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1.社畜Sub西岡凪
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会社で徹夜して、ヘロヘロな状態で定時まで働いた俺――西岡凪はようやく帰宅した。部屋のドアを開けたら電気がついてて白米の炊けるいい匂いがする。玄関には俺のよりデカい靴。
――あいつまた来てるのか……。
「ただいまぁ」
俺が部屋の中に声を掛けると、嬉しそうな顔をした幼馴染の三浦煌星が廊下に現れた。背が高く筋肉質なモデル体型。近寄られると男の俺ですら威圧感を覚える長身だが、色素の薄い髪と白い肌が彼を柔和に見せていた。顔は腹が立つくらいの美形で、性格も温厚なため子どもの頃からよくモテる。
二十七歳にして恋人いない歴イコール年齢の独身男が住むしみったれた部屋も、こいつがいるだけでパッと華やぐから不思議だ。まるで恋愛ドラマに出てくる俳優みたいな男が柔らかい声で話し出す。
「おかえり凪。外寒くなかった? 昨日帰って来なかったね。また徹夜?」
「んーまぁそんなとこ」
「疲れてるよね。ご飯ちょうどできてるけど先に食べる? それともお風呂?」
エプロン姿でいそいそと俺の鞄を受け取りながら聞いてくる煌星。
――んだよ毎回、嫁じゃないんだから……。
「腹減ったから飯にするわ」
「わかった。ご飯よそっておくから着替えてきて」
ブラック企業で馬車馬のように働かされている俺と違って、煌星は普段から基本定時上がり。そして週に何度か俺の部屋に飯を作りに来てくれる。来てくれると言っても、住んでる部屋は同じマンションの隣同士だ。
煌星とは小学生の頃からの幼馴染で実家が元々隣同士だった。就職に伴って俺が一人暮らしを始めた後、追いかけてくるみたいになぜかこいつまで隣に引っ越してきたのには驚いた。しかも彼が入居してきたときなんだかんだと言いくるめられて合鍵を奪われた。それ以来こうして勝手に俺が不在のときに部屋に入ってきて掃除洗濯炊事を済ませてくれる。
「だって凪には子どもの頃から助けてもらってたから、お返しがしたいんだ」
そんな理由をつけてなぜかイケメン様が社畜の俺なんかの面倒を見てくださっているというわけ。
煌星の手料理をたいらげた俺は風呂から上がってソファに腰掛けた。
「凪お疲れ様。ミルクティー飲むよね?」
タイミングを見計らったように煌星がマグカップを渡してくる。
「飲む。ありがと」
煌星は料理も得意だが、なんといってもこの蜂蜜入りのミルクティーが最高に美味い。月に数回、俺が疲れてるときに出してくれるからより一層格別に感じるのかもしれない。
湯気のたつカップに息を吹きかけて一口飲む。紅茶の風味と優しいミルク味の後で蜂蜜の甘さがやってくる。
「はー、うま……」
これを飲むと仕事で緊張していた体がゆるんで、だんだん眠気が襲ってくる。もう一口。
「凪はミルクティー好きだよね」
「うん」
「美味しい?」
「うん」
「眠たい?」
「……うん」
もう眠気がやってきた。煌星がテーブルを挟んで向かいの床に座り肘をつきながら俺を見上げている。
「最後まで飲み干してね」
眠すぎて適当な返事をするので精一杯だ。また一口飲む。
「凪はこれ飲むとふにゃふにゃになっちゃうもんね」
俺は言われた通りミルクティーを飲み干した。
「さて、全部飲んだからお布団行こうか」
「うん……」
「歩ける? それとも抱っこする?」
「……」
「もうふにゃふにゃだから歩けないよね?」
頭がぼんやりして、全身の力が抜けているのを感じる。俺は頷いた。
「じゃあ、僕にだけは素直にどうして欲しいか言って?」
煌星の言葉が妙にはっきりと頭に響く。すると俺の口は勝手に開いて言葉を発していた。
