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 おまけエピソード

 エリィと新進気鋭の魔王

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 時はさらに遡り、魔王エリィの城からケンジが脱出した日の話です。
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 魔王エリィはケンジに呪いの魔法【カーズ】をかけて自室から送り出した後、ブルーの部屋に向かっていた。
城内の薄暗い廊下をしばらく歩いた後、部屋に到着した。

「ブルー、入るぞ」

 ブルーの部屋の前で声を掛けたが返事はなかった。
扉を開けて部屋に入ると、黒いブラジャーに黒いミニスカート姿でナイフを握りしめているブルーの姿があった。
彼女は振り向き、少々興奮した様子で喋り始めた。

「あっ! エリィ様……! どうしたんですかー?」

 薄暗い部屋には様々な拷問器具が置かれている。
ブルーは捕獲した勇者と魔法使いの男を使って遊んでいたようだ。
壁や床の絨毯には血液が至る所に付着している。
彼女の身体にも返り血が付いていた。
2人の男は血まみれで床に転がっており、全く動かない。

「ブルーよ……先刻、私が言ったことを忘れたのか?  奴隷達を殺すなよ」

 エリィが厳しい表情で注意した。

「でへへ。楽しくなっちゃいまして……! それにしても、なんか私の魔法じゃ奴隷達が全然回復しないみたいですー。エリィ様……この子達を回復してくれませんか? まだギリギリ死んでないと思いますー」

 エリィは彼女の発言を聞いて溜め息をついた。

「ふぅっ……。貴様……食料は大切に扱え。ダークヒール」

 エリィは勇者達に向けて回復魔法を唱えた。
倒れている2人が黒い光に包まれた。
彼らはすぐに意識を取り戻したようだが、目の焦点が合っていない。
立ち上がる気配はなく、静かにうめき声を発している。
どうやら精神が崩壊しているようだ……。

「さっすがエリィ様! けど、もう壊れちゃったみたい……」

 ブルーはしゃがみ込み、残念そうな表情で2人の顔を覗き込んだ。

「全く……お前には何を言ってもムダのようだな」

 エリィは腕を組みながら再び溜め息をつき、呆れている。

「でへへ」

「奴隷達は食料としてだけではなく、何かと労働力にもなるのだがな。全く……お前には後でお仕置きを与えてやる。何か罰を考えんとな」

「えー」

 ブルーは目を丸くして驚いた様子を見せた。
エリィはそんな彼女をニラみつけながら口を開いた。

「さて……私はまたチキュウ人と戯れるとするか」

「あ、いいなー。私も欲しい! あいつの精液、めっちゃ美味しかったもん!」

「ダメだ! 私の言うことを聞かなかったクセに何を言うか。そうだ、私がヤツから搾取する様子をすぐ近くで見ていろ。絶対にお前には搾取させないがな。それが罰だ」

「げ! エリィ様、ドS……」

「何か言ったか?」

「なんでもないでーす……」

 エリィはブルーを連れて自室に戻った。
2人で部屋の中に入ったが、ケンジの姿はなかった。

「む?  おかしいな……。チキュウ人が帰っていないぞ。……まだ城内を歩いているのか?」

「どこかで寝てるんじゃないですかー?」

「この状況で奴にそんな余裕があるわけないと思うが……そうだ、ブルー。あのチキュウ人を探し出せ。それがお前への罰だ」

「げ! マジですか? 探すとか、そういうのは私……苦手で……」

「いいから早く行け」

「は、はい~」

 ブルーが部屋から出ようとしたところ、エリィは彼女を引き止めて話しかけた。

「そうだ、私は今から王室に行くぞ。先程の戦いで損壊した部屋の様子を確認してくる。やれやれ、修理せんとな……」

「……エリィ様、そんなことは部下のサキュバスに任せればいいのに……」

「いや、私がやる。私の城だからな。他の者には任せておけん」

「わっかりましたー」

 ブルーはケンジを探しに、エリィは王室に向かった。


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 エリィは王室で考え事をしていた。
ケンジや勇者パーティとの戦いで王室はボロボロであった。
お気に入りの椅子も壊されてしまったので、ウロウロと歩きながら思考を巡らせていた。

(ふむ……そろそろチキュウ人の精液を味わいたいのだが……。一体どこに行ったというのか?)

