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五章
73-出発
しおりを挟む「全員集まったな~!
それじゃあ出発するから、お前らバスに乗れ!」
「「はーい!」」
とうとう林間学校が始まった。
姫華がバスへの搭乗を指示すると、皆ウキウキと楽しそうに車内へと乗り込む。
そんな中俺は一人、やや緊張した面持ちで列の後ろに着いていた。
正直セックスしながらの林間学校など、本来ならば心踊る程に最高なシチュエーションだ。
だがあの3人の扱いは、楽しむ余裕すらない程にハード過ぎる。
よもや尿まで飲まされ、強引に犯されまくるのを楽しめる程性癖は歪んでいない。
(林間学校自体は楽しみなんだけどなぁ……
あの3人からどんな扱いを受けるのかを思うと、気が重い……)
そんなことを思いながらバスに乗り込み、窓際の席に着くと―――
(……あれ? 誰も隣に座らないぞ?)
俺が席に着いたというのに、隣を巡って4人が争うどころか、誰も座ろうとしない。
それどころか優希、実羽、麻央の3人は妙に余所余所しい雰囲気で俺から視線を逸らしている。
「ほ、ほなウチここ座るわ……」
「じ、じゃああーし隣座る……」
「茜っち~、麻央と座ろっか~」
「え? う、うんっ」
結局実羽は優希と一緒に座り、麻央は茜を誘って俺の前の席に座ってしまった。
その結果、空いた俺の隣には―――
「え、あんたがボッチなの?」
必然的に乙音が座ることとなった。
「誰がボッチだよ誰がっ」
普段俺以外と仲良くする相手も居ない乙音からボッチ呼ばわりされ思わず反論するも、俺も意外な結果に驚きを隠せなかった。
予想では優希達の誰か、或いは3人が交代で俺の隣に座って、あれやこれやと卑猥な行為をさせられることを想像していたのだが。
「じ、じゃあ……私がここに座るわね」
乙音がイソイソと俺の隣に座り込む。
気のせいかも知れないが、乙音までもが何やら態度がおかしいように感じてしまう。
一体俺の知らない間に女達の間で何があったのか―――
掴みようのない女達の態度に、俺はスタートから意味も分からず振り回される形となった―――
『ブロロ~』
程なくしてバスは出発し、車内はクラスメイト達の楽しげな雰囲気に充満していた。
周りの友人とトランプをする者。
早からお菓子を開く者。
隣の席の友人と窓の外の景色にはしゃぐ者。
各自が好きなように旅の道中を満喫している。
ただし俺の周囲を除いて―――
俺の2つ前に座る優希と実羽は始終無言。
1つ前の麻央は窓際に肘を付き、隣の茜が気を使うようにおやつを差し出している。
そして俺の隣に座る乙音は―――
「……」
肘を付いたまま、俺に目も合わせようともしない。
「な、なあ乙音。機嫌悪いのか?」
「べ、別に……ちょっと酔っただけ」
恐る恐る訊ねてみるが、相変わらず視線を背けたまま愛想のない返事を返される。
「そうか……気分が悪いなら席替わるか?」
「いいっ。それよりそっとしておいてくれた方が、助かるわ」
「そ、そうか……あまり無理するなよ」
そう言うと乙音はコクリと頷き、そのまま黙り込んだ。
どうやらバス酔いが相当辛いのかもしれない。
俺は乙音の要望通りそっとしておくことにし、一人窓の外をぼんやりと眺めた―――
「―――それじゃあお前らー!
