君と笑った

もしかしてポコ

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第二話

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静かに近づく音

 
それから、私たちは毎日話すようになった。

誰かに見せるほどの仲良しでもなく、特別なことを話すわけでもない。けれど、私たちは同じ場所にいた。学校の屋上や図書室の隅。喧騒から少しだけ外れた場所に、二人で座る時間が増えていった。

彼は、変わらず多くを語らなかった。私も、無理に話そうとは思わなかった。ただ、同じ時間を静かに過ごせることが、何よりも心地よかった。

 

時々、彼は窓の外を眺めながら言った。

「ここ、静かでいいな」

私は頷いて、それ以上は何も言わなかった。言葉がいらない時間だった。

けれど、ある日の放課後、彼はふとこんなことを言った。

「……また、やってしまうかもしれない」

私は驚いて彼の横顔を見た。彼は、いつものように遠くを見つめていた。

「怒ったら、止められないかもしれない。今は、なんとか我慢してるけど……」

「じゃあ、我慢してるんだね」

私の声に、彼は少しだけ笑った。

「うん、君がいると、なんとなく我慢できる。でも、それって……俺の中じゃ、危ないことなんだ」

「どうして?」

「それに慣れたら、いなくなったとき、俺はどうなるのかなって。多分、壊れる」

その言葉に、私の胸が少しだけ痛んだ。

彼の中にある『怒り』は、きっと私の想像よりも深くて、暗くて、怖いものなんだと思った。

でも同時に、そんな彼の隣にいることで、私自身もどこか救われている気がした。

 

その夜、家に帰りたくなくて、商店街の外れにある小さな公園に立ち寄った。

ブランコに座って、空を見上げる。

星はあまり見えなかったけど、夜風が静かに頬を撫でた。

誰かの声も、車の音も、何も聞こえない。

私はよくここに来る。家にいると、息が詰まりそうになるから。壁の薄いアパートで、怒鳴り声が夜中まで響く。帰る場所があるのに、帰りたくない。

ポケットの中のスマホが震えた。

画面には、"蓮"の名前が表示されていた。

「どうしたの?」

『今、そっち行ってもいい?』

「……うん」

数分後、彼が現れた。

制服のままで、少し息を切らしていた。

「なんでわかったの?」

「たぶん、ここにいると思った。……君が一人になりたくなる時、俺も、たぶん、そうなる」

それだけを言って、彼は隣に座った。

何も話さなかった。でも、沈黙は苦じゃなかった。

ただ、彼の肩が少しだけ震えているのに気づいた。

私は何も聞かずに、自分の手を彼の手に重ねた。

少し冷たかったけれど、その手は、確かにそこにあった。

彼の指が、ほんのわずかに私の指を握り返した。

心臓の音が、遠くから聞こえるような気がした。

――この時間が、壊れてしまわないように。そう願っていた。
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