「失礼します」

 突然、正面口から魔人が現れた。
魔人といっても人間と姿形はほとんど変わらない。
やや長めの黒髮で、アジア系の男のようだ。
黒い軍服のような服を身につけている。
人間と大きく異なる点は1点のみで、背中から黒い翼が生えていることである。
彼は頭を下げ、丁寧に挨拶を始めた。

「エリィ殿、初めまして……でしょうか。ミッドランドと申します」

「貴様……魔人か? 何用だ? 来客の予定はないのだかな。わざわざ地上まで来て我が城に侵入したのか?」

「ええ、随分と辺境の土地に城を建てましたね。お粗末なバリケードだったので空さえ飛べれば何も問題ありませんでしたよ。見張りも手薄ですしね」

「ふっ。言うではないか。壁は人間どもに容易に侵入されないための工夫だ。食料である男が来る分には構わんが、にかけんとわんさかとやって来てしまうからな。……で、何の用だ?」

「先日、私は魔界のマステラ王国の王に即位しました。私は前国王の息子のミッドランドと申します。ご挨拶にと思いまして。それにしても……目を疑うかのような美貌ですね」

 ミッドランドと名乗った男はエリィの美貌に見とれていた。
ロングストレートの黒髪と大きな瞳。
黒いドレスから見える細くて長い綺麗な脚のライン。
胸元は露出しておりその豊満な巨乳が際立っている。
透き通るような白い肌も好みであった。
凛とした立ち振る舞いにも目を奪われていた。

「……なるほど、国王が亡くなった話は聞いていたぞ。新しく王に即位されたのだな」

 彼女は納得したが、目の前の魔人に疑いの目を向けていた。

(わざわざ魔界から来るとは……何の用だ? ……政治事は面倒だから、わざわざ人間界で暮らしているのだが結局は忙しいな。やれやれだ)

「はい、父亡き後を継ぎました。エリィ殿の強さと美しさは私の耳にも届いておりました。その強さ、私も見習いたいものです」

「ふむ……新進気鋭の魔王と言ったところだな。で、私の城まで来て挨拶しに来る理由はなんだ? さっさと答えろ。前もって連絡が欲しいところだが」

「申し訳ございません……。なにしろ急な即位だったゆえ、作法が分からず……」

「ふむ……」

 エリィはジッと相手の目を見つめている。

「エリィ殿……私の目的を単刀直入に申し上げましょう。私と結婚してくれませんか?」

「なに? 結婚……だと?」

 エリィがいぶかしげな表情を浮かべた。

「はい……あなたと共に国を築けば我々に敵はいなくなると思います。人間界はもちろん、魔界も天界さえも我らの物になるでしょう。もちろん、あなたを利用しようと思っているわけではありません。私はあなたの美貌を目の前にして感激していますよ。ぜひ私と契りを交わしましょう」

 エリィが首をひねった。

「ふっ……悪くない話だがな。結局はあなたの傘下に入れということだろう? あなた方の国がどれほど強大な力をもっているかは知っておる。他国と諸々の協定を結んでいることもな。しかし、そもそも私はこの城を手放す気などないのだ。魔界のしがらみは面倒でな。ここに住んでいれば食料は向こうから勝手にやってくる」

「拠点はどこでもいいんです。私の国がこちらに移っても構いません」

「ふむ……そこまで本気なのか。しかし、私は世界をこの手にしようとは考えておらん。私にメリットはないな」

「そうですか……? しかし、悪くない話だと思いますが? おっしゃる通り、私の国はすでに魔界の三つの王国と連合軍を編成しています。これだけ強力な軍隊を設けていれば、エリィ殿はもちろん、この城のサキュバス達の安全は守られる」

