くなってきたなぁ。

  ち、ちゃんと挨拶しなくちゃなぁ。
  えっと、えっと。

あうひうよろしくおえあいうあうお願いします。」

  あっ!
  リーナさんの目元が、一瞬だけピクッとしたね。
  良かったぁ、これなら大丈夫かな。




  お城の中も、とっても綺麗だなぁ。
  まぁ、王城なんだから当然だ、と言えばそこまでなんだけど。

  一階の入って直ぐの広間みたいな所は大理石の壁っぽかったけど、ここは和室っぽい。
  誰かのプライベートエリアとかが近いのかな?

「ここは、フィルのお父さんのお母さんの故郷 “ゼンタール公爵領” の家の雰囲気に寄せて造られた、ソル君のお部屋がある一角なのよ。」

  成程。
  ・・・・・・・・・ゼンタール公爵領って言う所は、もしかしたら日本っぽい文化があるかもしれないんだね。

「僕の実家の “シーゼルン大公家領” は狭いんだけど、海沿いの街なだけあって、港町として発展している。他には、水族館っていう観光スポットがあるから、大きくなったら一緒に見に行こうな。」

  な、何だって?
  サーシャさんの実家の領地には、水族館があるのですか?
  ・・・・・・・・・僕、水族館が大好きなんだぁ。
  だから、わざわざ、水族館がたくさんある地域の学校に寮住まいで通おうって・・・・・・・・・って、なに考えてるんだろ、僕。
  でも、とっても楽しみだなぁ、水族館♪



  早く、この国のこと、もっともっと知りたいなぁ。
  きっと、面白いことがたっくさん、あるだろうからなぁ。

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