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勇者の回想

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 俺の以前の仲間は、戦士と魔法使い、武闘家と僧侶だった。
戦士は男で、名前はターナー。
彼がケーミーの恋人であることは後で知った。
魔法使いのアデラインは女性で、戦士と付き合っていた。
戦士ターナーは、ケーミーともアデラインとも付き合っていたことになる。
いわゆる浮気だ。
武道家は男、僧侶は女性である。
この2人も付き合っていた。
俺はグリトラル王国で勇者の聖剣を受け取り、5人パーティで旅立ったのだ。
 彼らと旅をしていた頃は大変だったな……。
あれは、そうだな……そろそろ魔界にたどり着く頃だったな……。
旅に出てから10ヶ月ぐらい経過していた頃だな。
もう旅の終盤だった。
今からさかのぼると、2ヶ月ぐらい前だったと思う。


ーおよそ2ヶ月前ー


 現在、仲間の4人とともに魔王討伐の旅をしている。
たくさんのモンスターが生息する岩山を下っているところだ。
魔界の入り口がある場所……つまり『地上の果て』まで、あと少しで到着するだろう。
この旅の終わりは確実に近づいているぞ。
今日は岩山のふもとにある町で一泊する予定だ。
『地上の果て』の周囲に町なんてない。
フカフカのベッドで寝られるのは、今日で最後かもしれないな。
……とか考えていると、目の前にモンスターが現れた。
こいつは……スライム系のモンスターだ!
体が大きくて強そうだな。
人間の体の5倍ぐらいはあるだろうか……?
こんな大きなスライムに押し潰されたら、たまったもんじゃない!
体の色は黒く、鋭い目つきからは邪悪さが感じられる。

「うわ……強そうね! そろそろこの岩山も終わりなのに、運がないわ」

 巨大スライムを見た僧侶が嫌な表情を浮かべる。
前衛にいる戦士のターナーは敵を凝視しているぞ。

「ヌルヌルしていて弾力がありそうだな……。俺の物理攻撃は効かないかもしれない」

 そう言いながら、彼は武道家に視線を送る。

「ああ……そうだな。俺の体術も効かないだろう。と、なると……攻撃魔法はどうだろうか?」

 武道家が魔法使いのアデラインに話を振る。
そうだな……アデラインの攻撃魔法ならダメージを与えられるだろう。

「わ、私!? って……勇者なら一撃じゃないの? 今回もそれでいいんじゃない?」

 アデラインは俺をニラみつける。
そして、みんなの視線が俺に向けられたぞ。
こ、これは……いつものパターンだ!!
くぅ……仕方がない。
結局いつも、俺だけが戦うんだよなぁ。
 湧き上がる嫌な感情について深く考えないようにし、俺は勇者の聖剣を構える。
魔力を込めつつ、モンスターに向かって踏み込んだ。
このモンスター……魔力を込めるのは1~2秒で充分だな。
まだこの先にモンスターがいるかもしれないし、魔力を少しは温存しておこう。

「ホーリーバスター……!!」

 振り上げた俺の聖剣が青白く光る。
そのまま聖剣を振り下ろすと、難なく攻撃がヒットした!
モンスターは俺の攻撃に反応できなかったようだ!
よかった……!

「ピ、ピギャアアアアァッー!!?」

 スライムが後方に弾け飛んだ。
そして消え去った……。
よし、問題なく倒せた。
ふぅっ……1撃で倒すことができたぞ。
後ろから仲間たちの声がする。

「お前は相変わらず強いな。俺ら……必要か?」
「そうだよな。どうせお前がいれば勝てるんだよな……」
「ねー。勇者はバトルのときだけ輝いてるわね」
「私らの意味……なくね?」

 ……とても嫌な感じである。
彼らの言葉と視線に疎外感を感じてしまうぜ。
なんかお腹が痛くなってきたよ……。

「そろそろ町に着くね。……急ごう」

 こんな扱いを受け続けているので言い返したこともあったが、4対1ではどうにもならない。
相手にするのが疲れたので軽く流すようになった。
受け流しているつもりだけど、ストレスは溜まっていってるんだよな。
コミュニケーションが苦手な俺にとって、4対1の状況を立て直すことなんて不可能だよ。
これ以上、傷つくのは嫌だ……。


---


 麓の町に着き、宿屋に泊まった。
グリトラル王国からお金はたんまりもらっているので、1人1部屋で宿泊しているぞ。
贅沢なお金の使い方……なのだが、今日は俺にとって、とくに嫌な部屋の配置になってしまった。
右隣はターナーの部屋、左隣は武道家の部屋だ。
ターナーの部屋には、アデラインが訪れているようだ。
武道家の部屋には、僧侶が訪れているみたいである。
両隣の部屋でカップルがイチャイチャしているのだ。
彼らの会話が聞こえる……。
当然のように俺の悪口が聞こえてくるので最悪である。
壁……薄いなぁ。
 そして……夜には……そう、セックス音が聞こえてくるんだ。
右隣の部屋からセックス音。
アデラインの綺麗な喘ぎ声が聞こえてくる。
ターナーのチンポがとても良いらしい。
アデラインは巨乳だ。
きっとターナーのチンコに突かれて、あの巨乳を揺らしているのだろう。
 左隣の部屋からは僧侶の大きな喘ぎ声が聞こえてくる。
武道家の手マンがとても良いらしい。
僧侶はとても可愛らしい顔だ。
いわゆる童顔である。
その可愛らしい顔が女の顔に変貌し、手マンの感触に酔いしれているのだろう。
 ターナーも武道家も、そんな技術よりも戦闘能力を磨いて欲しい。
宿屋に泊まると、たいていこんなクソみたいな時間を味わうことになるので……あんまりである。
と言いつつも俺は、アデラインの揺れる巨乳と、僧侶の可愛いらしいアヘ顔を想像してしまう……。
ああ……俺の勃起が収まる気配はない。
両隣にバレないようにオナニーをしてしまっているのは絶対に秘密だ。
……む、虚しいぜ。

「アキストのやつ……オナニーでもしてるんじゃないの? ぷぷっ」
「ははっ! そうかもしれないな!」

 今の声は……アデラインとターナーの声だな?
う、うぅ……!! 最低だ!
なんだか頭が痛くなってきたよ……!!
早く魔王を倒して、この旅を終わりにしよう……。
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