【完結】隠れSubの俺は幼馴染の腹黒Domにこっそり催眠プレイで甘やかされていることを知らない

grotta

文字の大きさ
18 / 19

18.うちへ帰ろう

しおりを挟む
「母さん、凪にコーヒーよろしく」

 煌星は階段を駆け下りながらリビングに向かって叫ぶとそのままバスルームへ直行した。

「あらあら……やっと外に出る気になったのね」

 煌星の母親に促されてソファに腰掛ける。彼女はコーヒーとお菓子を用意してくれた。「あの子ったら昔から凪くんの言う事なら聞くんだから」と彼女も向かいのソファに座る。

「ごめんなさいね。凪くんもう体は大丈夫なの? 煌星のせいであなたも療養してたんですってね。本当に申し訳ないわ。美和みわさんにも電話でお話しは聞いてるんだけど」

 美和というのは俺の母親のことだ。昔隣同士で住んでいたときから母親同士交流がある。詳細は伏せつつ、今回の件は洋一郎伝いに母にも連絡がいっていた。

「はい。この通りもうなんともありませんのでご心配なく」
「良かった。凪くんにしつこくしたら嫌われるわよって子どもの頃から言ってるのに、あの子ったらもう」
「いえ、大丈夫ですよ」
「ありがとう。私ね、昔を思い出しちゃったわ」
「昔ですか?」
「ええ。あの子、小学校四年生くらいから段々お友達とうまくいかなくなって……あとからDomのグレアのせいだったってわかったんだけど」
「そうだったんですか」

 彼女は頷いた。

「喧嘩すると、周りのお友達が具合悪くなっちゃってね。先生に呼び出されたりして大変だったわ。原因がわからなかったから、田舎で過ごせば良いんじゃないかってお父さんだけこっちに残ってもらって引っ越ししたの」

――そういう事情があったのか。

「煌星はこっちの小学校にいるときはお友達に対しても結構高圧的だったんだけど、凪くんと会ってからすっかり穏やかになっちゃって」
「そうなんですか?」

 高圧的だなんて、今の煌星からは想像できなかった。

「そうなのよ。今でこそ周りに優しくできるようになったけど、それも凪くんのおかげなのよね」
「いえ、俺は何も……」
「よっぽど気が合うお友達なんだって当時は思ってたわ。だけど凪くん実はSubで、きっとDomの煌星にとってはお守りみたいな存在だったのよね」
「俺が煌星のお守り……?」
「ええ。あの子にとって精神安定剤なんだと思うわ。赤ちゃんの安心毛布みたいにね」

 俺は思わず吹き出してしまった。
――安心毛布……俺が……。

「あの子、外面がいいじゃない? 結構無理してるんだと思うの。元々は茜音みたいに気が強いところもあるし」
「気が強い?」
「そうよ。凪くんと会う前はお姉ちゃんとよく喧嘩してたんだから。だけど、凪くんと仲良くなってからすっかり姉弟喧嘩も減ってね」
「へぇ、信じられないな」
「でしょう? 本当に感謝してるわ。凪くんがいないとあの子、グレアをコントロールできなくてきっとトラブル続きな人生だったと思うの」

 俺でも煌星の役に立ててたってことなのかな。

「こんなこと私が言うのは重荷になっちゃうかしらね。でも、母親の私でもどうすることもできなくて――凪くん、これからも煌星と仲良くしてくれるかしら?」
「はい、もちろんです。俺も煌星にいつも助けられてますから。あいつが料理とかしてくれるんで会社に通えてるってくらいで」
「ふふ、そうなのね。あの子家事もできるし、稼ぎもあるから凪くんいくらでも頼ってあげて。あなたの世話をやくのがあの子の生きがいなのよ」

 するとその時風呂上がりの煌星がリビングに顔を出した。

「母さん、余計なこと言わないでよ」
「あら聞こえてた? でも本当のことじゃない」
「それはそうだけど――! 本人の前で恥ずかしいだろ」
「はいはい、ごめんなさいね」
「凪、今のは聞かなかったことにして」

 煌星の顔を見て俺は立ち上がる。

「煌星ここ、剃り残し」
「えっ! どこ?」
「ったく、まだ寝ぼけてるんじゃないのか? ほら、剃ってやるから行くぞ」

 母親に笑われながら煌星と二人でバスルームへ移動する。カミソリで顎の剃り残しを処理して、タオルで拭いてやった。以前のようなキラキライケメンに戻った煌星の背中を叩く。

「これでよし」
「ありがとう。でも、凪がかっこ悪い僕の方が好きならこれからは髭伸ばして髪ボサボサにしようか?」
「ばーか。お前はこっちのほうが似合ってるよ」
「そう? かっこいいって思ってくれる? 凪、僕の顔好き?」
「うるせえ」

 俺は近寄ってきた煌星の鼻をつまんだ。そのときキッチンから声が掛かる。

「あなたたち、今夜はうちでご飯食べるわよね?」

 俺は一瞬迷ったけど、その申し出を断ることにした。

「いいえ、すみません。今夜は行くところがあるので遠慮しておきます」
「あらそう? 残念。今度二人でご飯食べにいらっしゃいね」
「はい。そろそろお暇します、お邪魔しました」
「母さん心配掛けてごめん。またすぐ来るね」
「もう喧嘩しないのよ」

 笑顔で母親に見送られ駅に向かう途中、煌星が尋ねる。

「凪、行くところって?」
「食いたいものがあるんだよ」
「食べたいものってなに? どこの駅? うちの近所?」

 俺はそれを聞いてため息をついた。

「そんなの、お前の手料理に決まってるだろうが」
「えっ! な、凪……本当?」
「なんだよ。文句あんのか?」
「無い。まったく無いです! 帰りに一緒にスーパー寄ろうね。好きなもの何でも作るね」
「ああ」

