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サキュバスちゃんに搾〇されました(その1)

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 ふぅ……スカーレンには苦戦を強いられたな。
ケーミーが来てくれなかったら危なかったぞ……。
そんなケーミーは魔法を使い過ぎて寝てしまっている。
俺も草原で一休みしている。
ああ……風が気持ち良い。
やり切った感がすごいぜ。
 しばらくするとケーミーが目を覚ました。

「あ……勇者様。……私、魔力切れで気絶していましたか」

「うん。スカーレンはもういないから安心して」

「そうですか。ちょっとしか寝ていないので、私の魔力は少ししか回復していないみたいですね……」

 ケーミーが起き上がったけど、ちょっとダルそうだ。

「……あ! そうだ!」

 なんだ?
何かを思い出して、ケーミーがジト目でこちらを見ている。

「……勇者様の甘っちょろい感じには驚きましたよ!」

 ……おっと!?
スカーレンを殺さず、そして逃がしてしまったことを言っているんだな?

「うっ! まぁ、そんなに責めないでよ。……つ、次の町に行こう。ケーミーさんも来るでしょ?」

 俺の甘いところは、かつての仲間達からも指摘されていたので、つらい……。
その話題はなるべく避けたいぞ。

「もちろん! え、いいんですか? 試験に落ちた私と一緒に行くのを嫌がってませんでしたか? やっぱり私の魔法を見て考え直したわけですね!」

「まあね。けど、う~ん……正直まだ心配だけどね」

「なっ! そうですか……? まぁ、確かにあの魔族はめちゃめちゃ強かったですけど……」

「うん、心配だけどね。俺が全力でフォローする。ケーミーの言うとおり、さっきの戦いで大活躍したのは間違いないし」

「ですよねぇ~。間違いないです!」

 じ、自信家だな……。
そういうところは羨ましくもある。

「けど……俺の言うことはちゃんと聞いてね。危ないから」

「分かりましたー!」

 軽い感じで返事をした。
本当に大丈夫かなぁ……?
ケーミーのことは優先して守らないとな。
半人前の彼女が犠牲になってしまった上で平和が訪れてもなぁ……って感じである。
ここら辺も俺の甘いところだ。
 やはり1人旅はキツいので、ケーミーの力は借りたい。
1人では、魔法四天王クラスが襲撃して来たら突破できそうにない。
仲間が必要だ。
俺はケーミーが強い意志を持って戦うところを高く評価している。
もちろん魔法の才能もすごいけどね。
今は直接的に戦力になるかどうかは分からないけど、あの意外性のある散弾型の魔法があると心強いんだ。
少しサポートしてくれるだけでいいから、一緒に戦って欲しい。
 というわけで、ケーミーとともに次の町に出発した。

「で……勇者様! さっさと私の恋人の情報を教えてくださいよ! 勇者様も何か知ってるんでしょ?」

 草原を歩き始めると、ケーミーが自分の恋人について質問してきた。

「う……! そ、それは……」

 俺がためらっていると、ケーミーが口を開いた。

「何で教えてくれないんですか……!? 私は命の恩人なのに!!」

「うぅっ!」

 ケーミーから『フザけんなよ』と言いたげなオーラが出ている。

「そ……そんなに怒らないで。おそらく……俺の仲間……になる予定だった人達は魔界にいる」

「え……! そうなんですか!? な、なんで勇者様と旅立つ前に魔界に……!? お城に泊まっていたはずですけど……そんな短期間で魔界に行けるものなんですか? やっぱり魔王軍に連れ去られたんですか? それとも、勇者抜きで魔王を討伐しようとしているんですか!?」

「い、いや……その……そこら辺のことは言えないんだ! 魔界で今どういう状況にあるのかは、本当に何も分かっていないんだ……」

「な、何か事情があるんですか……。そうですか。まぁ、ウソはついていないみたいですね……?」

 そう言いながら、ケーミーは俺の顔をのぞき込む。
お、俺はそんなに顔に出やすいのか……。
本当のことを全部言っていないけど、嘘をついていないから怪しまれなかった。
過去に戻っていることを言ったら、射精のこととか言わなきゃいけなくなるぞ……。
嫌だなぁ……射精を含めた説明をするのは。
そもそも、こんな奇妙な話を信じてもらえるのかどうか……。
呪いの印を付けられた場所が場所なので見せづらいし。