各班で食材を調理して美味いカレーを作れー!」
「「はーい!」」
林間学校の施設に到着するなり、俺達は昼食を作らされる運びとなった。
林間学校でカレーとは、これまた随分とベタなイベントだ。
前世の学校でも同じことをやらされたが、まさか来世、それも100年以上も未来に再度やることになるとは。
時代が進んでも変わらない風習に、感慨深く思っていると―――
「よ、よーし。あーしらも準備すっかー」
「せ、せやなー。ウチ火の係やるわー」
「それじゃあ麻央食材切るねー」
優希、実羽、麻央の3人はテキパキとカレーの準備に取り掛かる。
(てっきり到着するなり、茂みの方へ連れ込まれるかと思ったけど―――)
意外にも真面目に行事へ取り組む3人に、俺は思わず面食らってしまった。
「私はあっちで食器貰ってくる」
すると乙音も一人で何処かへ行ってしまい、場には俺と茜だけが取り残されてしまった。
「あ、あはは。皆手際良いねー。
あたしはどうしよっかなー」
茜はソワソワしながら辺りの様子を伺う。
俺もどうすべきか考えながら茜の姿を眺めていると―――
(な、なんかスゲームラムラしてきた……)
茜の張り裂けそうなジャージ姿に、思わず劣情が滾ってしまう。
先程までは3人からどんな仕打ちを受けるのかビクビクしていたというのに、いざ何も無いとなると逆に物足りない感情を覚えてしまうとは。
まさか自分にM属性が芽生えてしまったのか―――
い、いやいや違う違う。
普段なら茜とヤリまくっている時間帯の筈が、今日は朝から一度もセックスしていないのだから、ムラムラしても仕方がない。
断じて逆レイプに興奮する身になった訳ではない。
うん、そうだ。
やることが無いなら、ヤることは一つだ。
「な、なぁ茜……あっちの茂みの方に行かないか?」
「へっ? 茂み?」
俺が人影の無い森の方を指差しながら誘うと、茜は意図が掴めない様子で疑問を浮かべた。
「あっちに言っても何にもないよ~?
そんな所に行ってどうす―――」
俺が微笑みながらウィンクすると、ようやく茜は意味を察したのか、急激に顔を赤らめていった。
「な? 俺達は特にすることがないし、あっちでちょっとだけ、しないか?」
俺が更に直接的に誘うと、茜は『ゴクリ』と唾を飲み―――
「―――だっダメだよ游ちゃん。
皆準備してるし、実羽ちゃん達も頑張ってるんだから、あたし達も手伝わないとっ」
そう述べると茜は俺の手を取り、食材を準備する麻央の方へと俺を引っ張った。
(え……嘘だろ? あの茜からそんな真面目な言葉が飛び出すなんて……)
授業をサボってでもセックスしたがる茜が、まさか俺の誘いを断るとは夢にも思わず、俺は驚きを隠せなかった。
(あたしが圓先生に話したから、実羽ちゃん達は游ちゃんを虐めないでいてくれるんだから……
あたしだけ抜け駆けみたいなこと出来ないもんっ!)
本当はセックスしたい気持ちで一杯の茜は、必死に笑顔を取り繕いながら誘惑を振り切っていたのだ。
そんな茜の思いなど露知らず、俺は一人悶々とした気持ちを抱えることとなった―――
それから1時間程が経ち、俺達の班もカレーを作り終え、皆でワイワイ盛り上がりながら昼食の時を迎えた。
「このカレーうんめー!」
「自分等で作ったカレーは格別やなー!」
「マジ最高~!」
向かいに座る3人が、屈託のない笑顔で自作カレーを楽しんでいる。
俺の隣に座る茜も、一所懸命切った野菜を口に含み―――
「んん~~っ! おいひぃ~~!」
その出来栄えに満足そうな笑みを溢した。
かたや乙音はというと―――
『モグモグ……』
あれからまだ一度も笑顔すら見せず、無言でカレーを口に運んでいた。
まだバス酔いが残っているのか、と心配したが、普通に食べている辺り体調は戻っていそうだが……
「んっ……ゲホッ! ……ゴクッゴクッ」
とうとう食道まで詰まらせたのか、苦しそうに咳き込みながら水をゴクゴクと流し込んだ。
「なんやー灰原ちゃん。そんな急がんでもおかわりはぎょーさんあるでー」
実羽は笑いながら乙音の皿を取り、おかわりを盛る。
「べ、別にそんなんじゃないわよ……
あ、ありがとう」
乙音は皿を受け取ると、顔を背けながらも照れ臭そうにお礼を述べた。
乙音の微笑ましい態度に、班の全員が笑い声を上げる。
一時はどうなるかと思ったが、実に楽しげな雰囲気に俺も思わず笑みが溢れた。だが―――
(や、ヤバい……ムラムラが収まらない……)
食欲も満たされ、俺の体は徐々に性欲に支配されていく。
「游ちゃんどうしたのー? 食べないのー?」
先程からソワソワと様子のおかしい俺に対し、茜が心配そうに声を掛けてくる。
「ご、ごめんっ……ちょっとトイレに……!」
俺はとうとう辛抱堪らず、イソイソと席を立った。
「ちょっと比留っち~、カレー食べてすぐウンチとかマジ最悪~」
「「あはははっ!」」
イジる麻央達も相手にせず、俺は一目散にトイレへと駆け出した。
俺の背中をじいっと見つめる、3人の不敵な視線にも気付くことなく―――
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