「……抱っこして」
「ふふ、よくできました――凪、いい子」
煌星が近づいてきて、体がフワッと浮かぶ。俺はその心地よい浮遊感に身を委ねた。
――あいつまた来てるのか……。
「ただいまぁ」
俺が部屋の中に声を掛けると、嬉しそうな顔をした幼馴染の三浦煌星が廊下に現れた。背が高く筋肉質なモデル体型。近寄られると男の俺ですら威圧感を覚える長身だが、色素の薄い髪と白い肌が彼を柔和に見せていた。顔は腹が立つくらいの美形で、性格も温厚なため子どもの頃からよくモテる。
二十七歳にして恋人いない歴イコール年齢の独身男が住むしみったれた部屋も、こいつがいるだけでパッと華やぐから不思議だ。まるで恋愛ドラマに出てくる俳優みたいな男が柔らかい声で話し出す。
「おかえり凪。外寒くなかった? 昨日帰って来なかったね。また徹夜?」
「んーまぁそんなとこ」
「疲れてるよね。ご飯ちょうどできてるけど先に食べる? それともお風呂?」
エプロン姿でいそいそと俺の鞄を受け取りながら聞いてくる煌星。
――んだよ毎回、嫁じゃないんだから……。
「腹減ったから飯にするわ」
「わかった。ご飯よそっておくから着替えてきて」
ブラック企業で馬車馬のように働かされている俺と違って、煌星は普段から基本定時上がり。そして週に何度か俺の部屋に飯を作りに来てくれる。来てくれると言っても、住んでる部屋は同じマンションの隣同士だ。
煌星とは小学生の頃からの幼馴染で実家が元々隣同士だった。就職に伴って俺が一人暮らしを始めた後、追いかけてくるみたいになぜかこいつまで隣に引っ越してきたのには驚いた。しかも彼が入居してきたときなんだかんだと言いくるめられて合鍵を奪われた。それ以来こうして勝手に俺が不在のときに部屋に入ってきて掃除洗濯炊事を済ませてくれる。
「だって凪には子どもの頃から助けてもらってたから、お返しがしたいんだ」
そんな理由をつけてなぜかイケメン様が社畜の俺なんかの面倒を見てくださっているというわけ。
煌星の手料理をたいらげた俺は風呂から上がってソファに腰掛けた。
「凪お疲れ様。ミルクティー飲むよね?」
タイミングを見計らったように煌星がマグカップを渡してくる。
「飲む。ありがと」
煌星は料理も得意だが、なんといってもこの蜂蜜入りのミルクティーが最高に美味い。月に数回、俺が疲れてるときに出してくれるからより一層格別に感じるのかもしれない。
湯気のたつカップに息を吹きかけて一口飲む。紅茶の風味と優しいミルク味の後で蜂蜜の甘さがやってくる。
「はー、うま……」
これを飲むと仕事で緊張していた体がゆるんで、だんだん眠気が襲ってくる。もう一口。
「凪はミルクティー好きだよね」
「うん」
「美味しい?」
「うん」
「眠たい?」
「……うん」
もう眠気がやってきた。煌星がテーブルを挟んで向かいの床に座り肘をつきながら俺を見上げている。
「最後まで飲み干してね」
眠すぎて適当な返事をするので精一杯だ。また一口飲む。
「凪はこれ飲むとふにゃふにゃになっちゃうもんね」
俺は言われた通りミルクティーを飲み干した。
「さて、全部飲んだからお布団行こうか」
「うん……」
「歩ける? それとも抱っこする?」
「……」
「もうふにゃふにゃだから歩けないよね?」
頭がぼんやりして、全身の力が抜けているのを感じる。俺は頷いた。
「じゃあ、僕にだけは素直にどうして欲しいか言って?」
煌星の言葉が妙にはっきりと頭に響く。すると俺の口は勝手に開いて言葉を発していた。
「……抱っこして」
「ふふ、よくできました――凪、いい子」
煌星が近づいてきて、体がフワッと浮かぶ。俺はその心地よい浮遊感に身を委ねた。
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