「うん……嘘はついてないよ! またスカーレンが来たら、仲間達がどうなっているのか詳しく聞いてみよう」

 それについては俺も聞き出したいのだ。

「聞いても教えてくれないと思いますけどね~。とっ捕まえて、聞き出すまで監禁するしかないですよ」

「……けっこう、大胆なんだね……ケーミーさんは」

 目的のためなら拷問とかしかねないぞ。

「はい! 目的達成のためならトコトンやりますよ、私は! 勇者様の信頼も得て、隠している事情も聞き出してみせます!」

 恋人の戦士のこと……好きなんだろうなぁ……。
恋人のことが大切なのだ。
彼は浮気していたんだけどな……。
彼の浮気について、俺の様子からバレてしまいそうだ。
やっぱり、仲間達の話はあまりしたくないなぁ……。
ケーミーは鋭い子だからなぁ。
俺の嘘が見抜かれる可能性がある。

「あ、勇者様……『ケーミーさん』じゃなくて、『ケーミー』でいいですよ」

「……そう? わかったよ、ケーミー」

「は~い」

 お……可愛い返事。
なんか仲が深まった気がする。

「え……なにニヤニヤしているんですか? 変な気を起こさないでくださいよ? 戦闘中、そんな呼び方のせいで伝達が遅れてピンチになったら大変だからですよ。……って、さっきの戦闘中は私のことを呼び捨てでしたよね? 普段からあんな感じでいいですよ。お願いします」

「あ……はい」

 すごい勢いで警告してくるじゃん……。

「次の町に着くのは明日ですかね。今日の野宿で私に何か変なことをしたら世界中に噂を流しますから、覚悟してくださいよ?」

 く、口の減らない子だな……。
俺に寝込みを襲う度胸なんてないんですけど。
 こうして、ケーミーとの2人旅が始まった。


---


 草原を歩き続け、翌日の夕方ごろに次の町に到着した。
ここも城下町である。
グリトラル王国も大きな王国だったが、ここはさらに大きくて人が多く、賑やかな町だ。
少し離れた場所にお城が見えるぞ。
確かここは……【スワン王国】だ。
この国はただの通過点だけど、一応お城の国王様には挨拶をしておこう。

 俺とケーミーは城下町を通り抜け、お城の前まで来た。
すっかり日が落ちてしまったな……。
 門番の兵士に話しかけてみよう。
身長は180センチを超えており、ゴツイ鎧を装備している屈強なおじさんだ。
俺より年上だろう。
ベテランに門番を任せるんだな……。
守りが堅そうだ。

「何者だ? ……む? 勇者アキストか!」

「あ、はい」

「……」

 なんだなんだ?
門番が何かを考えているぞ。

「……噂は聞いている。悪いな、もう日没だ。王様に会うのは明日にしてくれ」

 門番が俺にそう告げた。
夜は面会禁止なのか……。
それなら仕方がない。
確か以前、仲間達と5人で来たときは昼下がりだった。
今回はスカーレンと戦っていたから遅くなっちゃったかな。
沈黙した後に『噂は聞いている』……って、俺は嫌な感じで捉えちゃうよ?
考え過ぎの被害妄想かもしれないけど……。

「そうですか……。分りました、明日また伺います」

 俺がそう返答すると、城の中から誰か出てきた。
ん? 誰だろう?
緑色のマントを身につけており、見た目的には魔法使いのようだが……?

「ちょっと待ってください、勇者アキスト。……私は魔法使いのボルハルトです。この城の護衛をしています」

「は、はぁ……」

 魔法使いの【ボルハルト】?
口髭を生やしていて、なんだか紳士的な感じの魔法使いが出てきたぞ。
門番の人ほどではないけど身長は高めだ。
年齢は俺より少し年上ぐらいかな?
以前に来たときは、この人とは関わらなかったはずだ。
仲間はケーミー1人だし、微妙に歴史が変わっちゃったのかな?

「……勇者アキスト。一度、手合わせをお願いできませんか?」

 ボルハルトが俺にお願いをしてきた……!
て、手合わせだって……!?

