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1.フィルシールド誕生

1-022,023

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  何かをしようにも、この状況じゃ、出来ることなんて殆どないし、お父さんたちの夕食が終わるのをのんびり待つしかないかぁ。


  ・・・・・・・・・暇だなぁ。


  こういうときは、ううーん、魔力制御の練習に限る、よね。
  まぁ、どうせ、他にできることもないんだけども。




 魔力制御は、 “スキルの《魔力操作》を鍛えると良い” と、いうことまでは、サーシャさんの説明を聞いたり、本を読んだりして、なんとなく分かった。

  スキル《魔力操作》を鍛える方法は、いろいろと有るみたいだけど、今は、近くに使用人さんがいるから、気づかれない方法にしないとねぇ。


  騒がれたくないし。


  だから、魔力を身体の中で循環させて・・・・・・・・・。


  うーん!
  だいぶ、スムーズに魔力が循環するようになってきてるよねぇ。


  ・・・・・・・・・って、はっ!
  あれ、いつの間にか、あの使用人さんがいなくなっているねぇ・・・・・・・・・!?誰か来る!


「先程の者が失礼しました、フィルシールド殿下。替わりましたこの私・・・・・・が、殿下を・・・・・・・・・・・・へとお連れいたします。」


  いや、そんな。

  い、一々堅苦しいような挨拶をしなくても。
  僕、一応まだ、産まれて1週間くらいしか経ってないはずなんだけどなぁ。


  って、あぁ!
  途中を聞いてなかった。

  何処へ連れて行かれるんだろう?
  考えてみるよう、と。


  たぶん、お父さんたちの夕食が終わった、んだと思う。

  というのも、泣いた使用人さんの替わりに来た別の使用人さんが、今、僕を抱っこして部屋を移動しているからだ。


  現時点で、お風呂は済んでいて、夕食も済んだ。


  それならば、 “次は睡眠だろう” という考えに至った。
  だって、お父さんは、 “4人で寝たい” と、言っていたからね。







  ここが、お父さんの部屋かぁ、ってここはお父さんの寝室?


  確か、こことは別に、私室のあるエリアがあったはずだけどなぁ・・・・・・・・・。


  王様だし、2つ以上の部屋を持っていてもおかしくないか。
  いいなぁ。って、良くない!
  僕も王様になっちゃうかもしれないんだよなぁ。

 大丈夫。ここは、王様が頂点トップの国じゃないから。
  専制君主制の政治でも、王様を叩ける人がいるから。
  ちょっとだけ、怖いけど。


 それにしても、懐かしいなぁ、この部屋の雰囲気は。
  畳が敷かれた和室かぁ。
  確か、前世の僕の部屋も和室だったはず。
  ほとんど帰ったことがないから、あまり覚えてないけど。

  おやっ?向こうから誰か来るみたい。
  使用人さんの手が、少し強張ってる。だ、誰だろう?
  !あっ、男の人だった。

  ふぅー。
  あぁ、リーナさんかと思ったから、少し警戒してしまったみたいだなぁ。


「あぁ、ジークさん。丁度良いタイミングだったようですね。フィルシールド殿下をお連れしました。」


  えっと、この人はジークさんって言うんだね。
  あっ!リーナさん程じゃないけど、耳が尖っている。
  もしかして、エルフ族の人かな?


「あぁ、そうでしたか。では、後は私が引き継ぎましょう。」


「お願いします。」


「はい。では、初めまして、フィルシールド殿下。私は、ジークと申します。陛下付の使用人、王家の家宰を務めております。どうぞ、今後ともお見知りおきを。」


   “お見知りおきを” って、家宰なら僕もかなりお世話になるでしょ?忘れることは殆どないんじゃ・・・・・・・・・もしかして、お父さんが原因とか言わないよね?
  もう、嫌だよ!

  って、気にし過ぎかな。
  挨拶なんかでは、よく使われるフレーズだって、聞いたこともあるし、そう言う意味だよね。
  きっと、・・・・・・・・・。


  よし!
  こうなったら、真っ先にやることを決めないとね。
  計画を立てて確実に実行するんだ!
  名付けて『ダメ親改革』。
  きっと、使用人さんたちやサーシャさんあたりは協力してくれるはず!


