仮 参

淀川 乱歩

文字の大きさ
上 下
9 / 63

其の九 淫獄転生 其の参 稚児愛玩 其の吸

しおりを挟む
 ……処で、魔界に伝わる古い伝説では、大昔、猿から進化した人を、神様が大層気に掛けて、牙も爪も無い、魚の様に水中で息が出来無い、鳥の様に空も飛べ無い、此の侭では直ぐに滅びて仕舞うだろうと思ったのです。
 ……其処で、動物達を集めて、人間族を影で支えて遣って欲しいと、誰か居ないかと聞かれたのでした。

 ……すると、一匹の蝦蟇蛙(ガマ)が名乗りを上げて、私の仙術と仙丹作りの知識で人間達を助けましょうと神様に応えたのです。
 ……次に、蛇が慌てて名乗り出て、仙術と仙丹作りの知識なら私の方が蝦蟇よりも詳しいです、是非私に其の役目をお任せ下さい、と神様に申し出たのでした。
 ……実は、蝦蟇と蛇は昔から仲が悪くて、事有る毎に争っていたのです。
 ……そして、最後に狐が名乗り出て、私も妖術で、人間達を助けましょうと申し出たのでした。

 ……神様は、蝦蟇と狐に人間達を守る役目を仰(おお)せ付(つ)かり、やがて蝦蟇仙人は或る小高い山の上に住むと、天敵の蛇達から身を守る為に、空を飛んで居た鷲達と鷹達を次々と、背中に翼の生えた翼人に変化させたのです。
 ……すると、鷲達は、鷲尾衆と名乗る修験道の一派を創り、蝦蟇仙人の住む不死の山の東を守り、鷹達も鷹巣衆と名乗る修験道の一派を創り、蝦蟇仙人の西を守ったのでした。

 ……また、狐達は神社を造り、巫女に変化して人間達の田畑を鼠や雀から守り、更に猫達を下僕(しもべ)の巫女に変化させ、田畑を守らせたのです。
 ……然(しか)し、面白く無かったのは蛇達で、密かに蛇の支配する異界を創り、人間達への復讐を計画したのでした。
しおりを挟む

処理中です...