「ボルハルトさん……!? 何をするつもりですか?」

 門番のおじさんが不思議がっている。

「勇者アキストの力……皆さん疑っているのでしょう? 確かめてみましょう」

 なっ!? 
やっぱり、嫌な噂はスワン王国にも流れているのか……。

「さぁ、勇者アキスト……訓練場へどうぞ」

 有無を言わさない雰囲気で促された。
何か嫌な予感がするけど……。
手合わせをきっかけに誰か仲間になってくれたらいいな。
スワン王国の方が、兵士が強そうだし。
このボルハルトという人も、なかなか強そうだぞ。
けどまぁ、他国の兵士がそんな簡単に協力してくれないか。

「勇者様、めっちゃ舐められてるじゃないですか……。戦って大丈夫ですかぁ?」

 ケーミーが大きな声で聞いてくる。

「……いや、分からないけど、誰か仲間になってくれないかな……っていう下心はあるよ。あと……嫌な噂を払拭するチャンスでもある」

 俺は前を歩くボルハルトに聞こえないように小声で返した。

「えー? 意外とメンタル強いですねぇ。向こうが勇者様に卑怯なことをしてきたら私も加勢しますからねぇ」

 ……うお!? また大きな声で……!
相手を牽制けんせいしているのかな!?
ケーミー……共通の敵を持つと心強いな。
そのあおっていくスタイルはヒヤヒヤするけど、ちゃんと俺を仲間として認識してくれている感じがけっこう嬉しい。

 ボルハルトに案内されて、城の中に入ると大広間があった。
色々な絵画や彫刻、壺などの芸術品が飾ってあり、スワン王国よりも豪華だな。
俺たちは大広間の左側にある狭い通路を進んで行った。
そして中庭に出ると、目の前には大きな建物があった。
城は石造りだったが、この大きな建物は木材でできている。

「ここが……訓練場?」

「ええ、どうぞお入りください」

 ボルハルトが少し笑みを浮かべながら中に入るように促す。
俺とケーミーが中に入ると、そこは広い訓練場であった。
屋内だけど地面は土。
多くの屈強そうな兵士たちが訓練している。
おお……50人はいるぞ。

「勇者アキスト!?」
「ボルハルトさん……何をする気ですか!?」
「ま、まさか……!」

 兵士達が俺とボルハルトに注目する。
俺の顔……知られているんだなぁ。
記事とかで顔が出ているのだろう。

「今から私と勇者アキストが手合わせをします。スペースを空けていただけますか?」

 ボルハルトが兵士たちにお願いすると、俺たちが戦うスペースができた。
こ、こんな……みんなが見ている前で戦うの?

「ボルハルトさんと勇者アキスト! これは楽しみだ!」
「勇者アキスト……本当に強いのか?」
「なんだかんだボルハルトさんの圧勝だろう」

 なんかボルハルトは兵士たちに一目置かれている感じだな。
門番の強そうなおじさんもそんな感じだったし。
強くて、立場も高いのだろうか……?
 って、俺……やっぱり評判悪い感じだなぁ。
兵士のみなさん……俺に聞こえてるよ!

「勇者様! がんばってください! 勇者様なら余裕ですよー!」

 お、ケーミーが対抗してくれている!
いっそう強い仲間意識を持ってくれている。
あ……『信頼を得て、恋人の戦士について秘密にしている情報を俺から聞き出す』みたいなことを言っていたっけ……。
まぁ……そうだとしても心強いぞ!

「それでは、勇者アキスト……本当にやりますよ? あまり手加減はできませんが……よろしいですね?」

 訓練場の中央で俺とボルハルトが対峙している。
彼は真剣な表情で俺に警告する。
相手との距離は……3メートルほどか。

「……どうぞ。僕はいつでも構いません」

 俺は勇者の聖剣を抜き、構えた。
彼からスカーレンほどの脅威は感じないけど、魔力的に実力者であることは間違いない。
一応……最大限の警戒はしておく。

「太陽の魔力……球体に変換、ファイアボール!!」

 お……ケーミーと同じ魔法か。
同じ魔法だけど、ケーミーより遥かに強いぞ!
炎の球の直径は俺の身長より大きく、2メートルぐらいはある……!!
スピードも申し分ない!
俺の仲間だった魔法使いにも勝るほどの威力だろう……!
これは……しっかりと対処しないとな。