 はしゃいだ様子の煌星を見て俺は苦笑しつつ、悪戯心がうずいた。

「煌星、耳貸せよ」
「え、なに?」

 長身の幼馴染がかがんで俺の口に耳を寄せる。その耳たぶを引っ張って小声で言う。

「飯のあとで、甘い物飲みたい」
「――っ! そ、それって……」
「炭酸とかじゃなくて、甘くてあったかいやつ」

 俺は真っ赤になった煌星を置いて先に改札を通った。

「待って凪……え、え、いいの? 本当にいいの?」



 食事の後、煌星が洗い物をしている間に俺は風呂に入ってきた。キッチンに立つ煌星の姿を久々に見て俺は安堵する。
――いろいろあったけど、これが一番しっくりくるよな。

「凪、本当にミルクティー飲む?」
「うん。もうネタバレしてるから、催眠かかったりしないよな?」
「たぶん……」
「じゃあ飲む」

 煌星がミルクティーを作るところを今まで注意して見たことはなかった。彼の肩越しに鍋を覗き込む。

「へー、こうやって作るんだ」
「簡単でしょ?」
「自分でやるのはめんどいかな」

 煌星がくすっと笑う。

「はい、どうぞ召し上がれ」

 ソファに座って一口飲むと、柔らかい甘みが口の中に広がって俺は目を閉じた。

「は~、うまい。――なぁ煌星、俺眠くなってきたんだけど」
「な、凪!?」
「うっそ~」

 焦る煌星に俺は舌を出して見せた。すると彼は「脅かさないでよ」と言いながら俺の隣に腰掛けた。ミルクティーを飲む様子を煌星がじっと見ている。

「こんなんで俺本当に催眠かかってたの? 知ってて飲んだらなんでもないんだけど?」
「全部飲む頃には、ふにゃふにゃになって僕に抱っこをねだってたよ」

――うげ~まじかよ。こわ!

「凪、そんな顔しないでよ。もうしないから。でもこれからは催眠なしでいつでも甘えてね」
「……でも恥ずかしいんだよな」
「大丈夫だよ。慣れたらなんともない。Subならみんなしてることだから」

 煌星が真顔で迫ってくるので俺は手で押しのけようとした。

「顔ちけーよ」
「凪の可愛い顔、なるべく近くで見たいんだ」

――はっず……。はちみつミルクティーよりゲロ甘か。

「凪が俺のこと誘ったんだよ。ねえ、もうプレイ始めてもいい? 僕もう我慢出来ない」

 耳元で低く囁かれる。シラフではプレイに慣れていない俺はこんなことだけで顔が熱くなってしまう。

「……でも、まだこれ全部飲んでねーし――」
「飲みながらでいいから、ね?」

 イケメンDomの顔圧に負けて俺は頷いた。

「――わかったよ」
「じゃあ、セーフワード決めようか。何がいい?」
「うーん……なんだろう……」
「僕が思わず冷めちゃいそうな言葉。何か思い浮かぶ?」

 俺はあれこれ考えた末、ひとつ良いことを思いついた。

「あ、わかった! 茜音は?」

 それを聞いた煌星が顔をしかめる。

「……あー……それ最高。どんなに凪の魅力で頭バグってても一瞬で目が覚めそう」
「じゃあセーフワードはアカネな」

 煌星は複雑な表情で頷いた。茜音もまさか自分の名前がセーフワードにされているとは思わないだろう。

「でもセーフワードを使うような無理なことはしないから安心して。それじゃあ凪。まずはこれ全部飲み干してみて」
「わかった」

 俺が残りのミルクティーを飲み干すと、煌星が俺の頭を撫でた。

「Good boy 凪。カップをちょうだい。オーケー、じゃあ次は基本中の基本でいこうか。Kneelおすわり

――うわ、そうきたか。
 ソファから降りて、俺は煌星の足元にひざをつき、床にぺたんと座る。初めてやったけど、コマンドに従うのって悪い気分じゃない。煌星は優しい眼差しで俺のことを撫でる。

「いいね。上手だよ凪。じゃあ……今度はKiss」
「え~! それは恥ずいよ。何か他の――」
Shush静かに! Kissだよ、凪」

 不平を言ったら叱られてしまった。
 
「うぐ……わかったよ」

 俺は立ち上がって煌星の端正な顔に手を添えた。催眠中の記憶はないので、俺にとっては初めてのキスだ。目を瞑っている彼の顔をギリギリまで見つめながらそっと唇を重ねる。
――煌星は俺のDomなんだ。もう他の女性を羨む必要もない。
 唇を離すと、煌星がうっとりした表情で微笑んだ。

「ああ……今最高の気分だよ。Good boy、完璧だね」

 俺はそのきれいな笑顔に見惚れた。煌星が嬉しそうに褒めてくれるのって、めちゃくちゃ気持ちがいい。ふわふわした気分に浸っていると、煌星が突然俺の体を横抱きにし、有無を言わせず立ち上がった。

「えっ、なに?」

 びっくりして煌星の首にしがみつくと、なんとなく以前もこうやって運ばれたことがあるような気がしてきた。「よくできたいい子にはご褒美だよ」と彼が俺の頬にキスする。

「ご褒美?」
「凪の好きなところ、隅から隅まで僕が可愛がってあげる」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【BL】SNSで出会ったイケメンに捕まるまで

久遠院 純
BL
タイトル通りの内容です。 自称平凡モブ顔の主人公が、イケメンに捕まるまでのお話。 他サイトでも公開しています。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

待てって言われたから…

ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...