「……安全? しかし、私に敵う者などそうはいないと思うが?」

「そうでしょうか? 魔界にはまだまだ未知の王国が存在している可能性があります。人間だって戦闘力はさておき、どんな力を隠し持っているか分かりません。魔女達の力だって未知だと思いますよ。魔界だろうと天界だろうと、エリィ様の力と美貌を力づくでも手に入れたいと思っている強者はいると思いますが?」

「ほう……。しかし、男である以上、我らに勝利することなどできんぞ? 魔女は確かに警戒すべき対象ではあるが。……それより、少々不快だな。先程から美貌美貌と……私を性処理道具だとでも思っているのか?」

「ま、まさか……! そんなことはありません。あなたの統率者としての魅力、軍事力、魔界での地位、全てを考慮してのことです」

「だったら美貌は関係ないではないか。何より気に入らんのが、その証拠としてミッドランド殿……あなたの性器はすでに勃起しているぞ?」

 ミッドランドはエリィを目の前にし、肉棒がそそり立っていた。
服の上からでも容易に判断できるぐらい、激しく勃起していた。

「なっ……!? こ、これは……お恥ずかしいところを」

「ふむ……結局、あなたは私に魅了される程度の男ということだな。前国王……あなたの父は私の前でそれはそれは堂々とした振る舞いであったぞ」

 エリィがミッドランドに近づいた。

「ま、待って……! ち、違う……」

「違う? 一国の主であるあなたが私の前で勃起するなど、そんな器では私達と連合軍を結成することなどできんぞ」

 エリィが尻尾をビュンビュンと振り回した。
尻尾の先はハート型から女性の性器型へと変形していた。

「ちょっ! 何をする気だ! 私に何かしたら、連合軍が黙っていないぞ!?」

 彼女がさらに近づいた。
触れるか触れないかの至近距離だ。

「何も危害は加えないぞ? 連合軍のような一大勢力を敵に回すほど私はバカではない……。ただ……貴様のような優れた魔人の精液には興味があるのだ」

 尻尾がミッドランドの下半身に迫る。
尻尾は彼の下半身の衣服を全て脱がし、尻尾の先を性器へと向かわせた。

「ああっ!? エ、エリィ殿……!?」

 ミッドランドの性器の先を彼女の尻尾が咥えた。
かつてない刺激に彼は激しく動揺した。

「どうだ? 気持ち良いだろう?」

 エリィの尻尾は性器の先からカリの部分までをゆっくりと行ったり来たりしている。

「くっ!! ふうぅっ……!?」

 ミッドランドは意識が朦朧もうろうとしていきた。
こんな快楽がこの世にあったのかと、恍惚こうこつの表情を浮かべている。

「さぁ、その両手で私の胸部に触れるが良い。先ほどからずっと見つめているではないか?」

 エリィの言葉に反応し、夢中で彼女の豊満なおっぱいを両手で揉み始めた。

「はぁっ……! はぁっ……! エリィ……殿おぉっ!! 心地良い! 心地良いっ!!」

 彼は一心不乱に正面から胸を揉み続けている。