  絶対に、成功させるんだ!




  まずは、お父さんが王様として正すべき癖や習慣、性格について知る必要があるよね。
  今現在、分かっていることは・・・・・・・・・


・お調子者である
・食べ物の好き嫌いが激しい (推測)
・騒々しい
・サボり魔
・面倒くさがり
・ノリと勢いで行動しがち
・考え無し
・朝に弱い


と、いったところかな。


  うぅーん、調査するにしても、僕一人じゃ直ぐには出来ないし、何人かに頼らないと、一面しか見えないこともあるからね。

  となると、サーシャさん以外で、頼れそうな人を使用人さんたちから探さないとなぁ。
  出来れば僕の言葉が正しく通じる人が良いよねぇ。
  そうだったら、調査の結果収集が、かなり楽になるんだもん。

  っと、今はジークさんに怪しまれないように注意しないとね。


「フィルシールド様、こちらが陛下、ソルトラルド様の寝室となります。」


  ん? あれ?
  そういえば、ジークさんって、さっきは、僕のことを “殿下”って呼んで 、お父さんのことは “陛下” って呼んでいたよね?
  どうして “様” に変えたんだろう。


  あっ、ジークさんが、立ち止まった。
  どうしたんだろう?

  あっ、誰かの気配があるね。
  しかも、この気配は、かなり覚えがある。

  この気配は確か・・・・・・・・・


「あぁ、サーシャ様。丁度良かったです。フィルシールド様をお預かりしていましたので、お届けに参りました。」

  やっぱり、サーシャさんだった。って、えっ!?酷いよ!
  僕は荷物か何かなの?
   “お預かり” に “お届け” って、どう考えても人に対する言葉じゃないよねぇ!?
  ねぇ、そうでしょ?


「ジーク、フィル君を物みたいに言うのは止めてやってくれ。ソルトは気付きやしなかっただろうけど・・・・・・・・・ほら、フィル君はショックを受けているだろう?僕の推測だが、フィル君は、僕たちの言葉を既に、かなりと言うか、ほぼ全て理解しているんだよ。」


  サーシャさんは、苦々しい笑みを浮かべながら、僕を1週間世話してきたことで、立てた推測をジークさんに話している。
  誰かに理解してもらえているって、嬉しいことだよね、本当に。

  ジークさんは、薄らと笑みを浮かべながら、頷いているようだ。
  まるで、感動したかのような雰囲気を醸し出しながら、若干、涙目になっているけど・・・・・・・・・って言うほど感動するところなんて、なかった、よね?

  もし、今ジークさんが、感動しているんだったら、それはきっと、僕の気のせいだ。
  そういうことにしておくとしよう。
  じゃないと、僕の手におえる気がしない。ハァー。


「これは、大変失礼致しました。殿下は、陛下には似ず、賢き御方であるとは聞き及んでおりましたが、ここまでとは。いえ、誠に目出度めでたいことですねぇ。から、ここまでの御仁が生まれるとは。」


  おーい、ジークさーん。
  本音、駄々漏れですよぉ。

  家宰という、かなり高い地位にいる人が、主人をアレ呼ばわりは、流石にダメだよねぇ?
  まぁでも、否定はできないんだろうねぇ。
  サーシャさんも、 “否定できる要素が見付からない” みたいな顔をして首を横に振ってるから。


  これは、改革を急がなくては。


  っと、あっ!
  お父さんとお母さんがこの部屋へ来たみたいだね。

  うわぁーーッ!
  すっごく大きな布団だぁ!
  しかも、ベッドじゃなくて、畳の上に直敷きするタイプ、懐かしい!

  今日は、初めてお母さんと寝るんだ。
  あぁ、勿論、お父さんも初めてだからね。

  フワァーーーアッ、布団に横にされただけで、急激に眠くなってきたなぁ。
  赤ちゃんだし、眠気に逆らうだけ無駄なんだよね。


  うん、計画立ては、今日はここまでにしようかな。
  続きは、また明日にでもすればいいや。


  お休みなさい。
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