「……ホーリーバスター!」

 俺は聖剣に1秒ぐらい魔力を込めて技を放った。
青白い光が放たれるとともに、炎の球がき消えた。

「なっ!? 消滅したぞ……!!」
「いとも簡単に一瞬で!」
「勇者アキスト……その実力は本物なのか!!」

 魔法を防がれ、ボルハルトが眉間にシワを寄せている。

「やりますね。それでは……」

 彼はそう言いながら、一歩前に出た。

「天使の魔力……球体に変換! ホーリーボール!!」

 おぉっ? な、何だって!?
青白い光の球が俺の方に向かっている……!
これは……聖属性の魔法だ!
め、珍しい!
勇者以外で使える人がいるなんて!?
いや、基本的に勇者だけだと思うんだけどな……。
どういうこと!?
しかも……これはかなり強いぞ!?
先ほどと大きさは同じぐらいだけど、魔力の密度が違う!
ファイアボールの3~5倍の威力はありそうだ!!
……けど、大丈夫!
俺は聖剣に魔力を込めておいた。
こういうのは抜かりないよ!

「……ホーリーバスター!!」

 俺は5秒ぐらい魔力を込めておいた状態で技を放った。
先ほどよりも強い青白い光で部屋がいっぱいになる。
よし……聖属性の球は、やはり掻き消えたぞ。

「ま、また消滅した……!?」
「ボルハルトさんの魔法を! マイペース勇者が!? いとも簡単に!!」
「勇者アキスト……本物なのか!?」

 兵士たちが驚いている。

「当たり前じゃないですかぁ! 勇者ですよ勇者! 選ばれた勇者!」

 ケーミーがここぞとばかりに煽っている。
共通の敵をもつと、やたら応援してくれるようだ。
応援はありがたいけど、あんまり煽り過ぎないでね。
 そんな中、ボルハルトがゆっくりと近づいてくる。

「ありがとうございました。まさかこんな簡単に私の魔法を破られるとは。私の完敗です。あなたは紛れもない勇者ですよ」

 おっと……? もう終わりか。
自分の魔法を簡単に防がれたのに紳士的な対応だぞ。
良い人だ。

「こちらこそ、ありがとうございました。まさか聖属性の魔法を使えるなんて……仲間になって欲しいぐらいですよ」

「いや、それは……無理なんです」

 ん……?
ボルハルトが暗い表情になったぞ。

「じつは私は昔、勇者だったのです。魔王ジュエリの軍団に挑んで負けました。幹部に歯が立たなかったのです。命は助かりましたが……今はこうして城の護衛をしております」

 ……そうだったのか!
魔法が得意なタイプの勇者だったんだね。
魔法四天王に負けたのかな……。
心が折れてしまったのか?
……俺も魔王に負けている。
しかも射精ループの状態にされて心が折れそうになるけど、がんばらないとな。

「魔王軍の幹部に私の力は全く通用しなかった……。運良く拾ったこの命。この国を守ることに全力を尽くします」

「そ、そうでしたか……」

 魔法四天王は桁違いに強いよね。
よく逃げられたな……。
事情を聞きたい気持ちに駆られているけど、余計なことは何も聞くまい。
心が折れて心の傷を負っているのかもしれないし。

「あなたの力は素晴らしい。噂のような問題のある勇者ではない。年齢に負けず頑張って欲しい」

 ね、年齢のことは言わないで……。
けど、元勇者に前向きな意見を言われたので、なんか嬉しいな。
がんばろっと。

「ありがとうございます」

 いきなり兵士の前でボルハルトと戦うことになったが、認められたので良かった。

「さすが勇者様ですねぇー!」

 ケーミーが良い笑顔で本当に嬉しそうだ。
いつの間にやら仲間意識が芽生めばえていて驚いているぞ。
俺の信頼を得て情報を聞き出したいだけ、もしくは兵士たちを煽りたかっただけの可能性もあるけど……。

「それでは、また明日。お城にお越しください」

 明日は国王様に謁見えっけんする。
今夜は城下町の宿屋に泊まることにしよう。


---


登場人物の詳細プロフィールです↓

ボルハルト……元勇者。魔法四天王に敗れ、現在はスワン王国の護衛をしている。
種族: 人間
職業: 魔法使い
年齢: 33歳
身長: 175cm
見た目・印象: 口髭を生やした紳士的な人
服装: 緑色のマント
得意な魔法: 聖属性の攻撃魔法。他にも様々な魔法を使える。
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