「ふっ。元気がいいな。さすがは若手のホープだ。それ……スピードアップしてやろう」

 エリィは亀頭を中心に小刻みに尻尾を動かし始めた。

「あっ! あぁっ!! あああああっ!?」

 ミッドランドの口からヨダレが垂れ始めた。
エリィの美貌を前にしながら尻尾の快楽を味わい、彼の理性が失われ始めている。

「イ! イッ!! イクっ! イクうぅっ~!!」

 ミッドランドは射精したい衝動を抑えられず、エリィの瞳を見つめながら発射しようとした。

「なに? ……我慢が足りんな」

 エリィは彼の反応を見て、尻尾の動きを止めた。

「うぅ……!? あぁっ!! ああっ!? そ、そんな……おぉ……お願いします……お願いしますうぅっ……!!」

 残念そうな顔をしながら、エリィに懇願した。

「そんなに精液を出したいのか? ヨダレを垂らしおって……汚らしい男め」

「だ、だ……出したい! 出したいですっ!!」

 ミッドランドは真剣な表情で必死に頷いた。
もはや抵抗する気持ちはないようだ。

「では、もう1回。今度は出せると良いな」

「う! うぅっ! 嬉しいっ! 嬉しいです……!!」

 再び尻尾の前後運動が始まり、ミッドランドは感激した。

「おお、胸を掴む力が強くなってきたな。支配欲の強い男め。しかし、私に対しては優しくしないとダメだぞ?」

 優しく忠告すると、彼女は尻尾をペニスの根元にまで到達させた。

「あ、あ、あぁ……!? そ、そんなことしたら……!!」

 彼は快感に酔いしれるあまり、胸を揉みながら立っているのがやっと……という様子だ。
中腰の状態で足はガクガクと震え始めている。

「なんだ……? どうなるんだ?」

 ゆっくりとペニスの根元から亀頭まで尻尾の前後運動が繰り返される。

「で、で……出ちゃう!! 出ちゃいますうぅっ~!!」

 エリィはミッドランドのよがる様を見て微笑んだ。
舌で自分の唇をペロリと舐めた後、真剣な表情になった。

「させん」

 彼女は尻尾の動きをピタリと止めた。

「うひぃっ!? あっ! ああんっ!!? ごめんなしゃい! ごめんなひゃいっ!!」

 急に動きを止められ、ミッドランドの全身がガクガクと痙攣し始めた。

「ふはは! ちゃんと精液を止めたようだな。しかし……なぜ謝っておる? はっ! ……意味不明だぞ?」

「く、くぅ……。頼みます……イカせてください……」

 彼は今にも倒れそうだ。

「結局、なんだかんだでお前の目当ては性欲の処理なんだろう?」

 尻尾がミッドランドの肉棒から外れた。
エリィは尻尾を自分の後ろに隠した。

「あはぁっ!? そ、そんなっ……!」
 
 尻尾が外れた時の刺激に耐え切れず、喘ぎ声を発した。
その後で、射精に至っていない現状に気づいて残念そうな表情になった。

「胸も触るな」

 おっぱいを鷲掴みにしていた両の手は、エリィの手によって払われてしまった。
彼は繰り返された寸止めの刺激の強さに立っていられず、その場に崩れ落ちた。
エリィがすかさず足で彼の頭を踏みつけた。

