8 / 60
第一章 断罪から脱出まで
7 平民か幽閉の→平民で
しおりを挟む十日間の絶食と、ザバイバルな一週間。栄養状態は最悪、麦粥は最高。それでも、この美貌が衰えることはない。実はお腹とか太ももとか手首らへんがすごく痩せている。やばい、次の餌食は大きな筋肉だ。脂肪をつけねば、一緒に筋肉をつけねば死ぬ。
通されたのは、普段は音楽会などの小さな催しを行うための部屋だった。楽団や講師を招いた時に使用する場所は少し高くなっていて、私はそこに立たされた。陽を受けるための大窓のから光が差し込んで、まるでスポットライトがあたっているようだ。側に音声記録用の青い水晶球があり、そこに教会の印が薄く白く発光していた。
――これは。
父親がその側に立つ。母方の叔父は父親に一礼し、水晶球に浮かんだ教会の印に触れた。その瞬間、ぽ、と小さくて鈴のように澄んだ音がする。同時に光が十秒ほど強くなり、発光色が白から青に変化した。
本来ならば天井に魔法で照明を浮かばせる客席側は、今はなんの明かりもない。大きい窓から漏れる光でもその薄闇は拭いきれず、きらきらと埃が舞うのを目を眇めて見る。薄闇に染まらない、きらびやかな家族がその先に集合していた。
父の他に、私に非難の目を向けているのは、母親、妹、義理の弟、そして叔父だ。
叔父は義理の弟の父親であり、母親の家の家長でもある。
家族に加えた、第三者の立会。
教会に連絡の行く、録音付きの水晶球。
――意味するところは、家族会議での断罪に他ならない。
「今回の件、どのような影響が我が一族にあったのか、お前はわかっているか」
そう切り出したのは、父親だった。
偉そうに胸はって。知らんがな。
このような者が何故一族に。
恥だ。
歴史から消去したい。
込められた非難が鋭く私に刺さる。ピリピリと空気が澄んで凍る。
母親からは、紅蓮の炎がほとばしる。それを義弟が氷の魔法で制御している。「お母様」と妹がその腕に手を添えると、その炎は消失した。
苦々しく、私を見つめて男はづつける。
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
その言葉に、周囲の人々の非難の視線が更に鋭くなる。
ドヤ顔でおっさんがー、なんか言ってる。
一応父親かー。うざ親だなあ。
鋭い眼差しにお洒落な顎髭を蓄えたその人から、久方ぶりに目線を受けて私はため息を付きたくなった。
この選択肢のは、本来ならば意味を成していない。
領地の中で、平穏に誰にも会わず暮らせるのならば、間違いなくそちらがいい。メイドも最低限付き、食事も制限されることはない。衣服にしても、今のように贅沢な衣装を着ることはできないだろうけれど、質のいいものを着ることはできる。誰にも会わないということは、外聞を聞かずにすむということだ。――この家でも聞こえてくる、非難、嘲笑、その他もろもろ。愛している家族から冷たい目を受けず、許されるのを静かに待ち、この哀しみを抑え、あの平民あがりの寝取り女への憤りと、その女を選んだ王子への恋心が朽ちるまでを暮すのだ。
一方、平民に身を落とせば、そんなことは言っていられなくなる。貴族の、しかもまだ働いた事もない私が、平民の暮らしに苦労するのは明らかだ。貧しい暮らしになるのは確実。贅沢を贅沢とも意識していない生活から一転、働く事はおろか、炊事洗濯、食事も何もかも誰の助けも借りず、全て自分で行わなければならない。しかも、その身におちる原因は平民の女だ。わざわざ、そんなものになりたがるバカはいない。
「はい、では平民になります」
「な!」
私を諭すために来た家族が絶句した。そんなつりめ全員が目玉飛び出さんばかりに見開かんでもよろしいがな。
目からビームが出そうな勢いである。
心のなかで爆笑しながら、私は鍛えられた鉄面皮を発動させた。ツンとすました顔に、薄ら笑いを浮かべる。
「市井の暮らしに身を置き、私の罪と向き合います」
「そのような甘いことを。お前などどこかで野垂れ死ぬのが目に見えている」
「救済を求めても、その時にはもう縁を切っているのだ。お前を助ける者は誰もいないぞ」
「そうやって、突飛なことを言って同情を引こうとしても、無意味なのですよ。貴女はこの家にとって許されない行いをしたのです」
お前、お前、貴女。
父親、叔父、母親。
それぞれ、もう私を名前で呼ぶことはしない。
あの日。
――学園の中庭、多くの生徒と教師の前で断罪を受けて、帰ってきたあの日から。
あの日から、この人達は完全に私を捨てた。
だから私もまた、家族を捨てるのだ。
こんな低ランクのところにいてたら、今後どうなるかがわからないからね!
10
あなたにおすすめの小説
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる