仮 参

淀川 乱歩

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其の九 淫獄転生 其の参 稚児愛玩 其の嘗泣

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 ……そして、実は、そんな乙女汁は、微かに磯の香りが漂う、非常に旨味の強い美味しい味がしたので、蛤姫は全裸の巫女少女達に命じて其の体液を、壺の中に集めさせては、何故(なぜ)か破魔具裏尿房と呼ばれている厨房で、乙女汁と人魚の巫女少女達が採って来た魚介類とで、すまし汁を作らせては、毎日巫女少女達に飲ませていたのです。

 ……処で、そんな蓬莱島の中の、拡大された広大な空間は、大昔には青空に白い雲が浮かび、一年中春の暖かさで、昔の日本の田園地帯が緑に広がり、藁葺き屋根の農家が点在し、一年中、梅と桃と桜の花が無数に咲き乱れる、桃源郷として設計されていたのでした。
 ……其れは、昔、秦の始皇帝に仕えた方士の徐福が長生不老、つまり不老不死の仙薬を求めて日本に渡来した時、仙術の縮地の応用で此の蓬莱島の内部に桃源郷を造り、其の中に大陸から連れて来た三千人の童男童女達と、百工達を住まわせたのです。
 ……徐福方士は、不老不死の仙薬の製造方法を解明し、蓬莱島の中の桃源郷で三千人の童男童女達を全裸で暮らさせては、不老不死の仙薬を製造し続けたのでした。
 ……最初は、蓬莱島内の桃源郷の田畑で百工達に作物を作らせ、やがて完成した仙薬を何故か、三千人の童男童女達に与えて不老不死化すると、童男童女達と百工全員を引き連れて、別の世界へと去って行ったのです。
 ……そして、不老不死に為った始皇帝の離宮として造られた、蓬莱島内の桃源郷だけが残され、やがて童男童女達が放っていた魔素も失われて、荒廃した暗黒の桃源郷だけが残されたのでした。

 ……其の後、偶然にも此処を発見した蛤姫が仙術で、萎(な)えて縮小していた空間を再び膨らまし、巨大な神社を造って根城にしたのです。
 ……また、蛤姫は、仙術で蓬莱島から日本各地に秘密の通路を開き、山中の寒村や、海岸の海女達の村から、神隠しで女児達を拐かして来ては、自分の下僕(しもべ)の巫女として全裸で飼育していたのでした。
 ……やがて、巫女達の人数が増え、蛤姫の仙妖力が増大すると、蛤姫は秘密の通路を全世界に開き、様々な人種の美少女達を収集しては、自分の巫女にしたのです。
 ……蛤姫の秘密の通路は、仙術の縮地で、僅か数歩歩くだけで、地球の裏側にでも行く事が出来たのでした。

 ……其の後、蛤姫と其の巫女達もまた、何故か徐福方士の後を追って、姿を消したのです。
 ……残された蓬莱島の地下神社も、次第に空間が萎え萎(しぼ)み、やがて昭和の初期には完全に消失して仕舞ったのでした。
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