「ふがあぁっ!? ちょっ!! ま、待って……! カラダ目当てというわけではないですが……! もう1度! もう1度してくださいっ!」

 うつ伏せに倒れ、頭をエリィのヒールによって踏みつけられながらも彼は懇願した。

「ほう……では、私の奴隷になるか?」

「は、はいっ……! なりますっ! 奴隷になりますうっ!!」

 エリィが静かに頷いた。

「そうか、これからは私のことを【エリィ様】と呼べ」

「は……はいっ! エリィ様!」

「よし、ではもう1度してやろう。四つん這いになれ」

「よ、四つん這い!?」

 突然の指示に戸惑いながらも、抵抗することなく四つん這いになった。
すぐさま尻尾が忍び寄り、再び彼の性器に食らいついた。

「あっ! あひぃっ!? ああああぁっ……!!」

 ペニスの先から根元までゆっくりと覆い被さる。

「もうっ! すぐに! すぐに出てしま……あぁっ!?」

 彼は射精することだけを考えている。
今にも射精しそうだ。

「む? いかせんぞ」

 それに気づいたエリィは根元で動きを止めた。

「なっ! な、なんで……? そんなあぁ……」

 ミッドランドは四つん這いの体勢で地面を見つめながら嘆いている。

「我慢させた方が精液の味が上がるような気がしてな」

 エリィは腕を組みながら彼を見下ろしている。

「うぅ……お、お願いします……イカせてくださいぃっ……!」

「そうか……少しだけ動かしてあげよう」

 尻尾が肉棒の根元で小刻みに動き始めた。
徐々に尻尾内部の分泌液の量が増大してきた。

「うぅっ……! くうぅっ!! くうぅ~ん……!!」

「はははっ! なんだ? なんだその子犬のような鳴き声は? 新進気鋭の国王ではないのか!?」

「あ、あんんん!! あはぁっ!! お、お願いです……! お願いですっ! だ、出させてえぇっ……!!」

「無論、断る」

「ま、まだあぁ……? そ、そんなぁ……! ひ、ひぃっ……」

「そんなにイキたいのであれば、そうだな……私の尻尾の先を舌で舐めるのだ。お前も奉仕せんといかんぞ」

 エリィの尻尾はミッドランドの性器から離れ、彼の口元に接近した。

「し、し、尻尾の……さ、先……?」

 尻尾の先は現在も女性の性器のような形をしている。
ミッドランドは口元に移動して来た尻尾の先を見つめた後、穴の入り口を舐め始めた。

「うむ……ミッドランド、なかなか上手いではないか。そこそこ気持ち良いぞ」

「ふぁ……ふぁい……」

 彼は四つん這いの状態を保ち、ピチャピチャと音を立てて舐め続けている

「少しくすぐったいな。次は穴の中に舌を入れるのだ」

「ふぁ、ふぁいぃ……」

 彼は舌を出して頭を動かし始めた。
エリィの尻尾の先の穴に舌を出し入れした。

「うむ……うむ……ミッドランド、少しは気持ち良いが……あまり上手くはないな」

 エリィは少し曇った表情を浮かべた。

「も、申し訳……」

「もうよい、このヘタクソめ」

 エリィは再び尻尾を彼の股間に移動させた。

「ふぃっ!!?」

 ミッドランドの体がビクッとした。 
三度みたびペニスが尻尾で包まれる。

「どうだ、嬉しいか? 今度こそ精液を搾り取ってやろう」

「あ、あぁ……! あはぁ……!! あ、ありがとうございますっ……!!」

 彼の肉棒は先から根元まで今までよりも遥かに速くシゴかれている。

「ほら、どうだ? 速いだろう? さっさと精液を出せ」

 エリィは尻尾の速度を緩める気配がない。
ミッドランドは再びヨダレを垂らし、白目を剥きながら叫んでいる。

「ああっ!! あぁっ!!! あひいいぃっ!!!?」

 彼の全身はガクガクと痙攣し、うつ伏せに倒れた。
盛大に射精したのだ。
すぐにバキュームが始まる。

「ふむ……良かったな、ミッドランド。なかなか良い味だ。これからは貴様達が我々の傘下に着くのだ」

 エリィは精液の味を褒めながらも、物足りない……といった表情をしていた。
ケンジの精液と比較しているのだろう。

「ふ、ふあぃっ……! え、えひぃっ……!? さ、傘下……??」

 ミッドランドは形にならない声で返事をした。
返事をした後、彼女の言葉の意味を理解して困惑した。

「そうだな……数人のそちらの男をこの城の奴隷として献上しろ。美味な精液をもっていそうな者……幹部クラスの良質な魔人が良いな」

「……え!? ええっ!? す、数人の幹部……!? エリィ様の部下達に……さ、搾取させるということですか?」

「まぁ、部下の分は間に合っているのだが。私用に何人か食事用の奴隷が欲しい。人間はしょっちゅう城に侵入してくるが、壊れやすくて何かと男不足になる。味もそこそこだしな。美味な精液と優秀な武力をもつ者を頂戴したい」

