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第一章 断罪から脱出まで
5 とりあえずご飯はなしで
しおりを挟む「お嬢様、朝食です」
おっと、つらつら考えていたら、この家の召使いさんが朝食を運んできてくれましたよ。何日ぶり。
でも、中身を確認して苦笑い。
冷え切ったスープには土入りで、パンは一度踏みつけた跡があります。
ぼーっとしてると、扉は閉められさようなら。
召使いさんの目はどこも見ていませんでした。
無視する相手に嫌がらせのご飯とは、これいかに。
まあご飯ださないとかはできないよねー。家主の命令だもんねー。
家主のザリガは父親には絶対の忠実を誓っているが、不出来な貴族の小娘は体に残らない方法で虐待をおこなうグズである。
私は何度か訴えたが、『大げさ』『被害妄想』と切り捨てられた。泣いた。
シュトレン家の婿入りご当主のお父様は、自分の子飼いに絶対の信頼をおいているので、下手にしっぽ出さなければ悪事がまかり通る。
娘より子飼い、これが私の父親だ。
私が属するシュトレン家は、名門中の名門だ。乙女ゲームのテンプレにもれず、王家と親交が深くその魔力も高い。
母親の一族に父親が婿入りした形だが、この世界、魔力のランクが一番の判断材料。二番目が出自。母親は火と氷という、相反する2つを操る豪腕である。父親は軍部上がりの凄腕で、安定した魔力と瞬発性のある身体能力に、他国の武将も惚れ込んでいるという。ざ、漢の世界。
そんな中で、私自身はそこまで能力は高くないが、教養・社交性・容姿に優れ、それを磨くことで自分自身を守ってきた。この平々凡々、才能のなさ、頭の悪さがにじみ出る会話、無理だよ、でもここで無理を通さないと生きていけない、そう思うくらいに四面楚歌の状態で、私は自らを追い込み、最終的にはハイド様の婚約者として遜色のないレベルには収まった。
そして私の下には一人の妹、一人の義弟がいる。それぞれ私にはもったいないくらいの才能の持ち主で、――まあ、あれだ。
乙女ゲームの主人公であるあの女に迎合しちゃったよね。
義弟のシャルトラトは攻略相手。養子入りして肩身が狭いながらも頑張っていたのに、家族は認めてくれない、元家族の愛情もわからない。だからこそ勉学に励み、氷の魔法は一級品と評されるまでになった。家族は能力だけを認めているようで、義理の姉にいたってはそれにさえも嫉妬し、こちらに目を向けるのは嫌味をいう時だけ。そんな状況にあって、輝くような賛美と、それに追いつこうとする努力、真っ直ぐな信頼に目をやられてしまったと。はいはい。わかりますよ-、私もその選択肢、涙をこらえながら選んだからね。休憩中にぐずりだすからパワハラの効果かって上司がちょっと浮足立ったの覚えてるから。
妹のミルフィランゼは親友ルートに登場する。姉の所業を見て育った彼女は、高慢で自信家に育ったんだけれども、元来の性質は天真爛漫で優しいのだ。学園生活を送り、真逆の立ち位置にある乙女ゲーの主人公に、最初は姉と同じように敵愾心を抱くのだけれど、お茶会や舞踏会での親密度アップのイベントを経て、大親友となる。姉に迎合するためだけに見下げていたシモジモノモノに優しい視線を送り、その感謝を口にするのだ。そうすることで、彼女の魅力は八割増し。そう、彼女は天使となったのだ。
もう普通の恋愛ルートだけじゃなくて、親友ルート、商人ルート、冒険者ルートとその多彩なルートが私のハートを射止め続けるよ「恋する少女は無限大~魔法学園(仮)」通称マカリ。
敵役で転生したとは言え、やっぱゲームはいいよねえ、と思ってしまう。
現在乙女ゲーの主人公のアリアは私の婚約者であったチロル国の第一王子、ハイド様のルートを歩んでいるけれども、逆ハールートに当たる攻略もしていたようで、全員落ちてる。もちろん私の義弟シャルトラトとミルフィランゼも落ちてる。奈落の底に真っ逆さま。ようこそ地獄へ、いいえそこは彼女たちの天国ですよ。皆であの女を囲んで毎日を過ごすのですって。
ごめんなさって。あの女だなんて下品な言葉を繰り返してしまって。
反省してます。アリアアリアアリア、はい、あの天使のアリアちゃんね。妹と合わせてダブル天使ちゃん★ ミャハ☆彡
アレルギーを克服しないと、今後の生活のめどが立たないから、今から私は乙女ゲームの大天使アリア様のスチルをあの女に当てはめます。そっくりだけど違う、それが一番大事。
ほんっと、私の男をかっさらいやがって。
私がどれだけ努力を重ね、今の位置にのぼりつめたと思っているのか。
あと家族二人、エピソード詐欺もいいところじゃない?
逆に聞こう。
シャルト、あんたね、いつ私に、認められようとしていた?
家族から蔑まれた状態を冷静に把握し、私に関わるとマイナスになると判断して話しかけなかったのはあいつだ。人が必死に仲良くなろうとしたのに、それを家族が居ないところで鼻で笑い、メイド経由でプレゼントを返すというあてこすり、嫌味を言えば執事経由で両親にちくり、こっちが無視しようとすれば後ろでため息が聞こえたじゃん。私どうすればよかったのよ。
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有能な従者隠すのにどれだけ必死だったことか。
ハイド様には私しかいないと思い込みながらも、私は自分の能力のなさがわかってた。
悲しいくらいに能力がないのは、前世からと同じで――それでもお嬢様よおどき庶民ども、ワタクシ実力もともなっておりますオホホってできたのは、ひとえにハイド様への愛と家族の愛をもらうための努力の賜物だった。実力不足を自覚していた私は、従者の育成に力を入れた。
ただそれだけだ。
そして捨てられたわけです。
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