 エリィが尻尾の先でミッドランドの体を撫で回す。

「あっ! ああぁっ……!! そ、それでしたら……わ、私がっ!」

「なに? お前は私の奴隷と言えど、国王だ。国の統治をしなくてはならん身だろう? お前が私の食料になってどうする? この城に住むのか?」

「は、はい……お願いですっ! どうか! どうか私から搾取してください!!」

 ミッドランドは土下座した。
完全にエリィに魅了されている。

「そうだな……一国の王を食料として飼うのは気が進まんが、そこまで言うなら良いだろう」

「あ、ありがとうございます!」

「まぁ、いずれにせよ私に絶対服従の契約をしてもらうぞ?」

「ぜ、絶対服従……?」

「しないならば、もうあなたからは搾取しない」
 
 エリィが優しく撫でていた尻尾を彼の体から離した。

「そ、そんな……! ふ、服従……しますっ! 搾取してください!」

「そうか……契約完了だな。では、カーズ」

 エリィは指先をミッドランドに向けて魔法を唱えた。
黒い光が彼の胸元で光る。
ケンジの時と同様、名前入りの紋章が浮かび上がった。

「な……なんですか、この魔法!?」

 彼は突然の魔法に慌てている。

「呪いの魔法だ。対象者が私への服従を誓うと成立する。これでもう、お前は魔法が使えない」

「な、なあぁっ!? ま、魔法が使えないですって……!?」

 エリィの言葉を聞き、彼は激しく動揺した。

「この城内限定でだがな」

「そ、そうでしたか……」
 
 彼は安心したようた。

「これで容易にはこの城から逃げ出せんな」

「は、はいっ……! い、いやいや、そんなことは致しません!」

「ほう……では、お前の初の仕事だ。私の椅子になれ。四つん這いだ」

「い、椅子!? は、はい……」

 ミッドランドは再び四つん這いになった。
エリィが彼の背中に腰をかけようとした。

「翼がジャマだな……」

 エリィはそうつぶやくと、尻尾を激しく振り回した。
尻尾の先端はハート型に戻っており、一瞬でミッドランドの翼を背中から切り離した。

「うぎゃああああああっ!!?」

 彼の背中から血が吹き出した。

「そう騒ぐでない。ヒールレイン」

 エリィは魔法を唱え、彼の背中の傷をすぐに回復させた。

「ふぅ……。これで座り易くなった。それに、なおさらこの城から逃げ出せなくなったな。これでは城を囲む壁を超えられん」

「あ、ああ……あぁ……」

 ミッドランドは一瞬で翼を奪われ、絶望している。 
エリィは構わず彼の背中に腰掛けた。

「……私が大切にしていた椅子は壊されてしまってな。新しい椅子ができて良かった」

 彼女がミッドランドを椅子にしていると、正面の入り口からブルーが入ってきた。

「あれー? エリィ様……なにをやってるんですか? え、ええ!? その人、誰ですか!?」

「マステラ王国の新国王だ。あの国は王が亡くなったばかりだからな。王子がそのまま即位し、その挨拶らしいが……」

「えー!? 外交ってことですかぁ? 私のことも紹介して欲しかったのにー! でも、椅子にしちゃったんですか?」

「そうだ。私の奴隷になりたいらしくてな」

「へ~。さっすがエリィ様♪」

「それよりも、チキュウ人は見つかったのか?」

「え……どこにもいないですー」

「本当にちゃんと探したのか? それにしてもブルーよ……先程よりも返り血が増えている気がするが?」

 エリィは彼女が奴隷を使って遊んでいたのではないかと疑っているようだ。

「え、ええ? そうですか? 私はちゃんと探してましたよー! ホントにいないんですぅ……」

 エリィはブルーをニラみつける。

「しかし、もし奴が逃げたのだとしたら、どうやって逃げたというのだ? 人間は空を飛べん。まさか魔法使いの村の者が逃したのか? いや……あのチキュウ人にも呪いの魔法がかかっている。さすがにあの村の奴らと言えど、魔力を封じられた人間を感知できんだろう。やはりまだ城内に隠れているはずだ。ブルーよ、奴を探せ。くれぐれも他の奴隷で遊ぶなよ」

「はーい」

「さて……その間、私はお前で空腹を満たすとするか。えーと、お前の名前は何だっけ?」

 エリィは人間椅子に成り果てた男に話しかけた。

「ミ、ミッドランドでございますぅ……」

「まぁ、どうでも良いか。お前は所詮、あの人間が見つかるまでの代用品だからな」

「そ、そんな……!!」

 ミッドランドは自分の名前に興味をもたれなかったことと、奴隷として2番手であることを知り、再び絶望した。

「さて、このまま四足歩行で私の部屋まで運んでもらおうか」

「……は、はい……」

 彼はエリィを背中に乗せたままま、彼女の部屋までの長い道のりを力なく歩き始めた。
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